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第四章 プレゼントですよ先輩!
しあわせでしあわせで
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「ふぅ……これで皆さんに伝わった筈です! 私の先輩への熱い想いが!」
麗紗は千歳の薬を飲んで傷を治しながら、自分の熱弁を誇りに思う。
全日本国民の心を、響かせる事ができたという手応えを麗紗は感じていた。
そしてそれは恐怖を与えたという意味では正しかった。
「うふふ……琥珀先輩と一緒に道を歩いていていつも思っていたんですよね……皆さんの覇気と生気の無い顔……私はあんな顔をしていてほしくない……私みたいに愛する人が居てほしいって……私は琥珀先輩のお蔭ですべてが報われて幸せになれた……だから皆さんにもそれを味わってほしいなあ……心が通いあっていて頭から爪の先まで同じになっていてそばに居ない時が無くてずっとお互い見つめ合っていて細胞単位で混ざり合っていて絶対に離すことがなくて誰にも引き裂けなくて誰からも祝福されてお互いの愛がふくらみ続けていてもはや同じ存在でしあわせでしあわせでしあわせでしあわせでしあわせでしあわせでしあわせでしあわせでしあわせでしあわせでしあわせでしあわせでしあわせでしあわせでしあわせでしあわせでしあわせでしあわせでしあわせでしあわせでしあわせで――きゃーっ! なんてすてきな世の中なの!? でも誰にも私と琥珀先輩には勝てないんですけどね! あはははははははっ!!!」
麗紗は理想を突き詰めたようなあまりにも素晴らしい世界に弾けんばかりの恍惚を覚える。
そんな彼女の居るNNNのスタジオに、大勢の足音が迫ってきた。
「ん? 何でしょうか?」
麗紗は何事かと頭に疑問符を浮かべつつも腕に付いた血を拭き取る。
彼女自身がその原因であるとは少しも気付いていない。
スタジオの入り口のドアが乱暴に開かれ、機動隊出動服に身を包んだ男達が押し入った。
突然の訪問者に少し驚きつつも麗紗は指導者の余裕をもって男達に優しく声を掛けた。
「おや、あなた達は一体何の集団ですか? 私に何か御用でしょうか?」
「動くな! 両手を挙げろ!」
男達は隊列を整えてそれぞれ能力を放つ構えを取る。
言葉を流された麗紗は首を傾げて言った。
「……? 質問に答えて下さいよ。急に動くなと言われても、意味が分かりません」
「……見れば分かるだろう! 私達は特色機動隊だ!」
「へぇ~! あなた達がそうなんですか!? 私初めて見ました! でもどうしてここに!? ここは至って平和ですよ?」
「……鴻池隊長、容疑者は自分が何をやっているのか分かっていない模様です」
「こいつはたまったもんじゃねえな……」
麗紗との価値観の違いに、声を張り上げていた隊長……鴻池雷電は天を仰いだ。
だがそんな事をしている場合ではない。
相手に全く罪の意識がなくとも、犯罪者である事は代わりないのだ。
それも、特色者の。
「……ひとまず連行する。警戒を緩めずに確保だ」
「「「「「はっ!」」」」」
鴻池の指示に男達が隊形を変え、麗紗を取り囲む。
そしてじりじりと距離を詰める。
麗紗は、男達の対応に柔らかい表情を一変させ無表情となって語気を鋭く研ぎ澄ます。
「……何の真似ですか? まさか、国家に仕える身分でありながら反逆しようと言うのですか?」
「……国家に反逆しているのはお前だ! 確保ッ!!!」
その合図を受けて男達は刹那、一斉に麗紗に飛び掛かった。
だが、誰一人として麗紗を抑えられた者は居なかった。
桜が舞い、何もかもが掻き乱される。
「「「「「ぐわああああああああああああ――!!!」」」」」
NNNのスタジオから、侵入者が全て排除される。
男達は外の市街へと投げ出されてしまう。
「くっ……一体何が起こったんだ……!」
流石は隊長と言うべきか。
