美しく優秀な次女がいるのなら、私は必要ありませんよね? 〜家を捨てた私は本当の姿に戻り、追いかけてきた皇子と街で暮らす〜

夜野ヒカリ

文字の大きさ
40 / 57
リクエスト集

《if》並行世界の悪夢④

しおりを挟む


「……リーナ、大丈夫か?」

「はい、問題ありません」 

 レクト公爵を検挙した翌朝、私とウィリアム様はリック様とリディアさんが占拠するカトル公爵家に向かって出発しました。

 数日間の道程でたった今到着しましたが……外から見た感じでは私が出ていった時と変わりありませんね。

 ……3年間、あくまでも書類上ではありましたが、夫婦というの関係にあったのですから、これから起こること、少し前にこの場所で起きたことを思えば不安や悲しみの感情が浮かぶかと思ったのですが、そういった感情は自分でも驚くほどにありません。
 私の精神的な負担を心配してくださったのであろうウィリアム様には申し訳ありませんが、今の私の心の中にあるのは怒りと同情の念だけです。


「……早速突入してみませんか?」

「リーナが望むのなら構わないが、レクト公爵の時と同じように待っていてくれても問題はない。……どうする?」

「もちろん付いていきます」

「……そうか、では行こう」





* * *




「──リーナお嬢様!ご無事でしたか……!皆、リーナ様の身を案じることしか出来ないことを歯痒く思っておりました。よくぞご無事で……」

 門に行くと、番をしていた者が涙を浮かべて私の無事を喜び、すぐに屋敷の中に通してくれました。
 すぐに執事長が駆けてきましたが、ほとんど取り乱すことのなかった執事長がこんなに心配してくれたなんて……

「心配をかけてしまって、ごめんなさい。……貴方達は大丈夫でした?」

「はい……罵声を浴びせられる程度で直接的な危害を加えられた者はおりません。ただ……リック様とお連れ様の厚顔無恥な行いを諌めることが出来ず……」

「良いのです。貴方達も無事で良かったです……安心してください、カトル公爵家をあるべき形に戻しますから」

 私の隣に佇んでいたウィリアム様に視線を送ると、頷きを返してくださいました。
 それにしても使用人達に被害がなくて良かったです……リック様は私が出て行けば、他の者には何もしないと言っていましたが、その言葉を信じられる根拠はありませんでしたから。あのリック様でも最低限の約束は果たしたということでしょうか?
 ……考える頭がなくて、カトル公爵家に忠誠を誓った者達の存在を軽視し、そのままにしていたと考える方が自然ですね。
 ちなみにリック様とリディアさんはブティックに行っているらしいです。

「ところで、リーナお嬢様……そちらの方は?」

「あっ、紹介もせずすみません、この方はウィリアム第二皇子殿下です」

「なんと……カトル公爵邸の執事長を拝任しておりますロバートと申します。ウィリアム殿下に拝謁する機会を得られましたこと、光栄に存じます」

「あぁ、此度は貴族としての義務を放棄し、殺人にまで加担した罪人を検挙するためにリーナ嬢に協力していた」

「それは……ありがとうございます」

 ……ロバートはお祖父様の代から執事を務めていて、お父様のことは幼い頃から見ていたと聞いています。
 そのお父様が不審な事故で逝去し、婿入りした男が自分が仕組んだのだと言わんばかりの行動を取っていたのです。
 そんな男が横暴に振る舞う屋敷に仕え続けるのは大層な苦痛であったことでしょう、、

「……私の方でも何か出来ないかと思い、リック様とお連れ様の調査を行いました。お二人には多くの余罪があるようですので、後程報告書をお渡しいたします」

「……ご苦労だった。協力に感謝する」

 



「───リーナ! 誰の許しを得てこの屋敷に入ったっ!」

「……お久しぶりですね、リック様。私が私の屋敷に入るのに許可をもらう必要はあるのでしょうか?」

「あるに決まってます!なんで勝手に私達のお家に入っているんですかぁ!?」

 リック様とリディアさんが腕を組み、息子さんは少し離れて着いていくという形で三人が入ってきました。
 ……リディアさんは随分と絢爛なドレスを着ていますね、、重くないのでしょうか?
 高級ブティックの品だということは分かりますが、、それにしては胸元と背中が大きく開き、深いスリットが入っていて品のないドレスですね……特注品なのでしょうが、、

