美しく優秀な次女がいるのなら、私は必要ありませんよね? 〜家を捨てた私は本当の姿に戻り、追いかけてきた皇子と街で暮らす〜

夜野ヒカリ

文字の大きさ
15 / 57
2章 街で幸せに

15 通じる想い

しおりを挟む




「─── マチルダさん、ただいま戻りました」

 食堂のドアを開ける美味しそうな香りが漂います。
 香草焼きでしょうか?

「あぁ、お帰り。ちょうど夕飯が出来たところだ。食べながら聞かせておくれ!」


 
 本日の夕飯のメインは鶏肉の香草焼きでした。
 ハーブが程よく効いていて美味しいです!
 私の隣でウィリアム様も美味しそうに食べています。
 でも元とはいえ流石は皇族。いつもながらとても上品です。

「───それで、どうだった?」

「はい、また前回と同じ方々に絡まれてしまったのですが、ウィリアム様が護ってくださいました!」

「リーナ、ウィルだろ?」

 あっ、、最近はウィリアム様を呼ぶ時に『ウィル』と言えていたのですが、気を抜くと癖で『ウィリアム様』と言ってしまいますね……。
 先程のウィリアム様の姿が素敵すぎて、今思い出しても……あら? わ、私は何をっ! 

「へぇ、ウィルがかい!」

「は、はい! とてもお強くて素敵でした」

「そうかい、そうかい。ウィル、よかったじゃないか」

「ははっ、そうですね、、リーナが怖い思いをしていないと良いのですが」

「いえ、最初は少し怖いと感じていましたが、ウィルが庇ってくださいましたので」

 か、顔の熱が収まりませんっ。

「それにしても、おんなじ連中かい……」

「あぁ、もう大丈夫だとは思いますよ?」

「?どういうことだい」

「私のような見た目が弱そうな者に完膚なきまでにやられて、さらに向かってくるような気概がある者とは思えませんでしたので」

「へぇ、本当に強いんだねぇ」

「はは、それなりには」

 ………ウィリアム様の強さは“それなりに”ではなかったと思うのですが、、今思えば、皇族として護身術などを学ばれていたのでしょう。

 それに、ウィリアム様……以前は知りませんでしたが、気さくな方ですね。学園では私以外と共にする姿を見なかったので分かりませんでしたが、、
 食堂でも最初は、纏う空気の異質さからお客さんに敬遠されがちでしたが、その人柄もあって今では大人気です。たくさんの方とお話しをしています。でも、どんな時でも失わぬ威厳があって堂々としていて、何よりもこの帝国の第二皇子だった方です。
 果たして、そんな方に私なんかが釣り合うのか……。

 ……えぇ、本当はとっくに気が付いていました。私がウィリアム様のことを好きになっていたことに。
 ……それでも気付かない振りをしていました。意識しないようにしていました。
 だって、血の繋がった家族にすら認められず、友人もいなくて、誰からも忌み嫌われていた私などがウィリアム様に好意を寄せるのはおこがましいでしょう?

 マチルダさんと話すウィリアム様を眺めます。
 この方が私なんかのために、ここにいていい方ではないと分かっているのに………。


「─── リーナ? 悲しそうな顔をしてどうしたんだ?」 

「あれ、ほんとだね。何かあったのかい?」

「あっ……、何でもありません。ご馳走さまでした、とても美味しかったです!……今日は少し疲れてしまいましたので、もう休ませていただきますね」

「そうかい? しっかり休みなよ」

 私としたことが顔に出ていたようです。すぐに笑顔に戻りって食器を片付け、自分の部屋に向かいます。
 感情を隠す技術はそれなりにあると思っていたのですが、、


「…………」



* * *



 はぁ………どうすれば良いのでしょう?
 ウィリアム様にお帰りいただこうと思っても、急病で亡くなっていることになっているので不可能ですし、、
 椅子に座って机に突っ伏してしまいます。


 ───コンコンコン


「リーナ、、疲れているところすまないが、話をしても?」

 ウィリアム様?
 ………今は落ち着いてお話しできる状態ではないのですが、、

「すみません、ウィル。明日でも大丈夫ですか?」

「出来たら、今話せるとありがたい」

 珍しく強引なウィリアム様、、明日にするのは無理そうですね。

「分かりました。 ───どうぞお入りください」

 夜中に男性を部屋に招き入れるのはどうかとも思いましたが、ドアを開けておけば大丈夫ですよね?

