君の悲劇を終わらせる〜廻る世界で再び出会う〜

夜野ヒカリ

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6章 全ての始まりと終わり

55 全ての始まり①

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「─── ラスっ、ラストルっ、しっかりして 」


 お腹のあたりが熱い?
 あれ?僕は何で倒れて………

「ラス、だめっ! 目を閉じないでっっ、お願いっ」   

 イル? 何で泣いてるの? 
 だめだ……。真っ暗で何も見えない ───




―――――――――――


(アルバート視点)



 兵がレイラ嬢を連れていこうとすると、うつむいていた顔を上げたレイラ嬢はどこからか取り出したナイフをイリス嬢に向けて駆け出していた。兵が止めようとするも間に合わない。私も全く動くことができず眺めることしかできなかった。

 イリス嬢はラストルの後ろにいたが、レイラ嬢止まることなくラストルにぶつかっていった。
 何が起こったのかわからずに見ていると、レイラ嬢の陰から見えるラストルの白い服が赤く染まっていった。

 
「ラスっっ」

 イリス嬢の悲鳴のような叫び声を聞いて、やっと周囲の時が戻った。

「ラストルっ ───なぜ、なぜ治らないんだっ!?」

 ラストルに駆け寄って魔術を行使するも一向に治らない。せっかく魔術を使えるようになっても、意味がないじゃないか!

「フフッ、アハハハハッ」

「……何をした? 答えろ、サン侯爵令嬢!!」

 異常だ、、 この状況で笑っているなんて……。
 レイラ嬢は私のすぐ後ろで兵に剣を向けられているのに。

「アハハ、ラストルに刺さっているナイフには魔力を分散させる効果がありましたの。いかに黄金の魔力を持った〈聖〉属性魔術の使い手であろうとも、〈聖〉の治癒の本質はその魔力で欠損部を補うこと! 魔力が分散してしまったら意味を持ちませんわ!!」

「そんな、、ラスっ」

「〈無〉属性は何もできないなんて思われていますけれど、他のどの属性よりも優位に立てる可能性を秘めた属性ですわ!」

「イリス嬢………その者を牢へ連れていけ!」

 なんで、そんなナイフがっっ
 私は友人を助けることができないのか!?
 ラストルの顔はどんどん生気を失っていく。
 そして私が纏う魔力も少なくなっていく………。

「アルバート殿下……お止めください、それ以上は……」

「しかしっ」

「友人である殿下が無理をされても息子は喜ばないでしょう」

 レイ伯爵がなおもラストルを治療しようとする私を静止する。

 ───どうすればっっ





「トルマトス、ラストル様の時を止めなさい」

「りょうか~い、グレイトスさんも手伝ってね~」



 
 聞き覚えのある二人の人物の声の後、ラストルの呼吸が、、いや、止まった ───





―――――――――




 痛た………あれ? ここは、、、
 目を覚ますと真っ白な空間にいた。

 ラストルが生きる世界が、、であることに今日、パーティーの前に気付いた。

 最初に前世の記憶が戻った時から、自分が繰り返してきた時の全てを覚えているわけではないことに気が付いていた。
 遡れば遡るほど、記憶は薄れていき、何故僕とイル、そしての魂が廻り続けているのか分からなかった。
 それが今日になってに突然鮮明な記憶として甦った。

 イルは違うみたいだったからいや、彼女との決着のあと父様とイルに話そうと思ってたんだけど、、
  
 僕はいきているのか?
 仮に死んでいたとしてもイルが守れたなら本望だ。
 僕の願いは自分がどうなろうとイルを守ることだったから。

 一人で考え込んでいると、優しいしかし絶対的なオーラを纏った声が響いた。

「──── 久しぶりね。ファースラントス」 

「……お久しぶりです。ライナステフィアーネ様」

 ライナステフィアーネ、、僕達3人が最初にいたこの世界の神々の頂点に立つ女神である。 

 ───僕とイルそして彼女は神だった。

「ファースラントス、ルミティフィーネは元気かしら?」

「えぇ、最近は一緒に生活していましたので。それまでは苦労を掛けてしまいましたが、、既にご存知ではないですか?」

 ファースラントスとルミスティフィーネ、、かつて神だった僕とイルの名前である。懐かしいな……。  

「今の貴方の肉体だけれど、レイラが貴方に向けたナイフには魔力を分散させる効果が付与してあったの。彼女は前世で魔術研究所にいたから……」

 そうか……。
 魔力が分散してしまってはどんなに優れた魔術師でも魔術による治癒はできないから、アルでも治癒は不可能、、生きている可能性は低いか………。

「取り敢えずは大丈夫よ、、グレイトスとトルマトスがいるから」
 
「トルマトスもですか!?」

「えぇ、今の世界では貴方のお友達として人間に化けているわ」

 今日、全ての記憶が戻ってから、グレンがかつて自分を可愛がっていれた神なのではないかとは考えていたけど……。

「……トルマトスの今の名前はトーマスですね?」

「そうよ。2人とも自分が神であるという認識はなかったけれど、ファースラントスが思い出したのと同時に彼らも思い出したの」

「……今までは貴女達が人間となった僕達に干渉することはありませんでしたよね?」

「えぇ、今回もそのつもりだったのよ?  でも、あの二人がもう見ていられないと訴えてきたの」

「そうですか………」





 ───神に父母兄弟という概念は存在しないけど、グレイトスはファースラントスにとって父のような存で、トルマトスは兄のような存在だった。

 神は人間と同じように、契りを結んだ男神と女神の夫婦の間に新たな神をもうける。でも人間と違って生まれた神はすぐに一人で生活させられる。契り結ぶ相手が見つかるまでは一人で生活するのが基本だ。……まぁ、夫婦かみによっては成長するまで一緒に生活するけど。
 ………僕はすぐに一人になった生まれたてでも神だから寂しかった。永い時をずっと一人で……。人間に化けて人間の村で暮らすこともあるけど、歳を取らないぼくはずっとそこにいるわけにはいかず、親しくなった者と別れなければならなかった。
 そんな時、たまたま出会ったのがグレイトスとトルマトスだった。グレイトスは僕に色々教えてくれたし、同じ神である彼らは決して居なくならなかった。
 僕も人間からしたら長く生きていたけど、まだ幼く、知らないことがたくさんあった。(神でも知らないことはたくさんある。永い時の中で学ぶからね。)
 グレイトスは本当にたくさんのことを教えてくれた。グレイトスのところには僕以外にも幼い神がいたんだけど、それがトルマトス。
 2人でグレイトスから学ぶ日々は楽しかったなぁ。
 
 


  そして、彼女に出会ったんだ ───






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