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第55話 決着
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青鬼は執拗に椿を狙ってくる。
魔法が効かない以上、この場で青鬼にとっての最たる驚異は椿なので当然なのだが。解せないのは、真っ先に白兵戦力を潰しに掛かってくる知恵のまわり様だ。しかも、周りにはいくらか男達が居る。どうやって椿が一番の腕前だと判断したのだろうか。生まれたてなら、もっと馬鹿で然るべきだ。
そもそも、この青鬼が生まれたてだと考えるのが間違っているのか。
この世界であれば、椿も1歳未満だ。この青鬼も、何処かから喚び出されたのかもしれない。
――自分もあんなふうに、石から生えるように喚ばれたのかな。
いや、違う。椿には心臓がある。それに、玄関から直接あの城に喚ばれ、床の上に立っていたではないか。脱いでいる途中だったので、靴が片方しかなかった事まで再現されるはずもない。
壁になるべく飛び込んでくるも、簡単に首を落とされそうになるスターシャの尻を蹴飛ばして遠ざける。道中の青鬼とは、もう次元が違う。3馬鹿の介入の余地はもうない。レベル差だとか、そう言うふんわりとした概念ではなく。そこにあるのは、はっきりとした玄人と素人の差だ。短剣しか持たないシェロブも、介入が難しい。青鬼はシェロブの頭を狙うのだ、胴であれば壁抜けの魔法で避けられるのだが。これでは、青鬼の間合いの外から隙きを伺うしかない。
土俵際に追い込まれた椿は、思わず場外に出ないように踏ん張ってしまった。土俵に対する日本人の条件反射であったり、競技者であるところの悲しい癖だ。まるで、そう動くことを見越したように青鬼が強振する。
『お嬢様!!』
青鬼の打ち込みは、椿の右甲から手首を抜けていった。
まるで熱湯に右手を突っ込んだかのような激しい痛みが襲ってくる。左手から木薙刀に流した魔力を、右手で受ける循環も途切れてしまった。ずっとそうやって慣れてしまっていたため、物理的に右手が無くなった今、木薙刀の強化も薄れてしまう。大剣をなんとか受けるも、折れそうな木薙刀からギシギシと悲鳴が上がる。
シェロブの悲鳴に興奮するかのように、青鬼の打ち込みが更に激しくなる。
嗜虐的な性質だったのだろうか、激しいが雑になってきた。そんな青鬼の打ち込みを、なんとか左手と、右の前腕と膝や脛で木薙刀を支えて受け、流す。祖母に教わった、体格の良い相手のちから押しをいなす方法だ。自然と出てくる。限界を超えて、神経が研ぎ澄まされてきたのかもしれない。火事場の糞ぢからか、はたまた走馬灯か。
青鬼により掛かるほど接近して、バカでかい両手剣の猛攻を凌ぐ。しんどいのはむしろ、近づいて感じる青鬼の吐く息の臭さの方だ。
「つ、椿さん!
大丈夫ですか?!
私、どうすれば!」
見かねた茜が、土俵際から声を掛けてくる。
「最初、見てたでしょ?
こいつ、喚ばれたんだよ。
この場に!
よく見て!
