美しく優秀な次女がいるのなら、私は必要ありませんよね? 〜家を捨てた私は本当の姿に戻り、追いかけてきた皇子と街で暮らす〜

夜野ヒカリ

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リクエスト集

《if》~仲の良い家族④~

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「───リーナ!」


 ……リック様、、今度は何でしょうか?

 皆の談笑の声がダンスの音楽が流れる空間に突如として響き渡った、私を呼ぶ怒声……。

「はぁ……仕方がない、計画変更だ。リリア嬢、ルチア嬢すまないが、あそこにいるカトル公爵と先代公爵に『計画変更』と伝えてもらえないか?」

「お任せください、、あの、リーナ様は大丈夫ですよね?」

「もちろんだとも。騒ぎになってしまい申し訳ないな……さ、リーナ嬢」

「はい」




* * * 



 
「リーナ、やっと来たか! 陛下をお待たせするなんて何事だ!!」

「……申し訳ございません」

「リーナ嬢、わざわざすまないな。令嬢の婚約者が言いたいことがあるから呼んでもよいかと言ってな……それでレクト子息、言いたいこととは?」

「はい、それではこの女の罪を奏上させていただきます! ウィリアム殿下にも申し上げましたが、この女は────────」


 リック様はウィリアム様にも訴えていたことをこの場にいる皆に聞かせるように朗々と話していきます。


「───そして、キャサリン!」

「はい、リック様!」

 『リック様に呼ばれた! 』といった様子で駆け寄ってきたキャサリン様も話に加わりました。
 話を聞いている方々の顔を伺うと、皆胡散臭げな表情を隠そうともせず、リック様の後ろにいるレクト公爵は顔を青くしていました。


「──以上がこの女の罪でございます!」


「貴殿の言い分はわかった。……私からもレクト子息等に尋ねたいことがあるのだがよいか?」

「はっ、なんなりと」

「そうか……では、貴殿等は皇帝へ対する虚偽がどれ程の罪になるか知っているか?」

「? い、いえ……」

「では、殺人未遂や民が納めた税の着服、報告書の改竄、禁止薬物の密売・密輸、希少動物の密猟、違法奴隷の所有……これらへの刑の重さは?」

「……いえ」

 リック様とキャサリン様は何故そのようなことを聞くのか、と言った様子で顔を見合わせています。……キャサリン様の方は陛下へ虚偽を言うことが罪になると知ったからか若干不安そうですね。

「お前は何も知らないのか? 礼法の大切さくらいなら知っているだろう?」

「はい、もちろんです! だから僕とキャサリンは──」

「レクト公爵! 貴公は知っているな?」

「……もちろんにございます」

「心当たりがあるよな?」

「私には陛下が何を仰りたいのか理解しかねますが……」

 そのように青白くなった顔では、言ったところで誰も信じないと思うのですが……。

「……カトル公爵!」

「──はっ」

 陛下からの指示を受けたお父様がどこからか取り出した書類を手渡します。

「ここれらは、レクト公爵が解体カトル先代公爵ヘンリーとその姉たるミリアの殺害の依頼書の写し、密告者が提出したレクト公爵家の裏帳簿などだ」

「な、何故それが!!」

「認めたな?」

「クッ」

「これだけではなく、ウィリアム殿下主導の捜査により、多数の違法行為の証拠が上がっており、我が父達を襲った者たちの所有していた武器が、一年程前にレクト公爵家の依頼で作られた剣であることも判明している。……武術に優れた父上だったからよかったもの、リーナや他の者が乗っている馬車だったらどうするつもりだったのだ……!」

「ファーレン、今はそれを言及する時ではない」

「……はっ」

 お祖父様はお父様を諫めましたが、私にはお父様の気持ちがよく分かります。きっと、お祖父様も分かってはいるのでしょう、、

「ち、父上? なんという事を……!」

「クソッッ、リック……お前がもっと頭の働く奴だったらこんなことには……!全てお前のせいだっ!お前がカトル公爵家との関係を悪くしたから……! 」

「衛兵! 連れていけ!」

「ち、父上何を言って……? へ、陛下きっと何かの間違いです! 父がそんな事をするはずが……そうだ! きっと意地汚いこの女の家族に嵌められたんです!」

 レクト公爵は息子の声に反応することなく衛兵に引きずられるように、、しかし、どこか諦めたような様子で連れていかれました。


「──そして、キャサリン嬢。令嬢が私に言ったことに偽りはないか?」

「ありません!」

「本当か?」

「あ、ありませんってば!」

「き、キャサリンまでどうしたんだ? そんなに声を荒げて……」

 ……無言でキャサリン様を見つめる陛下の鋭い視線と身に刺さるような重く冷たい空気……。キャサリン様の忍耐力は大したものですね。

「……これ以上、虚言を重ねて何か令嬢のためになると思うか?」

「……」

「陛下、僕とキャサリンは偽りなど申しておりません!」

 陛下からの追及に口を閉ざしてしまったキャサリン様を庇いつつはっきりと述べるリック様……ここまでくると、いっそ憐れにさえ思えてしまいますね、、

「ごめんなさい、リック様……」

「き、キャサリン?」

「陛下、嘘をついて申し訳ございませんでした。でも、悪気はなかったんです! そ、そんな酷い罰はありませんよね?」

「う、嘘だったのか!? キャサリン、何故!」

「レクト子息、貴殿も同罪だぞ?」

「へ?」

 リック様……自分は騙された被害者だと思っていたのでしようか?
 リック様の呆けた顔に誰かから失笑が漏れます。
 キャサリン様との件がなくとも、レクト公爵があれほどの罪を侵していれば、家として責任を負うでしょうに、、