唯一、鴻池だけが隊の中で意識を保っていた。
「総員! 位置は何処だ! 返事をしろーッ!」
声を張り上げるが返事はない。
鴻池は市民に避難を呼び掛けながら全力で駆け隊員を探す。
「おい! 起きれるか! ……駄目か! クソッ!」
しばらくして隊員の一人を発見したが、完全に意識を失っていた。
他の隊員も同じ状態だった。
「これは……まさか……そんな筈は……!」
鴻池は、今の状況が目の前にありながら信じられなかった。
72名もの特色機動隊が、一瞬にして壊滅させられてしまったという状況が。
残るは鴻池一人だけ。
絶望的な状況だった。
「俺一人でやるしかないな……! 特色機動隊隊長、この鴻池雷電が今日まで溜めてきた力、見せてやるぜ……!」
それでも鴻池は立ち向かう。
32歳という若さで国を背負って。
電光石火の速さでNNNのスタジオに駆け付け、再び鴻池は麗紗と対峙する。
「……まだしぶといのが居ましたか」
「本性を現したな。期待溢れる政策はどうした?」
無機物を見るような目を鴻池に向ける麗紗に、彼は軽快に皮肉を言った。
麗紗はそれをものともせず平然と答える。
「私の政策に溢れているのは期待だけじゃありません。愛にも溢れていますよ? というかむしろ愛の方が主役ですね!」
「へっ、ならその政策は俺には何の関係も無いな。なんせ俺はもう美人過ぎてたまらん奥さんとたっぷり愛を築いてっからよ!」
「プッ……それが何ですか? しょせん私と先輩の愛には敵わない代物なんでしょう?」
「……愛ってのは、優劣があるもんじゃない。人それぞれに形があるんだよ。それが分かってないお前じゃ、先輩との愛もたかが知れてるな」
「……知ったような口を利くなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」
「残念だけどな、人生経験は俺の方が上だぜ!」
麗紗は見た者の寿命が縮まるような形相で鴻池に襲い掛かった。
鴻池は、それを真っ向から見据える。
「“恋色紗織”ッ!」
「“永遠天雷”!」
麗紗は千歳の薬を飲んで傷を治しながら、自分の熱弁を誇りに思う。
全日本国民の心を、響かせる事ができたという手応えを麗紗は感じていた。
そしてそれは恐怖を与えたという意味では正しかった。
「うふふ……琥珀先輩と一緒に道を歩いていていつも思っていたんですよね……皆さんの覇気と生気の無い顔……私はあんな顔をしていてほしくない……私みたいに愛する人が居てほしいって……私は琥珀先輩のお蔭ですべてが報われて幸せになれた……だから皆さんにもそれを味わってほしいなあ……心が通いあっていて頭から爪の先まで同じになっていてそばに居ない時が無くてずっとお互い見つめ合っていて細胞単位で混ざり合っていて絶対に離すことがなくて誰にも引き裂けなくて誰からも祝福されてお互いの愛がふくらみ続けていてもはや同じ存在でしあわせでしあわせでしあわせでしあわせでしあわせでしあわせでしあわせでしあわせでしあわせでしあわせでしあわせでしあわせでしあわせでしあわせでしあわせでしあわせでしあわせでしあわせでしあわせでしあわせでしあわせで――きゃーっ! なんてすてきな世の中なの!? でも誰にも私と琥珀先輩には勝てないんですけどね! あはははははははっ!!!」
麗紗は理想を突き詰めたようなあまりにも素晴らしい世界に弾けんばかりの恍惚を覚える。
そんな彼女の居るNNNのスタジオに、大勢の足音が迫ってきた。
「ん? 何でしょうか?」
麗紗は何事かと頭に疑問符を浮かべつつも腕に付いた血を拭き取る。
彼女自身がその原因であるとは少しも気付いていない。
スタジオの入り口のドアが乱暴に開かれ、機動隊出動服に身を包んだ男達が押し入った。
突然の訪問者に少し驚きつつも麗紗は指導者の余裕をもって男達に優しく声を掛けた。
「おや、あなた達は一体何の集団ですか? 私に何か御用でしょうか?」
「動くな! 両手を挙げろ!」
