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第13話 ポーションづくり

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 お姉さんが椿に手招きする。

 近づいてみると、目の前でポーションを作るところを見せてくれた。どこからどうみても、刻んだ薬草を潰して煮込んでいるだけだ。ヨモギだぞ? こんなものが果たして、さっきの不思議な色のポーションになるのだろうか。

 どうやら顔に出ていたらしい、お姉さんは呆れたような表情を見せる。そして、おもむろに両手で煮汁が入ったガラスの容器を包み込むようにする。すると容器の中身がみるみる透き通った青色に変わっていくではないか。まるでガラス管の中に、見えない渦が巻いているような感覚だ。

 遂に来たか、ファンタジー要素! アレか、魔力を込めるとか言う奴か? 召喚された身で何を言うかと思うだろうが、これは魔法の初体験だ! 確かに今、目の前で魔法っぽいものが行使されたのだ。キキのお母さんが薬を作る、まさにあの風景なのだ、興奮する。

 そんな椿の様子に、また呆れた顔をするお姉さん。席を立つと、椿に座るように促す。そして、新しい煮汁入りガラス容器を湯煎の鍋に設置した。まるでやってみろと言わんばかりだ。しかしそこは興奮した椿、見よう見まねで両手を鍋にかざしてみる。

「……」

 おかしい、全く変化しない。異世界人だぞ? なんか才能があって然るべきだ。なあ、糞女神?

 返事はない。
 代わりにお姉さんのでっかいため息を頂いた。

「※※※※、※※※※※※※※。※※※」

 椿の両手を外側から包むように、お姉さんが手を添えてきた。

「※※」

 おお? 解かる、お姉さんの手のひらから、自分の手を通る何かが解かる。まるで血の巡りを認知できたらこうじゃないか、って感覚がするのだ。お椀のように形を作った手のひらの内側で渦を巻くように移動して、再びそれはお姉さんの手に戻っていく。そんな感覚がはっきりわかった。

「もう一度! もう一度お願いします!」

 お姉さんの袖を引き、鼻息荒く催促すると、また、ため息を頂いた。でも、応えてくれるあたりがチョロイな、チョロ姉だな。再び、お姉さんの手のひらから血が巡る。

 これが魔力だと仮定しよう、そして私に使えるとも仮定する。アレだろ、魔法はイメージが大事なんだろ? 気とかと同じようなイメージでやってみよう。爺さんがよく気合は肚からって言ってる。気は肚から巡る、って。もう実際に爺さんは気を使ってたと言っても、今なら信じるぞ。

 丹田たんでんって言うのだ、肚。そこから、今感じているお姉さんの魔力と同じものを絞り出すのだ。

 肚から、右肩、右手、そして手のひらの内側で渦を巻いてから、左手、左肩、そしてまた肚に帰る。イメージが現実に近づく。気付くとお姉さんの手は引っ込められていて、椿は自分一人で魔力の巡りを再現出来ていることに気づいた。

「※※※※※」

 ぽんと肩を叩いて笑顔を浮かべるお姉さん。これはまさかの才能あり?!

 感覚を忘れないように、鍋に手をかざして魔力を流す。手のひらの内側、つまり鍋ごとガラスの容器内で渦巻くようにすればいいのではないか。……上手く行った! 見る間に煮汁は、透き通った青色に変わっていった。

 出来上がった容器をつまみ上げたお姉さんが首を傾げている。よく見ると、容器の中ではスノードームのように、白くキラキラと反射する何かが降っている。不純物が残ったのだろうか、お姉さんのように上手く作れなかったらしい。まあ、数を作れば上手くなるだろう。

 お姉さんも同じ結論に達したのか、蓋をしてから容器を薬立てに放り込んだ。

「※※※※、※※※※※※※※※※※」

 何か言ってから、お姉さんは2階に上がってしまった。
 あとは勝手にしろと言うことだろう。不用心だな、まあせっかくの好意だ、練習しよう。



 煮汁はまだある。なんなら煮汁は作り足せばいい。さっき一通り見せてくれた。ガラスの容器も机の下に山盛りある。
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