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5章 反撃の序章
41 老執事の願い
しおりを挟む(グレン視点)
昨日、私がお仕えしているレイ伯爵家にサン侯爵令嬢イリス様がいらっしゃいました。
イリス様とラストル様は生を繰り返していらっしゃり、いつも不幸な死を迎えられたとお聞きしました。
……………なんとお痛わしい、、
ラストル様がそのお話をしてくださった時は半信半疑でしたが、その時のラストル様の表情に、ラストル様が教えてくださった魔術、、疑いようもございませんでした。
愛する者を魔術に惑わされたとはいえ、裏切ってしまった過去はどんなに深く辛かったか…………私には想像も出来ません。
私も旦那様と共にお二人を支えていかなくては……!
しかし、一介の執事である私にそのような大事なことを話してくださるとは、、、歳がらにもなく嬉しくなってしまいました…………!
もっとも、魔術を教えていただいた時はそれ以上にはしゃいでしまいましたが、、
……………話がズレてしまいましたな、、
イリス様はこの屋敷にいらっしゃった時、お顔にまで殴られたような痣がございました。
イリス様によると、姉君のレイラ様に殴られたといいます………。
初めてお会いした私でさえ、激しく動揺し、ショックを受けたのですから、ラストル様のショックは計りしれません………!
その後すぐにアルバート殿下が〈聖〉属性の魔術で治してくださったからよかったものの………レイラ様やサン侯爵家の方々は何を考えているのか、、、
まぁ、レイラ様が使用している魔術のせいというのもあるのでしょうが……………
早く解決して欲しいものです。
私がお仕えするレイ伯爵家でも、少し前まで多くのレイラ様の者が魔術に犯された状態でしたが、アルバート殿下のおかげでカイル様以外の者の解術が成功しました。
カイル様のことは当主のライル様も気に病まれているので原因を掴みたいところですが、この世界で魔術が普及していないため、難しいでしょうな…………。
───イリス様がこの屋敷にいらっしゃった翌日、本日は先程イリス様に朝食をお運びいたしました。……大変美味しそうに食べてくださいました!
滞在は秘匿しているため、厨房の者たちに伝えることは出来ませんが、知ったら喜ぶことでしょう。
しかし、同時に怒りも込み上げてきました。
貴族としての爵位は高くも低くもない伯爵家の通常の食事であそこまで喜んでくださるとは、、、サン侯爵家でどんな生活をしていたのか…………。
今は屋敷の中の様子を見て回っていますが、そろそろ旦那様の執務室に行くとしましょう。
「───グレンさん! 今、サン侯爵家のレイラ様がいらっしゃって、、カイル様とラストル様にお会いしたいと…………カイル様にはお伝えしたのですが、ラストル様が何処にもいらっしゃらなくて…………」
「分かった。ラストル様には私からお伝えしましょう、、、貴方は自分の仕事に戻りなさい」
「はい、ありがとうございます」
ラストル様はイリス様のお部屋でしょうな………。
お二人の時間を邪魔したくありませんが、仕方ありませんな。
―――――――――――――――
先程、ラストル様にレイラ様がいらっしゃったことをお伝えして送り出しました。
レイラ様がいらっしゃる可能性は考えていたようですが、互いに心配し合っていました。
いやはや、、初々しいですなぁ~~
おっと、失礼しました。
私はイリス様の警護を引き受けました。
こう見えても剣術では騎士隊長並の実力を持ち、体術も人並み以上に出来ると自負しております。
歳はとりましたが、衰えてはおりません!
ラストル様に教えていただいた魔術も最近、〈水〉の〝高位属性〟である〈氷〉が使えるようになりましたので役に立つことでしょう。
しかし、イリス様はとても不安そうに見えます。
まぁ、無理もありませんが…………
「───イリス様、心配する必要はございませんよ? ラストル様は強いお方です。貴女を裏切ることはないでしょう」
「ありがとうございます………。私も分かっているのですが、どうしても不安で、、、過去に私と彼に何があったのかは聞いていますよね?」
「えぇ、ラストル様から聞き及んでおります。………私から見ますと、ラストル様もイリス様も自分を攻めているように思えます」
「そうですね、、前も今も彼を巻き込んで、不幸にしている自分がどうしても許せなくて………」
「そう自分を攻めていては、ラストル様も悲しまれますよ? それに、誰よりも辛かったのは貴女でしょう……」
「そうですね………。でも、彼の方が自責の念が大きいと思うのです」
徐々に自分の味方が減っていき、最後には一人になってしまう恐怖はどれ程のものでしょう…………。
以前、ラストル様もおっしゃっていましたが、本当に強い女性です。
……………神は何故、、こんなにも暗く、重い人生をこのお二人に与えているのか………何度も何度も、、
この世界では幸せになって欲しいものです。
「グレンさん、普段のラスはどのような感じでしょうか?」
「ラストル様は家族思いで、使用人たちにも優しい方でございますよ。人一倍努力もなさっています」
「そうですか…………。変わらないなぁ、、」
「以前のラストル様もそうだったのですか?」
「えぇ、自分がどんなに大変でもいつもいつも、私を気遣ってくれたんです。たくさん練習して魔術を極めて、皆から認められていました」
「左様でございますか!」
お二人はどの世界でも愛し合っていたのでしょう。
イリス様は一つの前世しか覚えていらっしゃらないようですが、いつでも同じ思いだったはずです。
「ラストル様からは、イリス様も大変お優しい方だとお聞きしております」
「…………今の私に優しさはありませんよ?」
「そんな事はございませんよ」
仮にそうだったとしても、仕方がないことです。
誰だって人間不信になって当然の境遇にいるのですから。
それから暫く、イリス様に他の世界でのラストル様のことを聞いたり、この世界でのラストル様のことをお話ししたりしました。
話の話題になっていたラストル様には申し訳ございませんが、失敗談や今には見られない一面も知ることが出来て有意義な時間になりました。
旦那様にも、後でお教えしましょう。
─────コンコンコン
「イル、グレン、ただいま!」
おや、ラストル様が戻られたようですね。
イリス様のお顔から不安が消え、喜びが伺えます。
この幸せな時が出来るだけ長く続くとよいのですが………………。
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