「あっ!このドレス、どうですかぁ?  今リーナさんが着ているのよりも可愛いですよねぇ!」

「……私では着られないようなデザインですね」

「やっぱり、そうですよねぇ!! ……あら、そちらの方は?」

 リディアさんにつられて隣に立っているウィリアム様の方を見ると、無表情で冷たい空気を放っていました。

「……ん? あっ、ウィリアム殿下! お久しぶりですね、我が家までわざわざお越しとは、すぐに気が付かずに失礼しました」

「えっ、 王子様ですかぁ!?」

「……久しぶりだな、リック殿」

 ウィリアム様は私を庇うように前に出ると、キャーキャー騒いでいるリディアさんには目も向けずに、リック様に短く挨拶を返しました。

「初めまして、王子様! カトル公爵夫人のリディアですぅ」

「……リック殿、これはどういうことかな?」

「はい、私の妻のリディアでございます。こちらは息子のトーマスです」

「貴殿は次期カトル公爵であるリーナと結婚していたのでは?」

 ……ウィリアム様、リック様に己の不貞を自白させるつもりですね? リック様なら簡単に話すでしょうが……

「はい、そいつに子が出来ないので私の息子を次期公爵にしようと思い、リーナとは離縁しました!」

 ……やっぱり。そして、ウィリアム様から背中しか見えていない私でも分かるほどの冷気を感じるのですが、、

「………」

「う、 ウィリアム殿下? どうなさい──グヘェッ」

「キャア、リック様ぁ!」

「ウィリアム様!?」

 何が起こったのか……リック様が吹き飛ばされてしまいました。……一瞬、ウィリアム様の体がブレて見えたのでウィリアム様が何かしたのでしょうが……


「ウグッ、殿下、何をっ! いくら殿下でも許されませんよ!? 」

「リック殿、貴殿にはファーレン・カトル並びにカトレア・カトルの殺害に加担した容疑がかかっている。市民に対する暴行、無銭飲食、、貴族の家督相続における法を無視した行為については先程自分から証言していたな?」

「アガッ」

 ……ツカツカと倒れているリック様に近寄って、その背中を踏みつけるウィリアム様、、これではどちらが悪人なのだか……

「貴殿の子にカトル公爵家の相続権があると思っているのか?」

「とっ、当然──」

「ない。そもそも、貴殿はカトル公爵ではないのだから。  ……貴殿もそちらの女性も身分詐称の罪に問われるだろうな」

「えっ!?  なんでですか!」

「当たり前だろう。皇子である私に『カトル公爵夫人の』などとのたまったのだ」

「わ、私達が捕まったら、トーマスはどうするんですか!?」

「子には罪はない。新たにレクト公爵となるリック殿の兄上に養子として引き取ってもらう予定だ。幸いなことに養子となる条件は満たしているし、すでに容認をもらっている」

 ……さ、流石はウィリアム様です。いつの間にそのようなことまで手を回していたのか、、
 ……あちらも、受け入れる他なかったでしょう。父と弟が問題を起こしたのですから。
 リック様のお兄様は人格者で、問題の多い父をどうにかしようと奔走されていたようです。私も何度かお会いしていますが、とても優しい方でしたから、自分から弟の子を引き取りたいと言ってくださったのかもしれませんね。

 ……あら?
 そういえばと思ってトーマス君を探すと、ロバートが別室に連れていっていたようです。
 ……良かったです。まだ幼い子供に自分の父親が踏みつけられている様子を見せるのはよくありませんもの。

「さて、貴殿らの罪状は理解しただろう? 騎士団で詳細の取り調べを受けてもらうぞ……連れていけ!」

 ウィリアム様の言葉を受けて待機していた騎士達が二人を連れていこうとしますが、、リック様は諦めが悪いようですね。リディアさんは顔を白くして立ち尽くし、抵抗もしていません。

「ッリーナ! お前の夫が罪人になってもいいのか!?」

「? リック様自身が『リーナとは離縁した』と仰っていたではありませんか」

「~~~!」


 自業自得、身から出た錆ですよね?





