美しく優秀な次女がいるのなら、私は必要ありませんよね? 〜家を捨てた私は本当の姿に戻り、追いかけてきた皇子と街で暮らす〜

夜野ヒカリ

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リクエスト集

襲来!

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「り、リーナ様……皇帝陛下がいらっしゃるそうです」

「やっぱりですか、、分かりました、いつですか?」

「それが、本日の午後とのことです」

「あの人は……」

 お義父様、いつものことながら少し急すぎるのでは……? 私としては初めて感じた“父”という存在は大きくて、この報せも嬉しいのですが、臣下としては報告を受けて頭を抱えるウィルの気持ちもわかります。

 妊娠がわかってから4カ月……ミネルバ先生の見立では妊娠5カ月とのことで、お腹の膨らみが目立ってきました。
 ミネルバ先生とは検診を通して仲良くなって、気軽な話も出来るようになりました。

 ウィルはというと、時間があれば私のお腹を撫でています。……今は真面目に仕事をしていますが。
 私も安定期に入ったので少しずつ執務を再開しました。今もウィルと同じ部屋で自分の出来ることをしています。最初はウィルに止められましたが説得しました。時折ウィルからの視線を感じますが、今のところ大きな問題はありません。
 ……問題があるとすれば、私のお腹の大きさでしょうか? ミネルバ先生が言うには通常の妊婦のお腹より少し大きいようで、、ウィルは心配しています。


「──あっ」

「リーナ、どうした!?」

「い、今、赤ちゃんが動いたわ……!」

「何っ!?」

 まだ微かな……気泡が弾けるような小さな衝撃。
 今までも動いてはいたのでしょうが、胎動を感じたのは初めてです。

「ふふっ、まだ微かなものでウィルには分からないと思うわよ?」

「いや感じることが出来なくとも、子の成長を感じることは出来るだろう?」

「あら、それでよくお腹に手を当てていたの?」

「あぁ、そうさ……健康に育ってくれているみたいでよかった」

「えぇ」




* * *




「──久しぶりだな! リーナ、ウィリアム」

「お久しぶりです。わざわざお越しくださってありがとうございます、お義父様」

「久しぶりにお会いできて嬉しいです。……ですが、まだ昼を回っておりません」

 ふふっ、ウィルはお義父様の急な来訪に対するちょっとした意趣返しをしたいみたいですね。

「なんだ、ウィリアム……久しぶりに会う父に向かって冷たいではないか。なぁ、リーナ」

「……」

「う、ウィル! お義父様は私達に会うために急いで来てくださったのよ」

「あぁ! 流石は我が義娘だ。よく分かってくれている」

 ……とは言いつつ、午後に来訪があるという報せが当日の朝に届いて、それでも急だというのに結局は午前中の来訪に……少し子煩悩が過ぎるのではと思ってしまいますよね?

「それはそうと、おめでとう! いやぁ、リーナが懐妊とはめでたいことだ」

「ありがとうございます。子は順調に育っておりますよ」

「アルバートも来たがっていたのだが、あやつにはリリアとシリウスがいるだろう? だから、今回は私が来たのだ」

「やはりそうでしたか、お義兄様やリリア、シリウス様もお元気ですか?」

「あぁ、元気に過ごしている。……とはいっても、リリアとシリウスにはなかなか会わせてもらえないが」

「そ、そうですか」

「そうなんだ」

 ……アルバート様、、実の父であるお義父様にまで嫉妬しているのでしょうか?
 真顔で返す陛下、、笑えません。


「──私もリーナに父上に会わせないようにするか……? いや、それでは余計に──」

 
 っウィ、ウィル……!?
 さ、幸いにもお義父様には聞こえていないようですが、何を考えて……!
 お義父様は“家族”というものを私に教えてくださった一人ですから、会えないのは寂しいですね、、ウィルが変なことをしないようしければ……。
 まったく、最近のウィルは困ってしまいます……わ、私を愛してくれているというのは分かっているのですが、度が過ぎています。

