美しく優秀な次女がいるのなら、私は必要ありませんよね? 〜家を捨てた私は本当の姿に戻り、追いかけてきた皇子と街で暮らす〜

夜野ヒカリ

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続編

かくれんぼ(ソフィア視点)

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(ソフィア視点)



 ふふっ、どこに隠れようかしら?
 カーテンの後ろ?机の下?ベッドの中?

 私のお家には隠れるところが多いから迷っちゃう。
 でも、今回は絶対に見つからない場所がいいわ。お父様ったら手加減をしてくれないんだもの。いつもいつも始まってすぐに見つかってしまうの。私だけじゃなくてエルもよ?

 そう、今日はみんなとかくれんぼをしているの!
 隠れていいのはお家の中だけで、お庭はダメ。あと、お父様とお母様がお仕事をするお部屋もダメ。
 それでも、隠れる場所はたくさんあるから、本当に迷っちゃうわ。

 ちなみに、お母様は私とエリオットが隠れられたのを確認したらお父様に報せに行ってくれるの。その後はお父様と一緒にお家を回るけれど、私達の居場所を教えたりはしないわ。

「ソフィー、ここなんてどう?」

「そこは先週すぐに見つかってしまったじゃない」

「そうだったね……」

 一緒に隠れる場所を探していたエルが廊下のタペストリーをめくりながら『どう?』って聞いてくる。
 う~ん、でも、お父様も同じ場所はよく探さないかも?
 あっ、それでもダメ! タペストリーの後ろに隠れたら、タペストリーが膨らんでしまうもの。

「エル、タペストリーは私達が隠れたら膨らんでしまうわ」

「うん。だけど、前みたいにはならないよ。この間見つけたんだけど、見てて?」

「あら、エルはそこを見つけたのね」

「?」

 お母様はエルが何を言っているのかわかったみたい。……私だけ分からないなんて、悔しいわ。
 エルは私のお兄様。お兄様とはいっても同い年よ?だから私は『エル』って呼んでいるの。
 私はよく覚えていないけど、去年までは私達は余り仲が良くなかったんですって。エルに理由を聞いても教えてくれないけれど。お父様がお母様を見る時みたいな優しい笑顔で『僕だけの秘密』って言っていたの。……何で私が覚えていないことをエルは覚えているのかしらね……本当に悔しいわ。

 まぁ、それは置いておいて、私とエルはとっても仲良しで毎日一緒に遊んでいるの。お父様とお母様は忙しくてずっとは遊んでいられないけど、エルがいるからちっとも退屈しないわ。
 でも、エルったらとっても心配性で私が走ると危ないって言うのよ?

「ソフィー、いくよ」


 ───ガタンッ


「わぁっ! エル、こんなのいつ見つけたの!?」

「へへっ、この前のかくれんぼの後にどこか良い隠れ場所がないか探してたらたまたま見つけたんだ」

「へー!」

 タペストリーの後ろに入ったエルが目の前にある壁の模様を押したら、そこがへこんだの!
 そうしたら、タペストリーの横の壁が消えてしまったの……壁がドアみたいに開いているわ。

「これはね、何かあった時にこのお屋敷から脱出するためにあるのよ」

「お母様、何かあった時ってなんですか?」

「……私達は責任ある立場なの。だから、怖い人達がやって来てしまうことがあるのよ」

「……怖い人達?」

「ふふっ、エルとソフィーは心配しなくて大丈夫よ。お父様とお母様が守ってあげるわ」

 お母様はそう言って私とエルをぎゅってしてくれた。

「ソフィーには僕もいるからね! 僕はお母様とお父様も守れるようになるんだから」

「わ、私だってみんなを守れるもん!」

「あら、心強いわ。そうだ、エルが押したスイッチは大人が押すには少し低いでしょう?」

 お母様の言葉に頷く。
 エルが押した壁はエルの目の前で、お母様の腰よりも下。

「そうやって、分かりにくいところにスイッチがあるの。……ここ以外にもあるから探してもいいけど、勝手に入ったらダメよ? あと、使用人達にも隠し通路のことは言わないこと」

「はーい」
「……」

「……エルはここに入ったの?」

「……はい」

「……まぁ、まだ教えてなかったし、入っちゃダメとも言ってなかったものね。ただ、お屋敷の外に繋がっているものや、危ない仕掛けがあるものもあるからこれからは勝手に入ってはダメよ? 隠し通路を見つけたらお父様かお母様に報せて。一緒に探検しましょう?」

「「探検!?」」

「えぇ」

「エル! 隠し通路、一緒に探そうね!」

「うん!」

「それで、ここに隠れるの?」

「はい、僕達が入ったらお父様を呼んできてくれますか?」

「わかったわ。……ここは奥に行っても大丈夫だから、エルはソフィーを案内してあげたら?」

「わかりました。ソフィー、行こう!」





* * *





「エル……真っ暗だよ?」

 お母様は私達が壁の中に入ったのを確認して、お父様のところに行っちゃった。

 私達が入ってすぐに壁は閉まってしまって、そうすると何も見えないくらい真っ暗になってしまったの。怖くなってしまって、繋いでいたエルの手を握るとぎゅって握り返してくれた。

