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リクエスト集

アナザーストーリー

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 “ウィリアム”が公式に生きているバージョンのお話です!
 エピローグの前で分岐し、エピローグとは既に別次元のお話になっていると考えていただければ(^^)
 何パターンかご意見をいたたきましたが、“ウィリアムは潜入調査をしていた”という設定で書いています。


~~~~~~~~~
 

 カトル公爵の捕縛後、アスラート帝国ではカトル公爵の捕縛と第二皇子ウィリアムの生存の報が回った。

 帝国民は『亡くなったと発表されたはずのウィリアム殿下が生きているとはどういうことか』と頭を捻ったが、皇帝により、カトル公爵が多くの不正を行っている疑いがあったため皇子であるウィリアムを潜入捜査させていたのだという説明が成された。
 
 皇家に継ぐ位にある公爵位の家の不正を暴くのだから捜査する側も相応の位にいなければ誤魔化され、包み隠されてしまうが、高位の者が動くとなると事も大きくなって捜査に乗り出す前に隠蔽されてしまう……。

 そうして考えられたのがウィリアムを死亡とし、カトル公爵領で民達の声を聞き、公爵家の現状を探らせるという策なのだという。


 ……真実を知っている者からすれば全てが嘘というわけではないが、本当の事だけを言っているわけでもないと感じるであろう。
 ウィリアムが皇帝に己の気付きを報告していたことは本当であり、カトル公爵家に侵入して不正の証拠を探したりもしていた。そのおかげで騎士による操作はスムーズに行われた……が、一人の女性のために自分の生死を偽らせたという一番の理由には触れられていないのだから真実とは言いがたいだろう。




* * *



(リーナ視点)


「リーナ、疲れたか?」

「ウィル……はい、少し疲れてしまいました」

 先程、皇城の謁見の間でリーナ・カトルをカトル公爵として叙するという正式な発表が貴族達に向けて出され、同時に私と第二皇子に戻ったウィルの婚約が発表されました。

 謁見の間にいた多くの方はお父様の事件を知りませんので、皇帝陛下……お義父様が退出された後で、“何故、成人したばかりの私が爵位を継承したのか”、“カトル公爵はどうしたのか”という質問の嵐に呑まれてしまいました。

 一緒にいたウィルが上手に切り抜けてくれましたが、、疲れましたね……。

 数週間前にウィルと一緒に皇城に呼ばれた時は何事かと思いましたが、まさか『ウィリアムの死亡を偽報であると発表する』と言われるとは、、二人揃って呆然としてしまいました。
 ……ですが、これでウィルも胸を張って人々の前に立つことが出来るので、良かったです。


「──リーナ、婚儀が終わるまでは皇都に留まって他家との挨拶をしなければならないが、それが終わったら義母さん達を呼んだ結婚式をしよう」

「??式を二回するということですか?」

「あぁ、リーナも義母さんに見てもらって、仲の良い皆から祝福してもらいたいだろう?」

「え、えぇ……ご迷惑ではないですか?」

「まさか! むしろ、特別な装いのリーナを二回も見られるのだから私としては大歓迎だ」

「う、ウィル……!」

 ウィルが皇子なので婚儀の式は当然ながら皇都の大教会で執り行われます。ですが、そうするとお母さんや食堂で仲良くなった方々に来てもらうことが出来ないので残念に思っていたのです。
 あっ、“お母さん”はマチルダさんのことです!
 私の生みの母はカトレアですが、心を育て、護ってくれたのはマチルダさんですから、そのように呼んでもいいかと聞いたら嬉しそうに了承してくれました。
 ウィルも“義母さん”と呼んでいます。


「……公爵領の教会で挙げる小規模な式ならば皆も来られますよね?」

「あぁ!」

「ウィル……ありがとうございます」