「あぁ、すまない」

 ウィリアム様が座れるように部屋の隅にある椅子を持ってくる。

「あの、話というのは?」

「あぁ、君があまりにも悲しそうな顔だったから心配になってな」

「そういうことでしたら、私は大丈夫です。ご心配いただきありがとうございます」

「………私が君の虚勢に騙されると思っているのか? マチルダ殿は君がすぐに笑顔に戻ったから気付かれていないようだが、私は生まれてからずっと笑顔で腹の探り合いをする世界にいたのだぞ? 笑顔の裏の本心を見抜けないとでも?」

 ………それはそうですよね。ウィリアム様は皇子であり、笑顔の裏で自分を利用しようとする方を大勢見てきたはずです。

「……ちょっと考え事をしていまして、、ですが大したことはありませんよ?」

「先程のリーナの表情は、学園にいた頃の君がよく浮かべていたものだった。今の君は何かを諦める必要なんてないんだぞ?」

「そ、そんなこと……」

「………私は君が婚約破棄したという噂を聞いてすぐ、それが真実か知るためにカトル公爵家を訪問したんだ。そこで、君が強いられていた生活の一端を知ったんだ。隠さなくてもいい」

 まさか、公爵家うちにいらっしゃっていたなんて、、

「……私の妹のミラにはお会いになりましたか?」

「あぁ、公爵から紹介された」

「私などより可愛らしかったでしょう?」

「確かに可愛らしい容姿ではあったが、それだけで、容姿についてもリーナの足元にも及ばないと思うが?」

「ふふっ、お世辞でも嬉しいです」

「……何故そんなに自信がないんだ、、」

 ?私には誇れるものが何もありませんから、、

「……自信を持てる要素がないんです」

 言っていて悲しくなって俯いてしまいます。

「君は、学園で3年間ずっと、全ての科目で最良の成績を取り続けていた。それだけでも快挙だろう」
 
 あぁ、それは確かに誇っても良いのでしょうか。

「それに、周囲から何を言われても自分を貫いていたではないか」

 母の命令と妹のお願いに従っていて、惨めなだけでしょうに、、

「……君が何故あんな姿でいたのか、マチルダ殿に聞いた。家族に強いられた理不尽で折れることなく生きていただけでも、他の者には真似の出来ないことだ!」

 そういえば、髪や肌について聞かれないと思っていたのですが、マチルダさんが………。
 私から話すのもと思っていたので、正直ありがたいです。

「……リーナ、私を見てくれ」

 そろそろと顔を上げると、緑金の瞳が優しく私を見つめていました。


「─── 私はウィリアム様をお慕いしております。きっと、出会った頃から」

「リー────」

「───ですが! 私はこんなに弱い人間です。ウィリアム様に相応しくないっっ、私なんかがっ」

「……リーナ、強くなくていいのだ、確かに君の強さに惹かれていた時もあったが、今となっては君の弱さを支えたい。君を支える役目を与えてくれないか?」

 ウィリアム様が私の頬に手を当てて、抑えきれずに零れた涙を拭ってくれます。
 ………本当に甘えてしまって良いのでしょうか?

「強くなくても良いのですか?」

「あぁ」

「誇れることがなくても?」

「リーナは誰よりもすごい」

「妹のように、可愛らしくなくても?」

「リーナは世界で一番、可愛いくて美しいさ」

「本当に?」

「本当に」

 あぁ、こんなに涙が止まらないなんて、、泣いたのはいつ以来でしょうか?
 涙で上手くしゃべれません。


「─── ウィリアム様、ずっと、お慕いしておりました」

「あぁ、リーナ」

「ウィリ、アム様、、」

「………泣いてもいいんだ」

 
 もう、、涙を止めることが出来そうにありません 

─────
───
──













しおりを挟む
感想 132

あなたにおすすめの小説

初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結】

星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。 だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。 しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。 王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。 そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。 地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。 ⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。

