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2章 街で幸せに
15 通じる想い
しおりを挟む「─── マチルダさん、ただいま戻りました」
食堂のドアを開ける美味しそうな香りが漂います。
香草焼きでしょうか?
「あぁ、お帰り。ちょうど夕飯が出来たところだ。食べながら聞かせておくれ!」
本日の夕飯のメインは鶏肉の香草焼きでした。
ハーブが程よく効いていて美味しいです!
私の隣でウィリアム様も美味しそうに食べています。
でも元とはいえ流石は皇族。いつもながらとても上品です。
「───それで、どうだった?」
「はい、また前回と同じ方々に絡まれてしまったのですが、ウィリアム様が護ってくださいました!」
「リーナ、ウィルだろ?」
あっ、、最近はウィリアム様を呼ぶ時に『ウィル』と言えていたのですが、気を抜くと癖で『ウィリアム様』と言ってしまいますね……。
先程のウィリアム様の姿が素敵すぎて、今思い出しても……あら? わ、私は何をっ!
「へぇ、ウィルがかい!」
「は、はい! とてもお強くて素敵でした」
「そうかい、そうかい。ウィル、よかったじゃないか」
「ははっ、そうですね、、リーナが怖い思いをしていないと良いのですが」
「いえ、最初は少し怖いと感じていましたが、ウィルが庇ってくださいましたので」
か、顔の熱が収まりませんっ。
「それにしても、おんなじ連中かい……」
「あぁ、もう大丈夫だとは思いますよ?」
「?どういうことだい」
「私のような見た目が弱そうな者に完膚なきまでにやられて、さらに向かってくるような気概がある者とは思えませんでしたので」
「へぇ、本当に強いんだねぇ」
「はは、それなりには」
………ウィリアム様の強さは“それなりに”ではなかったと思うのですが、、今思えば、皇族として護身術などを学ばれていたのでしょう。
それに、ウィリアム様……以前は知りませんでしたが、気さくな方ですね。学園では私以外と共にする姿を見なかったので分かりませんでしたが、、
食堂でも最初は、纏う空気の異質さからお客さんに敬遠されがちでしたが、その人柄もあって今では大人気です。たくさんの方とお話しをしています。でも、どんな時でも失わぬ威厳があって堂々としていて、何よりもこの帝国の第二皇子だった方です。
果たして、そんな方に私なんかが釣り合うのか……。
……えぇ、本当はとっくに気が付いていました。私がウィリアム様のことを好きになっていたことに。
……それでも気付かない振りをしていました。意識しないようにしていました。
だって、血の繋がった家族にすら認められず、友人もいなくて、誰からも忌み嫌われていた私などがウィリアム様に好意を寄せるのはおこがましいでしょう?
マチルダさんと話すウィリアム様を眺めます。
この方が私なんかのために、ここにいていい方ではないと分かっているのに………。
「─── リーナ? 悲しそうな顔をしてどうしたんだ?」
「あれ、ほんとだね。何かあったのかい?」
「あっ……、何でもありません。ご馳走さまでした、とても美味しかったです!……今日は少し疲れてしまいましたので、もう休ませていただきますね」
「そうかい? しっかり休みなよ」
私としたことが顔に出ていたようです。すぐに笑顔に戻りって食器を片付け、自分の部屋に向かいます。
感情を隠す技術はそれなりにあると思っていたのですが、、
「…………」
* * *
はぁ………どうすれば良いのでしょう?
ウィリアム様にお帰りいただこうと思っても、急病で亡くなっていることになっているので不可能ですし、、
椅子に座って机に突っ伏してしまいます。
───コンコンコン
「リーナ、、疲れているところすまないが、話をしても?」
ウィリアム様?