「当たり前であろう。下に続く家の手本とならなければならない公爵家に籍を置く者が、物事の真偽を見分けられず、情報の審査すらできないようでは困る。一方の声だけを聞いて他方が悪と決めつけ、調べもしないで私に虚偽の発言をするとは……」

「そ、それは……」

「かねてより、貴殿の素行の問題は私の耳にまで届いている。貴族として最低限の礼儀も守れておらず、女性への蔑視も激しいために周囲との衝突が多いようだな……。政略結婚が多い貴族、、愛妾を置くなとは言わぬが、多くの者は奥方を妻として尊重はしている。少しは自身の行動を省みるべきだったな」

「あ、あぁ……」

「リック様……」

「き、貴様のせいだ!」


 ───バンッ


「キャアッ!」

「キャサリン様!」

 膝をついていたリック様が急に立ち上がり、隣にいたキャサリン様を殴り飛ばしました。

「リーナ……僕は騙されたんだ。まだ、、まだやり直せるよな? 僕は被害者だもんな? 優しい君なら赦してくれるだろう? な、なぁ、リーナ」

「……」

「……自分が苦しめ、陥れようとしていた女性に縋るとは……」

 ウィリアム様が、私にすり寄ろうとしてきたリック様 と私との間に入ってくださいました。
 ……こんな状況なのに喜びを感じている自分が信じられません。


「……さて、この場にいる皆に問おう。私はリック・レクト公爵子息とリーナカトル公爵令嬢の婚約を破棄し、第二皇子ウィリアムとリーナ嬢との婚約を新たに結びたいと考えている。これに異議がある者は?」

「!?」

 陛下が急に、私の婚約者の議論を始めました。
 こ、このような場で……それも皆に確認をとるような形で話か上がるなんてっっ!

 ……あら? 反対する人が誰もいない?


「皆、この婚約を承認するということで相違ないか!?」

 小さく起こった拍手が大きな波となって広がり、陛下の挨拶の時以上の大きな歓声と共に鳴り響きました。

 こんなに多くの方に認めていただけるなんて、、こんなに嬉しいことはありませんね、、

「……よかったな、リーナ嬢」

「えっ?」

「不安だったのだろう? ……ほら、泣かないでくれ」

 ウィリアム様が私の頬を伝う涙を優しく拭ってくださいました。
 自分が泣いていたということに驚いてウィリアム様の方を見ると、とても嬉しそうに甘い笑顔を浮かべるウィリアム様が目の前にいて……

「……ウィリアム様、大好きです」

「!? ほ、本当か?」

「あ……っほ、本当です」

 思わず、つい口をついて出てしまった言葉に嬉しさをさらに深めた様子です。

「ウィリアム、場を考えろ」

「リーナ、よかったね」

「……父としては複雑ですが、、」

 パッと顔をあげると私の家族や皇帝陛下のみならず、私達を見る皆が生温い目を していました。

「っっ!」

「皆の祝福、感謝する! リーナ嬢と共にアスラート帝国の発展に尽くすと誓う」

「うむ、大きな騒ぎもあったが、皆残りの時間も楽しんでくれ」

 音楽が流れ始め、各々が談笑やダンスを再開しました。
 陛下への挨拶も再開されるので移動しなければなりませんね。

「……ウィリアム様、本当にありがとうございます。あの、、今後は婚約者としてよろしくお願いします」

「あぁ、本当に幸せだ……こちらこそ受け入れてくれてありがとう、リーナ嬢」

 言葉を切った後にスッと真剣な表情になって私の後ろを見るウィリアム様にどうしたのかとの視線を追うと、お父様達がいました。

「──ウィリアム殿下、どうか……どうかリーナを幸せにしてやってください」

「私からもお願いします」

「私はウィリアム君を信用してるよ」

「リーナちゃんを泣かしたらお仕置きよ?」

「もちろんだ! カトル公爵達もこれからは家族としてよろしく頼む」

 一言ずつ……それでもとても温かい私を思う言葉、、家族からもこんなにも愛されているなんて、私は本当に幸せ者です!
 ……大伯母様は少し剣呑な雰囲気ですが、、

 きっと、これから先の未来は希望に満ちたものとなるのでしょうね……。
 もし辛いことがあってたとしても、愛するウィリアム様と大好きな家族がいれば一緒なら何事も乗り越えることが出来る気がします!


『お姉様ぁぁ! 私もお姉様が大好きですからね~~!』




~~~~~~~~~~


《if》はこれにて終了です!
 この後は本編後のリーナとウィリアム、その周囲の話を書いていく予定です!



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