なんとか、
介入できないかな!」
椿と茜の会話に、青鬼が反応した。いや、少なくともしたように見えた。その隙きを逃さず、シェロブが青鬼の脇を突く。最初に失敗したスターシャも、恐れずシェロブの壁となるべく青鬼の視線を遮るように立ちはだかる。道中に、散々と実践した連携のキレがやっと戻ってきたようだ。
シェロブの突きは浅く、分厚い鬼の筋肉を貫けなかった。内蔵に届かなければ致命傷には程遠い。
それでも、なんとか雪崩落ちるように土俵から3人が離れる。そこに、青鬼の追撃はなかった。
『追撃がない?』
『あの場から出られないのでは』
『魔力を受けれるのはあの上だけみたい。
縁に近づくほど、魔力の流れは弱くなっていってた』
3馬鹿にも冷静さが戻ってきた、状況を分析し合う余裕が出ている。
「椿さん、これを」
あのどさくさに紛れて、茜が切り落とされた椿の右手を拾ってきていた。運良く(?)、指は全部付いている。良くも触る気になったものだ、椿が想像しているよりずっと多く、茜もニジニで修羅場を潜っていたのかもしれない。
すぐに椿はポーションを一瓶すべて呷り、もう一瓶を右の手首と切り離された方にも振りかける。元の姿を意識しながら、特に右腕を多く魔力が通るように循環させる。体を満たす水分を、すべてポーションに作り変えるように魔力を満たす、発展型の身体強化魔法だ。ポーションと併用することで、肉体を蘇生できることが分かっている。
時間が経って、なかば麻痺していた右手に、熱湯に突っ込んだような痛みが戻ってくる。その痛みも、ピークを過ぎると徐々に去っていった。そして痛みが完全に引いたとき、右手は元の形を取り戻した。
『よし』
繋がった。多少、肉が盛り上がるような傷跡が残ったが仕方ない。
ポーションで骨折を治したとき、炎症も収まってくれた。つまり、骨やその周りの筋膜なども修復されたと言うことだ。それなら、血管や神経も当たり前に治るのではと踏んでいたけど。どうやらそれは間違っていなかった。何処まで治るか分からないが、死にさえしなければ、多少の欠損すら治療ができそうだ!
青鬼に視線を戻すと、土俵のような広場の中央に戻り、籠に積まれた心石を吟味していた。まさか、手勢を増やすつもりだろうか。あのレベルの青鬼が増えると、もう手に負えなくなる。
……でも、続く個体が同じような強さだった場合、そいつらも土俵から出られないんじゃ? しかし、出られないのがはったりであれば、安全に仲間を増やされる危険がある。
すぐにでも挑むべきだ。
『お嬢様、お待ち下さい』
シェロブが椿を押し止める。
『例え手勢が増えようが、
舞台から降りれば勇者が片付けてくれます』
そこに眼鏡のイケメンことマーリンが加わる。
『目的を忘れちゃいけない。
我々は、霊穴をなんとかしにきたんです。
ツバキ殿、この場にきて気付いたことなどありませんか?』
「茜ちゃんは何か気付いた?」
この場に居るのは、魔法が得意な面々である。すぐに話に出たのは、この場に溢れる魔力だ。それについては、この場に着いてすぐに思い浮かんだ事がある。霊脈を血管に例え、それを破って中身を利用しているのではないか。
「椿さんなら、治せるんじゃないですか?」
「実際、やってみようと思ったんだけど
すぐにあのデカチンが襲ってきたんだよね」
「デカ……」
青鬼を放置して、椿は土俵の周りに沿って歩き、流れ込む霊脈の真上を探した。流れは、椿達がやってきた南南西から、この土俵で急激に向きを変えて東に向かっているようだ。
簡単に思い付くのは、この流れを変えてしまうことだ。
……どうやって引っ張ればいいのだろうか?