………今は落ち着いてお話しできる状態ではないのですが、、
「すみません、ウィル。明日でも大丈夫ですか?」
「出来たら、今話せるとありがたい」
珍しく強引なウィリアム様、、明日にするのは無理そうですね。
「分かりました。 ───どうぞお入りください」
夜中に男性を部屋に招き入れるのはどうかとも思いましたが、ドアを開けておけば大丈夫ですよね?
「あぁ、すまない」
ウィリアム様が座れるように部屋の隅にある椅子を持ってくる。
「あの、話というのは?」
「あぁ、君があまりにも悲しそうな顔だったから心配になってな」
「そういうことでしたら、私は大丈夫です。ご心配いただきありがとうございます」
「………私が君の虚勢に騙されると思っているのか? マチルダ殿は君がすぐに笑顔に戻ったから気付かれていないようだが、私は生まれてからずっと笑顔で腹の探り合いをする世界にいたのだぞ? 笑顔の裏の本心を見抜けないとでも?」
………それはそうですよね。ウィリアム様は皇子であり、笑顔の裏で自分を利用しようとする方を大勢見てきたはずです。
「……ちょっと考え事をしていまして、、ですが大したことはありませんよ?」
「先程のリーナの表情は、学園にいた頃の君がよく浮かべていたものだった。今の君は何かを諦める必要なんてないんだぞ?」
「そ、そんなこと……」
「………私は君が婚約破棄したという噂を聞いてすぐ、それが真実か知るためにカトル公爵家を訪問したんだ。そこで、君が強いられていた生活の一端を知ったんだ。隠さなくてもいい」
まさか、公爵家にいらっしゃっていたなんて、、
「……私の妹のミラにはお会いになりましたか?」
「あぁ、公爵から紹介された」
「私などより可愛らしかったでしょう?」
「確かに可愛らしい容姿ではあったが、それだけで、容姿についてもリーナの足元にも及ばないと思うが?」
「ふふっ、お世辞でも嬉しいです」
「……何故そんなに自信がないんだ、、」
?私には誇れるものが何もありませんから、、
「……自信を持てる要素がないんです」
言っていて悲しくなって俯いてしまいます。
「君は、学園で3年間ずっと、全ての科目で最良の成績を取り続けていた。それだけでも快挙だろう」
あぁ、それは確かに誇っても良いのでしょうか。
「それに、周囲から何を言われても自分を貫いていたではないか」
母の命令と妹のお願いに従っていて、惨めなだけでしょうに、、
「……君が何故あんな姿でいたのか、マチルダ殿に聞いた。家族に強いられた理不尽で折れることなく生きていただけでも、他の者には真似の出来ないことだ!」
そういえば、髪や肌について聞かれないと思っていたのですが、マチルダさんが………。
私から話すのもと思っていたので、正直ありがたいです。
「……リーナ、私を見てくれ」
そろそろと顔を上げると、緑金の瞳が優しく私を見つめていました。
「─── 私はウィリアム様をお慕いしております。きっと、出会った頃から」
「リー────」
「───ですが! 私はこんなに弱い人間です。ウィリアム様に相応しくないっっ、私なんかがっ」
「……リーナ、強くなくていいのだ、確かに君の強さに惹かれていた時もあったが、今となっては君の弱さを支えたい。君を支える役目を与えてくれないか?」
ウィリアム様が私の頬に手を当てて、抑えきれずに零れた涙を拭ってくれます。
………本当に甘えてしまって良いのでしょうか?
「強くなくても良いのですか?」
「あぁ」
「誇れることがなくても?」
「リーナは誰よりもすごい」
「妹のように、可愛らしくなくても?」
「リーナは世界で一番、可愛いくて美しいさ」
「本当に?」
「本当に」
あぁ、こんなに涙が止まらないなんて、、泣いたのはいつ以来でしょうか?
涙で上手くしゃべれません。
「─── ウィリアム様、ずっと、お慕いしておりました」
「あぁ、リーナ」
「ウィリ、アム様、、」
「………泣いてもいいんだ」
もう、、涙を止めることが出来そうにありません
─────
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