* * *



 
 
 リック様達の捕縛から半年……やっとレクト公爵家による犯罪や不正の余罪追求が終了し、落ち着いた日々となってきました。

 お父様とお母様の葬儀リック様の捕縛から一月が経った頃に執り行われましたが、慌ただしい中で行ったため、通常よりも簡素なものになってしまいました。
 急ぐ必要はなかったとも思うのですが、カトル公爵領ひいてはアスラート帝国のために身を捧げていた二人を早く弔ってあげたかったのです。
 残念なことに遺体が見つかっていなかったので、骸のない墓に花を手向けるという形となってしまいましたが、皇帝陛下をはじめとしたくさんの方が参席してくださいました。

 そしてその時、久しぶりにレクト公爵となったリック様のお兄様とトーマス君に会いましたが、二人は良い関係を築けているようですね。トーマス君は実の親といた時よりも楽しそうでした。
 そのリック様とリディアさんは、リック様は起こしたことが大きかったために処刑され、リディアさんは投獄されました。
 リック様には自分が仕出かしたことの重大さをあの世で悔い改めてほしいですね、、

 そして私はと言うと、ウィリアム様と再婚しました!
 貴族としてはかなり珍しいスピード婚でしたね、、
 皇族が離婚歴のある私に嫁ぐのはどうかという議論もあったのですが、ウィリアム様が説き伏せてくださいました。
 
 私としては清い身ではなくなってしまった私などにウィリアム様のような素敵な方はもったいないと思っていたのですが、葬儀が終わってからというもの暇さえあれば甘い言葉を投げ掛けてくるウィリアム様に絆されてしまったようです。
 
 ウィリアム様との生活は始まったばかりですが、毎日が幸せに満ちていてすでにウィリアム様がいなかった頃のことが思い出せないほどです!

 これからどんなことがあるのか……未来に希望がもてる日が来るなんて少し前まで思ってもみませんでした。
 でもきっと、ウィリアム様と歩む道は明るい光に照らされた道ですよね?
 
 



