美しく優秀な次女がいるのなら、私は必要ありませんよね? 〜家を捨てた私は本当の姿に戻り、追いかけてきた皇子と街で暮らす〜

夜野ヒカリ

文字の大きさ
36 / 57
リクエスト集

誕生

しおりを挟む


(ウィリアム視点)


「リーナ、体調は大丈夫か?」

「えぇ、大丈夫よ」

 臨月に入ったリーナ……予定日まではあと二週間程とまだ遠いが、いつ産気付いても対応が出来るように準備は進めてある。
 ミネルバ医師は少し前から屋敷に常駐している。リーナが街の患者さん達は大丈夫なのかと心配していたが、優秀な助手達がいるから問題はないらしい。

 リーナのお腹はとても大きくなっていて、動きも活発になっている。
 ミネルバ医師はお腹の大きさや胎動の感じからして、リーナのお腹にいるのは双子の可能性が高いと言っていた……初産な上に双子の出産だとしたら危険が伴うかもしれないとも、、

「……ウィル、心配しなくても大丈夫よ。貴方の子だもの、きっと私を気遣って出て来てくれるわ」

「そ、そうだな」

 ……またリーナに気を遣わせてしまった、、
 リーナの方が不安だろうに、私がこんなことではいけないな。

「あら?」 

「どうした?」

「なんだかお腹が張るような感じが……っっ!」

「リーナ、陣痛が始まったのか!?」

「用意した部屋にいるミネルバにリーナの陣痛が始まったと伝えてくれ!」

「はい!」

 控えていたメイドにミネルバ医師への報せを託してリーナを抱き上げるが、リーナは返事をするのも辛い様子だ。

「リーナ、移動するぞ。辛いと思うが耐えてくれっ……」 

「っは、はい」

 あぁ、リーナの痛みを代わってあげることができたらいいのに……。
 声を掛ける以外、何もでない自分が情けない。



* * *



「ミネルバッ、準備は整っているか!?」

「もちろんです、リーナ様をこちらへ!」

 出産に備えて準備をしておいた部屋のベッドにリーナをおろす。
 緊迫した部屋の中にはリーナが苦しそうに呻く声だけが響いている。なんとか和らげることはできないのか……。


「──収まったみたいですね」

「は、はい……」

「リーナ、今のうちに水を飲んでおくか?」

「えぇ……ありがとう」

 陣痛は周期的に続き、だんだんと間隔が短くなっていくのだという、、

「……リーナ、頑張ってくれ」

「もちろんよ、元気な子を生んでみせるわ」

「ウィリアム様は立ち会いをされるのですよね?」

「あぁ、何も出来ないが頑張っているリーナの近くにいたい」

 多くの貴族の男は妻の出産に立ち会わないが、私は二人の愛の結晶たる子供のために頑張っている妻の側を離れたくない。



「──っは、あぁっ」

「リーナ様! 次の波がきたら息んでください!頭が見えています、もうすぐ御子様に会えますよ!」 

 無限にも思える時間……いよいよなのか

「っっ!」


 ───ホギャアァ……


「う、生まれた?」

「はい、リーナ様おめでとうございます! 元気な男の子ですよ」

「ウ、ウィル……」

 部屋に響く元気な声……。
 リーナも疲労困憊といった様子だが、目に涙をうかべて嬉しそうにしている。
 
 私は、父親になったんだな───

「あぁ……リーナ、元気な子を生んでくれてありがとう。本当に……」

「リーナ様、ウィリアム様、御子様の顔を見てあげてください」

 まだ起き上がることが出来ない様子のリーナの頭を撫でていると、ミネルバ医師が簡単にお湯で清拭した赤子をリーナの枕元に置いてくれた。
 ミネルバ言うには初産とは思えない程の安産だったようだ。

「少し小さいかしら?」

「そうだな……だが、予定日よりも二週間程早いのにとても元気な子だ」

「そうね……髪の毛は私と同じみたい」

「あぁ、まだ少なく色も薄いがリーナと同じ綺麗なプラチナブロンドだ。瞳は何色だろうか」

「早く見たいわね。顔立ちはウィルに似ている気がするわ……っ?!」

「リーナ!」

「やはり双子だったようですね。御子様をこちらに!」

 一人目の子を生んでからまだ10分も経っていない……リーナの体力は大丈夫だろうか?