「だが、カトル公爵領に戻れるのは早くて半年後……それまでは会うことが出来ないな、、」

「そうですね……寂しいです。来月に婚約式と婚約披露パーティー、半年の準備期間を経て婚儀ですよね?」

「そうだな、、パーティーか……少し気が重いな」

「ふふっ、ウィルは学園に通っていた頃から人気でしたね」

「それもそうだが、私もリーナもまだ社交の場に出たことがないからな……それなのに、いきなり自分達が主役だというのは少し緊張してまう」

 ……ウィルも緊張することがあるのですね、、
 ウィルに言われて私も緊張してきてしまいました……。主役ですから失敗は許されませんし、もし失敗を犯してしまったら他の貴族の方々に、カトル公爵として認めてもらうことが出来ず、将来に大きな陰を落とすことになってしまうでしょう。
 何より、民や臣下からの信頼も厚く、才色兼備なウィルの隣に立つ者として相応しくないと思われてしまったら……。

「リーナ、失敗してはいけないということはまったくないが? 」

「あれ? 声に出てしまっていたでしょうか?」

「いや? 私はリーナの考えを読み取るのが得意だからな。それと、そろそろ敬語をやめてくれないかな?」

「ま、またそのような事を……!」

 手に取った私の髪に唇を落とすウィル……最近はすぐに甘い空気を作ろうとしてくるウィルの言動にあたふたとさせられる毎日ですが、恥ずかしさはあれど不快感はまったくなくて嬉しさだけが募っていきます。
 ……ウィルと一緒ならどんなことも乗り越えられそうです。




* * *



(貴族A視点)


「──本日は多くの者がこの婚約披露パーティーに出席してくれたこと、誠に嬉しく思う。短い時間ではあるが、この喜びを皆と分かち合いたい」

「若輩ではございますが、私とウィリアム殿下との婚約が今後のアスラート帝国のますますの発展に繋がるよう尽力させていただきます」


 今日は第二皇子ウィリアム殿下とリーナ・カトル公爵の婚約披露パーティーに招かれ、招待客が揃ったところで主役の二人が登場されたが……あの女性が本当にリーナ・カトルなのか?
 いや、照明を浴びて白金に輝く髪と、星のような青銀の瞳を見れば一目瞭然なのだが。

 ……それ以前に、彼女は私達と同じ人間なのだろうか?
 私は女神と言われても信じるであろう。

 私の娘もウィリアム殿下とリーナ嬢が学園に通っていたのと同時期に在学していたが、娘の話では父母の髪色どちらとも異なる茶髪で、私生児だという噂まであるとの事だった。
『いつも陰気で鬱な空気を纏っているくせにウィリアム殿下の関心を引いていて気に入らない』と……。
 チラリと隣にいる娘を見ると、驚愕と言った顔でカトル公爵を見つめていた。

 ウィリアム殿下も娘から聞いていた通り、大変優美な方で二人が並ぶと一枚の絵画……いや、宗教画のようだ。

「誰よ、あれ……」

「紹介があっだろう? リーナ・カトル公爵だ」

「そ、そんなはずは……」

「父君である先代カトル公爵は投獄され、母君もリーナ様への虐待で捕縛されたという。……何か事情があったのだろう」

 娘がずっとウィリアム殿下に懸想していて心配であったが、カトル公爵を見た今となってはその気持ちも消えることだろう。

 多くの参列客の視線の先で主役の二人が微笑み合っている。

 ウィリアム殿下は才色兼備な優秀な方でカトル公爵も学園で右に出る者がいない才女だったという。
 年若い二人ではあるが、立派に責務を果たしてくれることであろう。


 ──アスラート帝国の未来は明るいな。






~~~~~~~~


 以上、“ウィリアム”生存の話でした!
 取り敢えず、ウィリアムが公の場に出ることが出来るようにしただけという感じになってしまったので、この先は皆様の想像にお任せするという事で失礼しますm(。_。)m

 次の話はリーナとウィルの子供を登場させる予定です!!


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