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リクエスト集

《if》~仲の良い家族③~

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 先に言ってしまうと、断罪までいきませんでしたorz
 長々とすみません_(..)_
 これの次の話で《if》は終了になります(←本当です。嘘じゃないです(TT))
《if》が終わったら本編完結後のリーナ達の話を書いていくので今後もよろしくお願いしますm(._.)m


~~~~~~~~~



「──第二皇子ウィリアム・アスラート殿下、並びにカトル公爵家ご息女リーナ・カトル嬢のご入場です!」


 入場を報せる声によって、一気に集まる人々からの好奇の視線……。
 これ程多くの視線を受けたのは初めてなので身が固まってしまいました。


「……リーナ嬢、大丈夫だ」

「ウィリアム様……はい、ありがとうございます」

 ふふっ、ウィリアム様の心強い声を聞くとホッとして緊張がほぐれてしまいますね。すっかりと平常心に戻ることが出来ました。
 ……やっぱり、少し恥ずかしいですけどね……?ウィリアム様の腕に添えた手からは服越しにも分かる優しい熱を感じますし、、
 陛下との話し合いを終えて会場にいるはずのお父様達を視線で探します。
 


「──こんばんはウィリアム殿下! 御前に失礼します」

「リック! 儂の話はまだ───」

「……レクト公爵子息、急に何用だ?」

「誠に失礼かとは思いましたが、どうしてもお伝えしなければならないことが」

「いえ! ウィリアム殿下、愚息が申し訳ございません。すぐに下がらせますので」

「父上! ジャマをしないでいただきたい!」

 群衆の中から現れ、私達の進路を塞いだのはまさかのリック様でした。……予想外の展開ですね、、
 そして、リック様を制止しようとするレクト公爵の顔には怒りが見受けられます。
 ……リック様の隣にいる女性のせいでしょうか?

 レクト公爵は引き下がろうとしない息子の様子に“皇子であるウィリアム殿下の前でこれ以上は……”と言わんばかりの表情を浮かべ、リック様とその腕を抱く女性を睨み付けて群衆の中に戻っていきました。

「殿下の隣にいる女は貴方に相応しくありません。早急に離れられるべきです!」

「おかしなことを言うな……このリーナ嬢は貴殿の婚約者であるはずだが?」

「えぇ、だからこそ、その女の陰湿さを熟知しております!」

 ……『陰湿』とは?

「その女は下らぬ嫉妬から、このキャサリンに嫌がらせをしていたのです。子爵令嬢であるキャサリンは、不相応にも公爵家に籍を置くその女からの嫌がらせに涙を飲むしかなく…… 学園に通っていた頃の辛い想いをやっと吐き出すことが出来たのです!」

「そうですわ! リーナ様はわたくしに陰湿な嫌がらせをしてきました。当時の私は公爵家の力が怖くて……でも、思ったんですの。そのような方を野放しにしてはいけないと!」

「キャサリン!」

「……それで?」

わたくしはリーナ様の婚約者であり、同じく公爵家という高位に座するリック様に相談したのですわ」

「……リック殿はどうだ?」

「キャサリンの苦悩を知った僕には黙っていることなど出来るはずがありません! 彼女の苦しみを殿下や皆にも知ってもらいその女に厳罰をと、この機会にこのように声明を出したのでございます!これはその女の婚約者であった僕の使命だと思っております!」

「リーナ嬢が罰されるべきであるから、婚約者である女性を“その女”などと称しても問題はないと?」

「はい! その女に敬意を払う必要などありませんので!」

「ほう、なるほど?」

 ……リック様、、ウィリアム様が肯定と取れなくもないことを言ったからか『殿下が自分の主張を分かってくれた!』というように瞳を輝かせながら高らかに自分の主張を続けています。

 隣に立つキャサリン様も同様に自分がどんなに辛い想いをしたかということを涙ながらに語り、リック様に肩を抱かれて慰められていますね……。

 ……二人は周囲からの冷めた視線を感じないのでしょうか?
 パーティーの参列者からは彼らへの非難や嘲笑と、私への同情、、そしてこの騒ぎがどうなっていくのかという好奇が感じられます。

「ほう? つまり貴殿らは───」


「───皇帝陛下、並びに皇太子殿下のご入場です!」


 ウィリアム様の言葉を遮るように陛下と皇太子殿下の入場の報せが響き渡りました。
 皆が陛下の通路を塞がないように移動して中央を向き、頭を下げます。……リック様達も頭を下げましたが、その顔には勝ち誇ったような笑みが浮かんでいます。
 何故そこまで自分達の正当性を信じられるのか、、キャサリン様に至っては私に冤罪をかけているという自覚があるでしょうに……。

 皇帝陛下と皇太子殿下が会場の正面に用意されていた席に到着したようです。


「皆、楽にしてくれ。……此度は私の祝いの席に参加してくれたこと、誠に嬉しく思う。今日より始まった私の新たな年でも、アスラート帝国の繁栄のため尽力する事を誓おう!」


 陛下の心強い宣言に 会場が拍手に包まれます。

 陛下の挨拶がパーティーの開始の合図となり、この後は爵位の高い家の者から皇族の方々への挨拶に参上するのですが、、どうなるのでしょう……。


「──リーナ、すまない。遅くなってしまった」

「お父様!」

 お父様達がどこにも見当たらずおかしいと思っていたら、陛下と一緒にいらっしゃって、皆の視線が陛下に集まっている時に会場に入ってきたようですね。

「すでに一悶着あったみたいだけど、ウィリアム殿下がいてくださったようでよかった」

「ウィリアム君、ありがとうね」

「いえ、当然のことです」

 ……お父様、お祖父様、お母様、ウィリアム様の4人はそばにいるリック様とキャサリン様を睨みながら言葉を交わしています。