 また何も出来ない自分への無力感が訪れる。
 どうか、リーナも子も無事に……!
 

──────
─────
───


「──生まれました!」

 声が聞こえないが、、生まれたのか?
 生まれるまでに先程よりもさらに長い時間がかかった。

「っか、仮死状態です!処置を行います」

「っっ!」

 やっとの思いで出てきてくれた子は息をしていなかったらしい、何てことだ……
 ミネルバ医師が呼吸を促すために皮膚刺激を与えている、、リーナも心配そうにミネルバ医師の様子を見つめているな。



 ───ホギャア……



 しばらくして、一人目の子よりも元気な声が発せられた。

「もう、大丈夫ですよ」

「あぁ……よかったわ」

「本当に……リーナもよく頑張ったな!」

「二人目の御子様は女の子のようです」

 ミネルバ医師が抱いていた女の子をリーナに、メイドが抱いていた男の子は私へとそっと渡される。

「……この子はウィルと同じ髪ね」

「本当か?」

「えぇ!……名前はどうする?」

「私が決めていいのか?」

「もちろんよ、ウィルに決めてほしいの」

 リーナの妊娠がわかった時からいくつか候補を考えていたが、この子達の顔を見て意志が固まった。

「……兄である男の子には“エリオット”、妹の女の子には“ソフィア”という名前はどうだろう?」

「エリオットとソフィア……素敵ね! 何故かしら? この子達にピッタリな感じがするわ」

 腕の中にいるソフィアに目を落とすリーナ……大分疲れているようだな、、無理もない。
 初産なのに双子の出産となってしまったリーナの体力は限界に近いだろう。

「リーナ、この子達を生んでくれてありがとう」

「ふふっ、私こそありがとう」





* * *





 エリオットとソフィアが生まれてからあっという間に一週間が経った。

 二人共とても健やかで、元気だ。
 リーナは産後数日間……今もまだ後陣痛で大変そうだ。
 それでも、エリオットとソフィアの顔を見ると嬉しそうに笑みを漏らしている。
 ……まるで聖母だ。

「──リーナ、体調は大丈夫か?」

「えぇ、大分良くなったわ……どうかしたの?」

「父上と兄上から手紙が届いたんだ」

「もう?……相変わらず早いわね」

「あぁ……」

 苦笑気味のリーナの気持ちがよく分かる。
 リーナが男の子と女の子の双子を生んだことや、子供達をエリオットとソフィアと名付けたことなどを書いた手紙を送ったのは3日前だ。
 ……ここから皇城まで片道で3日かかるはずなのだが、、どうやっているのか大変気になるところである。

 手紙は二人からそれぞれあって、その両方が10枚を超える文字が綴られていたため、先に読ませてもらった。
 こんな質量の手紙、リーナの負担になってしまうだろう?

「すごく分厚かったから先に読ませてもらったが、まとめると『おめでとう、無事に生まれてよかった。子供達に会うのが楽しみだ』というところか? それと、来月に兄上がリリアさんとシリウスを連れて会いに来るらしい」