「お、お義父様はどれ程の間こちらに?」

「出来れば5ヶ月くらいはいたいのだが立場上、それは難しいらしくてな」

「父上、兄上から期間を決められているのでは?」

「……うむ、残念なことにな滞在は4日間にしてくれと言われた」

 ……4日でも十分では?
 お義父様の補佐をされている宰相様や大臣の皆様にかかっている負担が小さければよいのですが、、

「──だが、馬車を飛ばして三日の道程を二日間で駆け抜けてきたから6日間はここにいられるぞ! 帰りも道程を縮める予定だからな」

「父上……」
「お義父様……」

 お義父様に付いていらっしゃった騎士様方がお疲れの様子だったのは、そういうことだったのですね、、

「そうだ、アルバートから二人への手紙を預かってきた。読んであげなさい」

「まぁ!」

 ウィルがお義父様から受け取った手紙を早速といった様子で開き、二人で覗き込みます。


〈ウィリアム、リーナ、二人とも元気にしているか? リーナが懐妊したという報せを見てとても驚いた。本当におめでとう! ……二人の子はどのような子なのだろうか、、私も早く会いたいな。リリアも祝いの言葉を伝えてほしいといっていた。リーナにすごく会いたがっているから、子が生まれて落ち着いた頃に今度は私とリリア、シリウスの三人で訪ねようと思う。シリウスは二人が最後に会った時によりも随分と大きくなってな、、子の成長とは早いものだ。シリウスも『リーナのお腹に赤ちゃんがいるんだぞ』と言ったら『ぼくがおにいさま!?』とはしゃいでいてな。その言葉に『そうね』と笑顔で返すリリアも大変に可愛らしかった。 あぁ、あの光景を絵師に描かせなかったことが悔やまれる! ……話がそれてしまったな。父上の急な訪問には驚いただろう? 父上の暴走を止められなくてすまないな……まぁ、父上の気持ちも分からなくはないが。父上のことだ道程を短縮して滞在期間を延ばそうとしているだろう? 激務を始める前に、父上にも休養が必要だから、しばらく相手をしてやってくれ。……それにしても二人の子供か、、どちらに似ても可愛らしいのだろうな。ウィリアムの小さい頃は今でもよく覚えている! 私よりも明るい緑金の瞳をキラキラさせていて何かをうったえてきたり、プニプニのほっぺたをさらに膨らませて拗ねていたり、、本当に可愛らしかった! あぁ、こんなこともあったな。ウィリアムが5歳の頃──────

─────少し長くなってしまったが、リーナの無事の出産を祈っている〉


「ふふっ、ウィルは小さな頃はヤンチャだったのね」

「……わ、忘れてくれ」 

 5枚にもわたる手紙は大変にお義兄様らしい内容で、8割はリリアとの惚気やシリウスのこと、そしてウィルの話でした。私のこともとても気に掛けてくださっているみたいで嬉しいです!
 ウィルは読み進めるうちに幼い頃の失敗談を私に知られるのが恥ずかしいのか、手紙を持つ手に力が入っていっていました。顔も赤いですね。
 私の知らないウィル……私としてはもっと知りたいのですが……。
 しつこく聞いてしまってはウィルを怒らせてしまうでしょうか?

「ウィリアム、そのような顔をしてどうした?………なるほど、懐かしいではないか。昔はウィリアムもアルバートも素直で、、毎日私の所に来ては「父上!」

「……なんだ、ウィリアム」

「昔の話はやめてください」

「ほぅ、リーナには知られたくないと? ハッハッ、お前も可愛いな。……しかし、リーナは知りたいだろう?」

「は、はい!」

「リーナっ!?」

 そうです、お義父様がいらしているのですから、ウィルの小さい頃のお話を色々聞くことができますよね?

「リーナ、私は今の私を知っていてくれれば十分だ」

「……私はウィルのことなら何でも知りたいのだけど……ダメかしら?」

「っっ、す、少しなら……」

 ウィルは私のお願いに弱いですね、、
 ウィルには申し訳ありませんが、愛する人のことを知りたいと思うのは当然のことですよね?

「ありがとう……あら?」

「ど、どうした?」

「ふふっ、この子もウィルのことを知りたいみたい」

「おぉ、もう胎動が始まっていたか! 元気に育っているようでよかった」 

「……我が子の初めてのお願いか、、ますますリーナのお願いを断るわけにはいかないな」
 
「ハッハッハ、それでは何から話そうか……たくさんあるが、まずは ウィリアムとアルバートが二人で城を抜け出そうとした時のことだな。 ウィリアムが6歳の頃────」

 







* * *


 お兄様からの手紙これでも削ったんですけど、まだ長いですねぇ……
 やっぱりブラコンなお兄様でした(´-ω-`)

 次回はこのお話の“5ヶ月後”です!



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