「大丈夫だよ、ソフィー。明かりの代わりを持ってきたから……ほら」

「わぁ……これなあに?」

「発光石っていうんだって。今日はここに隠れようと思ってたから、ロバートに『僕達が使ってもいい明かりはない?』って聞いたら貸してくれたんだ」

『ほら』って言いながらエルが私に向けた手のひらの上には光っている何かがあった。
 
「結構明るいでしょ?」

「本当! 石が光ってる……不思議ね!」

「太陽の光当てておくと、短時間だけど明るく光るんだって。あんまり出てこないから珍しいんだって」

「へー」

 太陽の光を当てておくと光るんだ……
 子供だけで火は危ないからロバートはこれを貸してくれたのかな?

「ほら、ソフィー!探検に行こう!」

「うん!」


 暗い通路を発光石で照らしながら手を繋いで進んでいく。さっきまで怖かったのが嘘みたいにワクワクする。
 ……通路は石で造られていて、所々曲がるけれど基本的には真っ直ぐみたい。

「そうだ、エルはここを通ったことがあるんでしょ?」

「うん」

「……どうしてその時に誘ってくれなかったの?」

「それは……その時お父様もお母様も忙しそうだったから聞けなかったし、掃除されてる感じがなかったから、公爵家の秘密かもって思ったんだ。実際、さっきお母様も言ってたでしょ? 」
 
「私もダメだったの?」

 そうだったら悲しいわ。
 
「そんな訳ないじゃん! だって、安全か分からないんだよ? 真っ暗だったし。ソフィーを連れてくなら今日みたいにしっかり準備したかったんだ……」

「本当?」

「もちろん!」

 そう言うエルの笑顔を、発光石の柔らかい光が照らしている。
 ……やっぱりエルは優しいな。

「ふふっ、エル大好き!」

「っ、僕も大好きだよ」





* * *





「結構歩いたわね」

 十分くらい歩いたと思う。
  

「それにしても、どこに繋がっているの?」

「どこだと思う?」

「う~ん、あの廊下から……あっ、玄関の方よね!?」

 入り口の場所と歩いてきた方向、時間から予想した。

「もう出口だよ……さ、開けてみて!」

「わかった!」

 行き止まりの壁の前で、エルが私の膝の辺りの高さにある石を指差していた。

 
 ───ガタンッ


「やった! 玄関だ。私の予想通りね!」

「さすがソフィーだね! さ、お父様が来る前に通路に戻ろう」

 そうだ、今はかくれんぼ中だった!
 それでも、これは新記録じゃないかしら? お父様はいつも十分以内には私を見つけていたから。
 ……ちなみに、私とエルが別々に隠れると私の方が先に見つかってしまうことが多いの。

 今日こそはお父様がねをあげるまで隠れきってやるんだから!
 そう思って、急いで通路に戻る。

「──見つけたぞ!」

「ひゃあっ!」

「っお父様、ソフィーを驚かせないでください!」

 通路の扉が閉まって安心していたら、通路の暗闇の中からお父様がぬっと出てきた。

 エルは驚いてしゃがみこんでしまった私とお父様の間に入って、私を庇ってくれた。

「お、お父様、なんで分かったんですか?」

 絶対に見つからないと思ったのに……

「ははっ、どうしてだと思う?」

「むぅ~……お父様キライ!」

「なっ、ソフィー………」

「あらあら……ソフィー、お父様に勝つのは難しいわよ? だって、範囲の決まっていない……国のどこに隠れたのか分からない私を見つけたこともあるんだから」

 えっ……国を使ってかくれんぼをしたの?
 このお屋敷よりもずっとずっと広いわよね?

 私に嫌いと言われてお母様に慰められているお父様はそんな風に見えない。

「お父様、本当?」

「あ、あぁ……ほとんどは運だったが…いや、あれは運命だったな」

「ふふっ」

 私が話しかけたから少し元気になったみたい。

 ……お父様がどんなに見つけるのが上手でも、いつかは勝ってやるんだから!








~~~~~~~~


 読んでくださりありがとうございます(*^^*)

 注)エルとソフィーの間にあるのはあくまで、兄妹愛です。それ以上のものは(たぶん)ないと思われます。……思いたいです。


 ちなみに、ウィルも意地悪ですぐに見つけていた訳じゃありません!
 お仕事で子供達とくっついていられる時間が短いから、子供達と少しでも長く過ごすために離れている時間を短くしようとしちゃってるんです!
 ……大変に子狂いで、子供達(主にソフィー)からよく怒られてます( ̄▽ ̄;)


 新作の方も先日Hotランキング1位をいただきました!
 読んでくださった皆様、ありがとうございます(*^^*)





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