実際に青鬼、もしくは魔王が引っ張り出しているのだ、何かやりようがあるはず。
魔法、もとい魔力の操作は想像力がモノを言う。魔法であっても不可能だと思ったことはできないし、できるだろう事は実現する。ようは本人の想像力の範疇に収まるという訳だ。
魔力は触れられないが、移動させる方法は知っている。今やっている身体強化魔法がまま、それだ。
椿は、自分の魔力ではなく、この足元を流れる魔力を身体に循環させて身体強化を試みた。それはあっさりと成功し、膨大な魔力が椿の身体を巡り始める。血管に大量の血液を流せば、それこそ破裂してしまうのではと普通は思う。しかし、椿はすでに経験している。身体強化魔法の効果が思うように伸びなかったとき、身体の外側も使って循環させる方法を思い付き、実践したのだ。
椿の身体とその周りを、凄まじい量の魔力が駆け巡る。
漫画やアニメで強敵がオーラを纏って存在感を増す演出があるが、まさにそうなった。実際は光って目立つだけで、たいして身体能力の向上は見られないが。
『派手ですね……』
『それで火弾でも撃てば……』
『舞台に流れる魔力が減りましたよ!』
3馬鹿の興奮を余所に、椿の精神には負担が掛かってくる。身体強化魔法を覚えたての頃、身体の外を巡る魔力が魔法の効果になんら影響を与えずがっかりした。その後、魔力を糸のように束ね、更にそれを筋肉のように纏って熊モードを手に入れた経緯がある。そして、その魔力で編んだ繊維には、魔力が流せる事も後々分かっている。
霊脈の膨大な魔力で、熊モードを構築する。ねぷたの山車を背負うように、山となった筋肉で南東へ進む。地下からの流れを引きずるように。
元々、無理やり土俵に流れを変えていたのだろう。あっさりと霊脈は流れを変え、「へ」の字に曲がった道筋は南東へ離れ、なだらかに東へ向かうように変わっていった。
この霊脈の変化に驚愕を浮かべた青鬼が、慌てて椿に向かってくる。
「茜ちゃん」
「はい」
茜が静かに、青鬼を指さした。奴は土俵の中央を離れている……
――スガガーンッ!!
途端、特大の雷鳴が鳴り響く。
閃光が収まると、黒焦げに煙を上げる青鬼が土俵から転がり落ちてきた。あれだけ苦労したにも関わらず、茜が指差すだけで決着が着いてしまった。酷いものだ、役割が逆だと思う。勇者が守って、聖女が神の力を行使するとかだろ? 普通は。聖女と呼ばれてたはずの椿が、肉弾戦ばかりしている。まあ、今は聖女(?)だけど。
茜は、3馬鹿が行使する魔法を見て、ただ魔力を加工して外に出すだけでいいと学んでしまった。もう、剣を掲げたり、恥ずかしい呪文を唱えたりもしない。強い勇者が更に学習して手が付けられなくなっていく。もう一度言うけど、指差すだけだよ?
椿はため息をつきながら、霊脈の魔力を手放した。流れは土俵に戻らず、南東へゆるゆると動いていく。あちらに、本来の流れがあったのだろう。
魔法が効かない以上、この場で青鬼にとっての最たる驚異は椿なので当然なのだが。解せないのは、真っ先に白兵戦力を潰しに掛かってくる知恵のまわり様だ。しかも、周りにはいくらか男達が居る。どうやって椿が一番の腕前だと判断したのだろうか。生まれたてなら、もっと馬鹿で然るべきだ。
そもそも、この青鬼が生まれたてだと考えるのが間違っているのか。
この世界であれば、椿も1歳未満だ。この青鬼も、何処かから喚び出されたのかもしれない。
――自分もあんなふうに、石から生えるように喚ばれたのかな。
いや、違う。椿には心臓がある。それに、玄関から直接あの城に喚ばれ、床の上に立っていたではないか。脱いでいる途中だったので、靴が片方しかなかった事まで再現されるはずもない。
壁になるべく飛び込んでくるも、簡単に首を落とされそうになるスターシャの尻を蹴飛ばして遠ざける。道中の青鬼とは、もう次元が違う。3馬鹿の介入の余地はもうない。レベル差だとか、そう言うふんわりとした概念ではなく。そこにあるのは、はっきりとした玄人と素人の差だ。短剣しか持たないシェロブも、介入が難しい。青鬼はシェロブの頭を狙うのだ、胴であれば壁抜けの魔法で避けられるのだが。これでは、青鬼の間合いの外から隙きを伺うしかない。
土俵際に追い込まれた椿は、思わず場外に出ないように踏ん張ってしまった。土俵に対する日本人の条件反射であったり、競技者であるところの悲しい癖だ。まるで、そう動くことを見越したように青鬼が強振する。
『お嬢様!!』
青鬼の打ち込みは、椿の右甲から手首を抜けていった。
まるで熱湯に右手を突っ込んだかのような激しい痛みが襲ってくる。左手から木薙刀に流した魔力を、右手で受ける循環も途切れてしまった。ずっとそうやって慣れてしまっていたため、物理的に右手が無くなった今、木薙刀の強化も薄れてしまう。大剣をなんとか受けるも、折れそうな木薙刀からギシギシと悲鳴が上がる。
シェロブの悲鳴に興奮するかのように、青鬼の打ち込みが更に激しくなる。
嗜虐的な性質だったのだろうか、激しいが雑になってきた。そんな青鬼の打ち込みを、なんとか左手と、右の前腕と膝や脛で木薙刀を支えて受け、流す。祖母に教わった、体格の良い相手のちから押しをいなす方法だ。自然と出てくる。限界を超えて、神経が研ぎ澄まされてきたのかもしれない。火事場の糞ぢからか、はたまた走馬灯か。
青鬼により掛かるほど接近して、バカでかい両手剣の猛攻を凌ぐ。しんどいのはむしろ、近づいて感じる青鬼の吐く息の臭さの方だ。
「つ、椿さん!