「まぁ! リリアも?」

「あぁ、会うのは久しぶりだろう?」

「えぇ!会うのが楽しみだわ」

「……エリオットとソフィアは寝ているみたいだな」

 ゆりかごの中でスヤスヤと眠る二人に視線を移す。
 生まれた時よりさらに可愛さが増した。瞳の色もわかって、エリオットは青銀でソフィアは緑金だった。

「可愛いわね」

「あぁ、天使のようだ」

「二人は将来どんな成長を遂げて、どんな人と結ばれるのかしら……ふふっ、気が早いわね」

 ……ソフィアは嫁に出さなきゃいけないのか?
 そんな………。

「ウィル?どうしたの?」

「い、いや……ソフィアは嫁いでいってしまうのだろうかと考えてしまって、、」

「エリオットもソフィアも、、想いが通じ合った人と結ばれてほしいわね」

「そ、そうだな……」

 それもそうだが、違うんだ。
 リーナの笑顔に否定することが出来なかったが、そういうことではないんだ。

 エリオットは私の息子なのだから、リーナのような素敵な女性を見つけることだろう。
 ソフィアは……変な男に絡まれてしまうかもしれない。
 リーナも、私が出会った頃には政略ではあるが婚約を結んでいたからな……。

 もちろん、二度とリーナをそんな目には遭わせないし、ソフィアにもそのような想いはさせないが。


 ……取り敢えず、ソフィアの相手は私も慎重に確認するとしよう。
 最低条件はソフィアを護れる強さと、心の支えとなれるような深い優しさがあることだろうか? 
 いや、足りないな……ソフィアが必要以上の苦労をすることがないような甲斐性や、知識や教養も……それに─────