【完結】家族にサヨナラ。皆様ゴキゲンヨウ。

くま
恋愛
「すまない、アデライトを愛してしまった」 「ソフィア、私の事許してくれるわよね?」 いきなり婚約破棄をする婚約者と、それが当たり前だと言い張る姉。そしてその事を家族は姉達を責めない。 「病弱なアデライトに譲ってあげなさい」と…… 私は昔から家族からは二番目扱いをされていた。いや、二番目どころでもなかった。私だって、兄や姉、妹達のように愛されたかった……だけど、いつも優先されるのは他のキョウダイばかり……我慢ばかりの毎日。 「マカロン家の長男であり次期当主のジェイコブをきちんと、敬い立てなさい」 「はい、お父様、お母様」 「長女のアデライトは体が弱いのですよ。ソフィア、貴女がきちんと長女の代わりに動くのですよ」 「……はい」 「妹のアメリーはまだ幼い。お前は我慢しなさい。下の子を面倒見るのは当然なのだから」 「はい、わかりました」 パーティー、私の誕生日、どれも私だけのなんてなかった。親はいつも私以外のキョウダイばかり、 兄も姉や妹ばかり構ってばかり。姉は病弱だからと言い私に八つ当たりするばかり。妹は我儘放題。 誰も私の言葉を聞いてくれない。 誰も私を見てくれない。 そして婚約者だったオスカー様もその一人だ。病弱な姉を守ってあげたいと婚約破棄してすぐに姉と婚約をした。家族は姉を祝福していた。私に一言も…慰めもせず。 ある日、熱にうなされ誰もお見舞いにきてくれなかった時、前世を思い出す。前世の私は家族と仲良くもしており、色々と明るい性格の持ち主さん。 「……なんか、馬鹿みたいだわ!」 もう、我慢もやめよう!家族の前で良い子になるのはもうやめる! ふるゆわ設定です。 ※家族という呪縛から解き放たれ自分自身を見つめ、好きな事を見つけだすソフィアを応援して下さい! ※ざまあ話とか読むのは好きだけど書くとなると難しいので…読者様が望むような結末に納得いかないかもしれません。🙇‍♀️でも頑張るます。それでもよければ、どうぞ! 追加文 番外編も現在進行中です。こちらはまた別な主人公です。

いや、無理。 (完結)

詩海猫(8/29書籍発売)
恋愛
細かいことは気にせずお読みください。 もはや定番となった卒業パーティー、急に冷たくなって公の場にエスコートすらしなくなった婚約者に身に覚えのない言い掛かりをつけられ、婚約破棄を突きつけられるーーからの新しい婚約者の紹介へ移るという、公式行事の私物化も甚だしい一連の行動に、私は冷めた瞳をむけていたーー目の前の男は言い訳が終わると、 「わかってくれるだろう?ミーナ」 と手を差し伸べた。 だから私はこう答えた。 「いや、無理」 と。

冤罪で退学になったけど、そっちの方が幸せだった

シリアス
恋愛
冤罪で退学になったけど、そっちの方が幸せだった

夫と愛し合った翌朝、一方的に離縁されました【完結保証】

星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
美しい公爵夫人マルグリートは、冷徹な夫ディートリヒと共に、王国の裏で密かに任務をこなす“悪女”。 だがある日、突然夫から離婚を言い渡される。しかもその裏には、平民の愛人の存在が──。 失意の中、王命で新たな婚約者・エルンストと結ばれることに。 どうやら今回の離婚再婚は、王家の陰謀があるよう。 「悪女に、遠慮はいらない」 そう決意した彼女は、華やかな舞踏会で王に真っ向から言い放つ。 「わたくし、人の家庭を壊しておきながら悪びれない方に、下げる頭は持っていませんの。  王族であられる前に、人におなりくださいませ。……失礼」 愛も、誇りも奪われたなら── 今度はこの手で、すべてを取り戻すだけ。 裏切りに燃える、痛快リベンジ・ロマンス! ⚠️本作は AI の生成した文章を一部に使っています。タイトル変えました。コメディーです。主人公は悪女です。

さようなら婚約者

あんど もあ
ファンタジー
アンジュは、五年間虐げられた婚約者から婚約破棄を告げられる。翌日、カバン一つを持って五年住んだ婚約者の家を去るアンジュ。一方、婚約者は…。

国外追放ですか? 承りました。では、すぐに国外にテレポートします。

樋口紗夕
恋愛
公爵令嬢ヘレーネは王立魔法学園の卒業パーティーで第三王子ジークベルトから婚約破棄を宣言される。 ジークベルトの真実の愛の相手、男爵令嬢ルーシアへの嫌がらせが原因だ。 国外追放を言い渡したジークベルトに、ヘレーネは眉一つ動かさずに答えた。 「国外追放ですか? 承りました。では、すぐに国外にテレポートします」

悪役断罪?そもそも何かしましたか?

SHIN
恋愛
明日から王城に最終王妃教育のために登城する、懇談会パーティーに参加中の私の目の前では多人数の男性に囲まれてちやほやされている少女がいた。 男性はたしか婚約者がいたり妻がいたりするのだけど、良いのかしら。 あら、あそこに居ますのは第二王子では、ないですか。 えっ、婚約破棄?別に構いませんが、怒られますよ。 勘違い王子と企み少女に巻き込まれたある少女の話し。

処理中です...