 




~~~~~~~~


 以上、“リーナがリックと結婚していたら?”のお話でした!
 
 取り敢えず、リクエストいただいたお話は書ききったでしょうか……?
 忘れているお話があったらすみません(>_<)
(知らせていただければ、書きます!!)
 
 この後、リーナとウィルと双子のほのぼのとした話を書いていこうと思います。
しばらく投稿はできないと思いますが、ご了承下さい_(..)_

 ここまで読んでくださった皆様、誠にありがとうございました!!











しおりを挟む
感想 132

あなたにおすすめの小説

初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結】

星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。 だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。 しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。 王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。 そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。 地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。 ⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。

【完結】家族にサヨナラ。皆様ゴキゲンヨウ。

くま
恋愛
「すまない、アデライトを愛してしまった」 「ソフィア、私の事許してくれるわよね?」 いきなり婚約破棄をする婚約者と、それが当たり前だと言い張る姉。そしてその事を家族は姉達を責めない。 「病弱なアデライトに譲ってあげなさい」と…… 私は昔から家族からは二番目扱いをされていた。いや、二番目どころでもなかった。私だって、兄や姉、妹達のように愛されたかった……だけど、いつも優先されるのは他のキョウダイばかり……我慢ばかりの毎日。 「マカロン家の長男であり次期当主のジェイコブをきちんと、敬い立てなさい」 「はい、お父様、お母様」 「長女のアデライトは体が弱いのですよ。ソフィア、貴女がきちんと長女の代わりに動くのですよ」 「……はい」 「妹のアメリーはまだ幼い。お前は我慢しなさい。下の子を面倒見るのは当然なのだから」 「はい、わかりました」 パーティー、私の誕生日、どれも私だけのなんてなかった。親はいつも私以外のキョウダイばかり、 兄も姉や妹ばかり構ってばかり。姉は病弱だからと言い私に八つ当たりするばかり。妹は我儘放題。 誰も私の言葉を聞いてくれない。 誰も私を見てくれない。 そして婚約者だったオスカー様もその一人だ。病弱な姉を守ってあげたいと婚約破棄してすぐに姉と婚約をした。家族は姉を祝福していた。私に一言も…慰めもせず。 ある日、熱にうなされ誰もお見舞いにきてくれなかった時、前世を思い出す。前世の私は家族と仲良くもしており、色々と明るい性格の持ち主さん。 「……なんか、馬鹿みたいだわ!」 もう、我慢もやめよう!家族の前で良い子になるのはもうやめる! ふるゆわ設定です。 ※家族という呪縛から解き放たれ自分自身を見つめ、好きな事を見つけだすソフィアを応援して下さい! ※ざまあ話とか読むのは好きだけど書くとなると難しいので…読者様が望むような結末に納得いかないかもしれません。🙇‍♀️でも頑張るます。それでもよければ、どうぞ! 追加文 番外編も現在進行中です。こちらはまた別な主人公です。

いや、無理。 (完結)

詩海猫(8/29書籍発売)
恋愛
細かいことは気にせずお読みください。 もはや定番となった卒業パーティー、急に冷たくなって公の場にエスコートすらしなくなった婚約者に身に覚えのない言い掛かりをつけられ、婚約破棄を突きつけられるーーからの新しい婚約者の紹介へ移るという、公式行事の私物化も甚だしい一連の行動に、私は冷めた瞳をむけていたーー目の前の男は言い訳が終わると、 「わかってくれるだろう?ミーナ」 と手を差し伸べた。 だから私はこう答えた。 「いや、無理」 と。

冤罪で退学になったけど、そっちの方が幸せだった

シリアス
恋愛
冤罪で退学になったけど、そっちの方が幸せだった

夫と愛し合った翌朝、一方的に離縁されました【完結保証】

星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
美しい公爵夫人マルグリートは、冷徹な夫ディートリヒと共に、王国の裏で密かに任務をこなす“悪女”。 だがある日、突然夫から離婚を言い渡される。しかもその裏には、平民の愛人の存在が──。 失意の中、王命で新たな婚約者・エルンストと結ばれることに。 どうやら今回の離婚再婚は、王家の陰謀があるよう。 「悪女に、遠慮はいらない」 そう決意した彼女は、華やかな舞踏会で王に真っ向から言い放つ。 「わたくし、人の家庭を壊しておきながら悪びれない方に、下げる頭は持っていませんの。  王族であられる前に、人におなりくださいませ。……失礼」 愛も、誇りも奪われたなら── 今度はこの手で、すべてを取り戻すだけ。 裏切りに燃える、痛快リベンジ・ロマンス! ⚠️本作は AI の生成した文章を一部に使っています。タイトル変えました。コメディーです。主人公は悪女です。

さようなら婚約者

あんど もあ
ファンタジー
アンジュは、五年間虐げられた婚約者から婚約破棄を告げられる。翌日、カバン一つを持って五年住んだ婚約者の家を去るアンジュ。一方、婚約者は…。

国外追放ですか? 承りました。では、すぐに国外にテレポートします。

樋口紗夕
恋愛
公爵令嬢ヘレーネは王立魔法学園の卒業パーティーで第三王子ジークベルトから婚約破棄を宣言される。 ジークベルトの真実の愛の相手、男爵令嬢ルーシアへの嫌がらせが原因だ。 国外追放を言い渡したジークベルトに、ヘレーネは眉一つ動かさずに答えた。 「国外追放ですか? 承りました。では、すぐに国外にテレポートします」

悪役断罪?そもそも何かしましたか?

SHIN
恋愛
明日から王城に最終王妃教育のために登城する、懇談会パーティーに参加中の私の目の前では多人数の男性に囲まれてちやほやされている少女がいた。 男性はたしか婚約者がいたり妻がいたりするのだけど、良いのかしら。 あら、あそこに居ますのは第二王子では、ないですか。 えっ、婚約破棄?別に構いませんが、怒られますよ。 勘違い王子と企み少女に巻き込まれたある少女の話し。

処理中です...