男達は隊列を整えてそれぞれ能力を放つ構えを取る。
言葉を流された麗紗は首を傾げて言った。
「……? 質問に答えて下さいよ。急に動くなと言われても、意味が分かりません」
「……見れば分かるだろう! 私達は特色機動隊だ!」
「へぇ~! あなた達がそうなんですか!? 私初めて見ました! でもどうしてここに!? ここは至って平和ですよ?」
「……鴻池隊長、容疑者は自分が何をやっているのか分かっていない模様です」
「こいつはたまったもんじゃねえな……」
麗紗との価値観の違いに、声を張り上げていた隊長……鴻池雷電は天を仰いだ。
だがそんな事をしている場合ではない。
相手に全く罪の意識がなくとも、犯罪者である事は代わりないのだ。
それも、特色者の。
「……ひとまず連行する。警戒を緩めずに確保だ」
「「「「「はっ!」」」」」
鴻池の指示に男達が隊形を変え、麗紗を取り囲む。
そしてじりじりと距離を詰める。
麗紗は、男達の対応に柔らかい表情を一変させ無表情となって語気を鋭く研ぎ澄ます。
「……何の真似ですか? まさか、国家に仕える身分でありながら反逆しようと言うのですか?」
「……国家に反逆しているのはお前だ! 確保ッ!!!」
その合図を受けて男達は刹那、一斉に麗紗に飛び掛かった。
だが、誰一人として麗紗を抑えられた者は居なかった。
桜が舞い、何もかもが掻き乱される。
「「「「「ぐわああああああああああああ――!!!」」」」」
NNNのスタジオから、侵入者が全て排除される。
男達は外の市街へと投げ出されてしまう。
「くっ……一体何が起こったんだ……!」
流石は隊長と言うべきか。
唯一、鴻池だけが隊の中で意識を保っていた。
「総員! 位置は何処だ! 返事をしろーッ!」
声を張り上げるが返事はない。
鴻池は市民に避難を呼び掛けながら全力で駆け隊員を探す。
「おい! 起きれるか! ……駄目か! クソッ!」
しばらくして隊員の一人を発見したが、完全に意識を失っていた。
他の隊員も同じ状態だった。
「これは……まさか……そんな筈は……!」
鴻池は、今の状況が目の前にありながら信じられなかった。
72名もの特色機動隊が、一瞬にして壊滅させられてしまったという状況が。
残るは鴻池一人だけ。
絶望的な状況だった。
「俺一人でやるしかないな……! 特色機動隊隊長、この鴻池雷電が今日まで溜めてきた力、見せてやるぜ……!」
それでも鴻池は立ち向かう。
32歳という若さで国を背負って。
電光石火の速さでNNNのスタジオに駆け付け、再び鴻池は麗紗と対峙する。
「……まだしぶといのが居ましたか」
「本性を現したな。期待溢れる政策はどうした?」
無機物を見るような目を鴻池に向ける麗紗に、彼は軽快に皮肉を言った。
麗紗はそれをものともせず平然と答える。
「私の政策に溢れているのは期待だけじゃありません。愛にも溢れていますよ? というかむしろ愛の方が主役ですね!」
「へっ、ならその政策は俺には何の関係も無いな。なんせ俺はもう美人過ぎてたまらん奥さんとたっぷり愛を築いてっからよ!」
「プッ……それが何ですか? しょせん私と先輩の愛には敵わない代物なんでしょう?」
「……愛ってのは、優劣があるもんじゃない。人それぞれに形があるんだよ。それが分かってないお前じゃ、先輩との愛もたかが知れてるな」
「……知ったような口を利くなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」
「残念だけどな、人生経験は俺の方が上だぜ!」
麗紗は見た者の寿命が縮まるような形相で鴻池に襲い掛かった。
鴻池は、それを真っ向から見据える。
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「“永遠天雷”!」
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