 ……まだ、早いか。
 まずは私とリーナの元へ来てくれた二人と、そんな存在を与えてくれたリーナの幸せを護っていこう。




~~~~~~~~~~


《おまけ》

「う、ウィル?」
「………」
「どうしたの?」
「………」
「ねぇ、ウィル!?」
「……」

 ウィルがこんなに考え込んでいるなんて……
 私が呼んで反応しなかったことなんて初めてだわ。
 ……ソフィアが苦労する未来が見えてしまったわね、、ソフィアの将来は大丈夫かしら……?
 も、もしもの時は私がウィルをなんとかしましょう。

 でも、私の娘だもの、きっとウィルのような優しくて頼りがいのある方と結ばれることが出来るでしょうね……ふふっ、少し自慢っぽくなってしまったかしら?




 はい、以上、エリオットとソフィアの誕生秘話(?)でした!
 二人の成長もそのうち投稿していく予定ですが、この後《if》系の話を入れます!
 ちょっとドロドロで、リーナがブラックになっています_(..)_



 

しおりを挟む
感想 132

あなたにおすすめの小説

初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結】

星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。 だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。 しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。 王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。 そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。 地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。 ⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。

【完結】家族にサヨナラ。皆様ゴキゲンヨウ。

くま
恋愛
「すまない、アデライトを愛してしまった」 「ソフィア、私の事許してくれるわよね?」 いきなり婚約破棄をする婚約者と、それが当たり前だと言い張る姉。そしてその事を家族は姉達を責めない。 「病弱なアデライトに譲ってあげなさい」と…… 私は昔から家族からは二番目扱いをされていた。いや、二番目どころでもなかった。私だって、兄や姉、妹達のように愛されたかった……だけど、いつも優先されるのは他のキョウダイばかり……我慢ばかりの毎日。 「マカロン家の長男であり次期当主のジェイコブをきちんと、敬い立てなさい」 「はい、お父様、お母様」 「長女のアデライトは体が弱いのですよ。ソフィア、貴女がきちんと長女の代わりに動くのですよ」 「……はい」 「妹のアメリーはまだ幼い。お前は我慢しなさい。下の子を面倒見るのは当然なのだから」 「はい、わかりました」 パーティー、私の誕生日、どれも私だけのなんてなかった。親はいつも私以外のキョウダイばかり、 兄も姉や妹ばかり構ってばかり。姉は病弱だからと言い私に八つ当たりするばかり。妹は我儘放題。 誰も私の言葉を聞いてくれない。 誰も私を見てくれない。 そして婚約者だったオスカー様もその一人だ。病弱な姉を守ってあげたいと婚約破棄してすぐに姉と婚約をした。家族は姉を祝福していた。私に一言も…慰めもせず。 ある日、熱にうなされ誰もお見舞いにきてくれなかった時、前世を思い出す。前世の私は家族と仲良くもしており、色々と明るい性格の持ち主さん。 「……なんか、馬鹿みたいだわ!」 もう、我慢もやめよう!家族の前で良い子になるのはもうやめる! ふるゆわ設定です。 ※家族という呪縛から解き放たれ自分自身を見つめ、好きな事を見つけだすソフィアを応援して下さい! ※ざまあ話とか読むのは好きだけど書くとなると難しいので…読者様が望むような結末に納得いかないかもしれません。🙇‍♀️でも頑張るます。それでもよければ、どうぞ! 追加文 番外編も現在進行中です。こちらはまた別な主人公です。

いや、無理。 (完結)

詩海猫(8/29書籍発売)
恋愛
細かいことは気にせずお読みください。 もはや定番となった卒業パーティー、急に冷たくなって公の場にエスコートすらしなくなった婚約者に身に覚えのない言い掛かりをつけられ、婚約破棄を突きつけられるーーからの新しい婚約者の紹介へ移るという、公式行事の私物化も甚だしい一連の行動に、私は冷めた瞳をむけていたーー目の前の男は言い訳が終わると、 「わかってくれるだろう?ミーナ」 と手を差し伸べた。 だから私はこう答えた。 「いや、無理」 と。

冤罪で退学になったけど、そっちの方が幸せだった

シリアス
恋愛
冤罪で退学になったけど、そっちの方が幸せだった

夫と愛し合った翌朝、一方的に離縁されました【完結保証】

星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
美しい公爵夫人マルグリートは、冷徹な夫ディートリヒと共に、王国の裏で密かに任務をこなす“悪女”。 だがある日、突然夫から離婚を言い渡される。しかもその裏には、平民の愛人の存在が──。 失意の中、王命で新たな婚約者・エルンストと結ばれることに。 どうやら今回の離婚再婚は、王家の陰謀があるよう。 「悪女に、遠慮はいらない」 そう決意した彼女は、華やかな舞踏会で王に真っ向から言い放つ。 「わたくし、人の家庭を壊しておきながら悪びれない方に、下げる頭は持っていませんの。  王族であられる前に、人におなりくださいませ。……失礼」 愛も、誇りも奪われたなら── 今度はこの手で、すべてを取り戻すだけ。 裏切りに燃える、痛快リベンジ・ロマンス! ⚠️本作は AI の生成した文章を一部に使っています。タイトル変えました。コメディーです。主人公は悪女です。

さようなら婚約者

あんど もあ
ファンタジー
アンジュは、五年間虐げられた婚約者から婚約破棄を告げられる。翌日、カバン一つを持って五年住んだ婚約者の家を去るアンジュ。一方、婚約者は…。

国外追放ですか? 承りました。では、すぐに国外にテレポートします。

樋口紗夕
恋愛
公爵令嬢ヘレーネは王立魔法学園の卒業パーティーで第三王子ジークベルトから婚約破棄を宣言される。 ジークベルトの真実の愛の相手、男爵令嬢ルーシアへの嫌がらせが原因だ。 国外追放を言い渡したジークベルトに、ヘレーネは眉一つ動かさずに答えた。 「国外追放ですか? 承りました。では、すぐに国外にテレポートします」

悪役断罪?そもそも何かしましたか?

SHIN
恋愛
明日から王城に最終王妃教育のために登城する、懇談会パーティーに参加中の私の目の前では多人数の男性に囲まれてちやほやされている少女がいた。 男性はたしか婚約者がいたり妻がいたりするのだけど、良いのかしら。 あら、あそこに居ますのは第二王子では、ないですか。 えっ、婚約破棄?別に構いませんが、怒られますよ。 勘違い王子と企み少女に巻き込まれたある少女の話し。

処理中です...