大丈夫ですか?!
私、どうすれば!」
見かねた茜が、土俵際から声を掛けてくる。
「最初、見てたでしょ?
こいつ、喚ばれたんだよ。
この場に!
よく見て!
なんとか、
介入できないかな!」
椿と茜の会話に、青鬼が反応した。いや、少なくともしたように見えた。その隙きを逃さず、シェロブが青鬼の脇を突く。最初に失敗したスターシャも、恐れずシェロブの壁となるべく青鬼の視線を遮るように立ちはだかる。道中に、散々と実践した連携のキレがやっと戻ってきたようだ。
シェロブの突きは浅く、分厚い鬼の筋肉を貫けなかった。内蔵に届かなければ致命傷には程遠い。
それでも、なんとか雪崩落ちるように土俵から3人が離れる。そこに、青鬼の追撃はなかった。
『追撃がない?』
『あの場から出られないのでは』
『魔力を受けれるのはあの上だけみたい。
縁に近づくほど、魔力の流れは弱くなっていってた』
3馬鹿にも冷静さが戻ってきた、状況を分析し合う余裕が出ている。
「椿さん、これを」
あのどさくさに紛れて、茜が切り落とされた椿の右手を拾ってきていた。運良く(?)、指は全部付いている。良くも触る気になったものだ、椿が想像しているよりずっと多く、茜もニジニで修羅場を潜っていたのかもしれない。
すぐに椿はポーションを一瓶すべて呷り、もう一瓶を右の手首と切り離された方にも振りかける。元の姿を意識しながら、特に右腕を多く魔力が通るように循環させる。体を満たす水分を、すべてポーションに作り変えるように魔力を満たす、発展型の身体強化魔法だ。ポーションと併用することで、肉体を蘇生できることが分かっている。
時間が経って、なかば麻痺していた右手に、熱湯に突っ込んだような痛みが戻ってくる。その痛みも、ピークを過ぎると徐々に去っていった。そして痛みが完全に引いたとき、右手は元の形を取り戻した。
『よし』
繋がった。多少、肉が盛り上がるような傷跡が残ったが仕方ない。
ポーションで骨折を治したとき、炎症も収まってくれた。つまり、骨やその周りの筋膜なども修復されたと言うことだ。それなら、血管や神経も当たり前に治るのではと踏んでいたけど。どうやらそれは間違っていなかった。何処まで治るか分からないが、死にさえしなければ、多少の欠損すら治療ができそうだ!
