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続編

初めてのお茶会①(エリオット視点)

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 今日は、僕やソフィーと同年代の子供がいる貴族達を招いてお茶会をする。
 性別、爵位に関係なく参加可能で、今回はカトル公爵家の皇都邸で催されるこのお茶会は毎年開かれていて、参加条件に該当する令息令嬢がいる伯爵以上の上級貴族が持ち回りで主催者を務めている。参加条件は10歳から12歳の令息令嬢とその保護者というものである。

「エル、緊張するね」

「そう? 僕は楽しみだよ」

「えっ、シリウス兄様やフィオナ以外の子達に会うのは初めてなのに?」

「ソフィーだって交友関係を広げたいでしょ?」

「そうなんだけど……失敗したらどうしよう」

「そんなに心配しなくても大丈夫だと思うけど」

 ソフィーは身内以外の人達に会うのが初めてだから緊張しているらしいけど、カトル公爵家ウチは今回参加する貴族家の中では一番格が上だから、普通にしていれば問題はない。もちろん、無礼な態度はダメだけど。
 それに、僕達は他の貴族家の子達よりも早くから礼儀作法の勉強が始まったらし、先生達からもお墨付きをもらっているから、そういった意味でも見劣りするなんてことはまずないと思う。

「お父様だって、僕達が年齢に対して勉強も進みすぎてるし、礼儀作法についても子供らしさがないから他の子を萎縮させないかが心配って言ってたくらいなんだから、いつも通りにいこう。僕だっているし、ソフィーは1人じゃないでしょ?」

「エル~~」

 さらに言えば、このお茶会の目的は将来同じ時代を過ごし、共にアスラート帝国を治めることになる貴族達の顔合わせであり、余程のことでなければ咎められることはない。余程のことでなければ。
 貴族の子は入学が義務とされている学園でも同時期に通うことになる者達であることから、事前に挨拶を済ませておこうという意味合いもあるみたいだ。

 子供のお茶会への参加は10歳からと決まっているし、学園に入学するまでは参加できるお茶会も少ないから、ほとんどの者は社交の経験が全くなく、あっても浅い。……そう考えると不安だな。
 社交に不慣れな子供が集まるって荒れそうだけど……。……みんな貴族としての教育は受けているし、大丈夫か。

 
「──エル、ソフィー、準備はできた?」

「はい」
「は、はい!」

「あら? ソフィーは緊張しているの?」

 僕達の様子を見にきたお母様の言葉に、ソフィーはコクリと頷いている。

「お母様の時はどのような感じだったのですか?」

「私の時?そうね……。……実は小さい頃は身体が弱かったの。だから、お茶会に参加したことがないの……参考にならなくてごめんなさいね……」

 困ったように笑うお母様。……お母様は本当に身体が弱かったのだろうか?
 お母様は昔の話をする時、今みたいに困ったような笑いを浮かべることがある。……僕達には話してくれないけど、カトル公爵家の先代当主……僕達のお祖父様に関係しているんじゃないかと考えている。
 そう考えた理由は、先代公爵夫妻の記録が消されているから。記録だけじゃなくて肖像画なんかも残っていない。もしかしたら公式じゃない記録は残っているかもしれないけど、公爵家の人間で公式に記録がないなんてことがあるはずがないし、その家の人間である僕やソフィーが知らないというのもおかしな話だ。
 僕達に伝えないところを見るに、大変なことがあったんだろうな……。……いつか教えてほしい。お母様やお父様を助けられるくらい大きくなったらでもいいから。

「──では、今日はお母様も一緒に楽しみましょう? 参加者は子供とその保護者だけですからお母様が普段参加されているお茶会や夜会程は気を張らなくてよいでしょうし、折角の初めて親子で一緒に参加する社交なのですから、楽しまなくては!」

「ソフィーの言う通りです。お母様が子供の頃参加できなかった分、一緒に楽しみましょう」

 ソフィーもお母様の様子に気が付いていたみたい。
 そんな僕達の言葉にお母様は驚いたような顔をした後で破顔した。

「そうね。二人は初めてのお茶会、私もエルとソフィーと一緒に参加するのは初めてだものね。ふふっ、さっきまでよりも楽しみになってきたわ」

「私もお母様に会って緊張が和らぎました」

「あら、そう言ってもらえて嬉しいわ。……準備もできているみたいだし、早速行きましょう。お客様も会場に入り始めているみたいだから」

「! もういらっしゃっているのですか?」

「えぇ。こういう社交の場だと男爵位、子爵位のお家から会場に入ると習ったでしょう? その方々は後に会場入りする上級貴族に遅れることがないように余裕をもっていらっしゃるの。早すぎて主催者の負担にならないように見計らってね」

「なるほど……」

 会場入りは爵位が高い程後になると習ったけど、僕達は公爵家だから、下級貴族の人達がどのような気遣いをしているのかなどは知らなかった。

「私達は主催者だから、開始の三十分程前になったら会場に入ってお客様にご挨拶を始めるのですよね?」

「そうよ。二人ともよく勉強してるわね」

「今日はその成果を発揮して見せます!」

 ソフィーはさっきまでの緊張はどこへやら、初めてのお茶会への期待を膨らませている。……どんな子達がいるのか……気の合う友人ができるといいな。










~~~~~~~~

 短いですが、夜野が力尽きましたので今回はこの辺で失礼します_(..)_
 最近、私生活が忙しくなってきてしまったため、しばらくは短い話が多くなってしまうかもしれませんが、ご理解いただければと思いますm(。_。)m



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