「早速、陛下に挨拶に行こう」

 私達が動かないと他の方々も動けませんものね。
 カトル公爵家は公爵家としても家格が最も高いため、一番最初に皇帝陛下への挨拶に参らねばなりません。
 私達が動き出したのを確認した方々が各々結び付きの強い家同士で集まり談笑を始めます。



 陛下の御前に移動する間にお父様達からレクト公爵家の断罪について教えていただきました。
 どうやら、全ての参列者の挨拶が終わってから実行されるようです。……アスラート帝国の貴族家は帝国としてはかなり少なく、こういった場での挨拶は簡単なものだけではありますが、大分時間があるようですね。
 その間はパーティーを楽しむとしましょう。

 断罪が挨拶の後になった理由は、挨拶も受けずに断罪をするのは、皇族が貴族を軽視していると見られる恐れがあるというのと、皆の談笑の場であるパーティーを楽しむ余裕がなくなってしまうためのようです。
 談笑は談笑ですが、皇族主催のパーティーでなければ顔を合わせない貴族家も多いため、そういった家同士の結びつきを強くするという大切な目的があります。

「──リーナ嬢、父上への挨拶が終わったら君と一曲踊りたいのだが……どうだろうか?」

 リック様はあのような様子ですが、私まで礼儀に反するようなことをするわけにはいきません。
 ……リック様は私と踊ってくださらないでしょうし、今日は誰とも踊れそうにありませんね、、

「え?……すみません、今はまだ私はリック様の婚約者ですので……」

「……そうだな、次の楽しみにしておこう、、いつか君とのファーストダンスを踊る権利を得られることを願う」

「はい……!」



* * *



「陛下、本日はおめでとうございます」

 当主であるお父様が代表で挨拶をし、私達は頭を下げて礼をします。
 何故かウィリアム様は陛下の前まで私をエスコートしてくださいました。てっきり、途中までだと思っていたのですが、、

「カトル公爵、さっきぶりだな……日頃よりの尽力に加えて此度の協力、、誠に感謝する。……ウィリアム、さっきは途中で飛び出しおって。公爵達から詳細は聞いたのだろうな?」

「はい、しっかりと」

「まったく……」

「まぁまぁアーサー君、いいじゃないか。若いうちはこのくらい真っ直ぐな方がいいからね」

 お祖父様、、このような場では敬称でお呼びするべきだと思うのですが……陛下は受け入れているようですし、いいのでしょうか?

「ヘンリー殿……まぁ、そういう考え方もあるか、、リーナ嬢には長年、私が命じた婚約による苦労をかけてしまってすまなかったな」

「い、いえ! ……陛下がアスラート帝国のためにお命じになったことを果たせず申し訳ございません」

「気にするな、、悪いのは本人達の意思を無視したこちらだ。それで、リーナ嬢から見てウィリアムはどうだ?」

「う、ウィリアム様は私にはもったいない方です……」

「おぉ、嫌いではないと! よかったじゃないか、、しかし、そうも強引にしては嫌われてしまうぞ?」

「ハハッ、それは気を付けないといけませんね」

 突然、私の方へと移った視線に驚きました。まさか、皇帝陛下から謝罪されるなんて……。
 その後の会話はほのぼのとしたものでしたが。

「……カトル公爵、この後もよろしく頼む」

「御意に」




* * *




 陛下の元から離れると仲の良い令嬢達に囲まれました。
 彼女達が挨拶をするのは少し先だから、私の元へ来たみたいですね。

「リーナ様、ウィリアム様、お久しぶりですわ」

「お元気でしたか?」

「はい、リリア様とルチア様もお元気でした?久しぶりに会えて嬉しいです」

 リリア様は侯爵家、ルチア様は伯爵家の方で、ルチア様は伯爵家の嫡子の方とそれぞれ婚約を結ばれています。そして、リリア様は皇太子殿下のご婚約者でいらっしゃいます!

「……ところで、リーナ様。ついにウィリアム様とご婚約を?」

「る、ルチア様!? 何をおっしゃって……」

「私もルチアと同じ事を考えていましたわ」

 二人は私と、私の隣に立つウィリアム様とを見ながら微笑みかけてきます。

「おや、そう見えていたのなら嬉しいことだ」

「……なるほど、ウィリアム様が婚約者をお作りにならなかった理由はリーナ様なのですね」

「でも納得ですわ! 昔からお似合いの二人だと噂されていましたもの。……正直に申し上げてしまうと、レクト様はリーナ様に釣り合っていないと、皆が言っておりましたわ」

 え?
 私とウィリアム様はそのように見られていたのですか? 
 ……心を塞き止めようとしていたもの、、周囲の反応への恐怖がゆっくりと崩れていきます。
 
「リーナ様もレクト様も別々のパートナーと入場されたので婚約を解消されたのかと思ったのですが……ちがうのですか? 先程、ちょっとした騒ぎになっていたので心配しました」
 
「……はい、リック様は私がキャサリン様に嫌がらせをしていたから、自分がエスコートするに値しないと仰って……」

「はい? ……キャサリン様、、何かにつけてリーナ様へ対抗心を燃やしていましたが、あのようなことまでなさるなんて……」

「私への対抗心ですか? 申し訳ないことに私はキャサリン様にお会いした記憶がなくて……」

 「それはそうですわ。彼女が勝手に対抗心を抱いて、勝手に敗北して、勝手にリーナ様への闘争心を燃え上がらせていただけですもの、、ウィリアム様はご存知でした?」

「あぁ、あの頃はリーナ嬢に直接の危害を加えているわけでもなく、リーナ嬢への対抗心が向上心にも繋がっていると思っていたのだが……」

 な、なんというか……。




「───リーナ!」


 ……リック様、、今度は何でしょうか?




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