青鬼に視線を戻すと、土俵のような広場の中央に戻り、籠に積まれた心石を吟味していた。まさか、手勢を増やすつもりだろうか。あのレベルの青鬼が増えると、もう手に負えなくなる。
……でも、続く個体が同じような強さだった場合、そいつらも土俵から出られないんじゃ? しかし、出られないのがはったりであれば、安全に仲間を増やされる危険がある。
すぐにでも挑むべきだ。
『お嬢様、お待ち下さい』
シェロブが椿を押し止める。
『例え手勢が増えようが、
舞台から降りれば勇者が片付けてくれます』
そこに眼鏡のイケメンことマーリンが加わる。
『目的を忘れちゃいけない。
我々は、霊穴をなんとかしにきたんです。
ツバキ殿、この場にきて気付いたことなどありませんか?』
「茜ちゃんは何か気付いた?」
この場に居るのは、魔法が得意な面々である。すぐに話に出たのは、この場に溢れる魔力だ。それについては、この場に着いてすぐに思い浮かんだ事がある。霊脈を血管に例え、それを破って中身を利用しているのではないか。
「椿さんなら、治せるんじゃないですか?」
「実際、やってみようと思ったんだけど
すぐにあのデカチンが襲ってきたんだよね」
「デカ……」
青鬼を放置して、椿は土俵の周りに沿って歩き、流れ込む霊脈の真上を探した。流れは、椿達がやってきた南南西から、この土俵で急激に向きを変えて東に向かっているようだ。
簡単に思い付くのは、この流れを変えてしまうことだ。
……どうやって引っ張ればいいのだろうか?
実際に青鬼、もしくは魔王が引っ張り出しているのだ、何かやりようがあるはず。
魔法、もとい魔力の操作は想像力がモノを言う。魔法であっても不可能だと思ったことはできないし、できるだろう事は実現する。ようは本人の想像力の範疇に収まるという訳だ。
魔力は触れられないが、移動させる方法は知っている。今やっている身体強化魔法がまま、それだ。
椿は、自分の魔力ではなく、この足元を流れる魔力を身体に循環させて身体強化を試みた。それはあっさりと成功し、膨大な魔力が椿の身体を巡り始める。血管に大量の血液を流せば、それこそ破裂してしまうのではと普通は思う。しかし、椿はすでに経験している。身体強化魔法の効果が思うように伸びなかったとき、身体の外側も使って循環させる方法を思い付き、実践したのだ。
椿の身体とその周りを、凄まじい量の魔力が駆け巡る。
漫画やアニメで強敵がオーラを纏って存在感を増す演出があるが、まさにそうなった。実際は光って目立つだけで、たいして身体能力の向上は見られないが。
『派手ですね……』
『それで火弾でも撃てば……』
『舞台に流れる魔力が減りましたよ!』
3馬鹿の興奮を余所に、椿の精神には負担が掛かってくる。身体強化魔法を覚えたての頃、身体の外を巡る魔力が魔法の効果になんら影響を与えずがっかりした。その後、魔力を糸のように束ね、更にそれを筋肉のように纏って熊モードを手に入れた経緯がある。そして、その魔力で編んだ繊維には、魔力が流せる事も後々分かっている。
霊脈の膨大な魔力で、熊モードを構築する。ねぷたの山車を背負うように、山となった筋肉で南東へ進む。地下からの流れを引きずるように。
元々、無理やり土俵に流れを変えていたのだろう。あっさりと霊脈は流れを変え、「へ」の字に曲がった道筋は南東へ離れ、なだらかに東へ向かうように変わっていった。
この霊脈の変化に驚愕を浮かべた青鬼が、慌てて椿に向かってくる。
「茜ちゃん」
「はい」
茜が静かに、青鬼を指さした。奴は土俵の中央を離れている……
――スガガーンッ!!
途端、特大の雷鳴が鳴り響く。
閃光が収まると、黒焦げに煙を上げる青鬼が土俵から転がり落ちてきた。あれだけ苦労したにも関わらず、茜が指差すだけで決着が着いてしまった。酷いものだ、役割が逆だと思う。勇者が守って、聖女が神の力を行使するとかだろ? 普通は。聖女と呼ばれてたはずの椿が、肉弾戦ばかりしている。まあ、今は聖女(?)だけど。
茜は、3馬鹿が行使する魔法を見て、ただ魔力を加工して外に出すだけでいいと学んでしまった。もう、剣を掲げたり、恥ずかしい呪文を唱えたりもしない。強い勇者が更に学習して手が付けられなくなっていく。もう一度言うけど、指差すだけだよ?
椿はため息をつきながら、霊脈の魔力を手放した。流れは土俵に戻らず、南東へゆるゆると動いていく。あちらに、本来の流れがあったのだろう。
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