麗紗ちゃんは最狂メンヘラ

吉野かぼす

文字の大きさ
111 / 211
第四章 プレゼントですよ先輩!

はちみつじまん

しおりを挟む
「で、敵は?」
「こ、こいつよ!」

「ん? どうしたのこねこちゃん?」

 真乃は麗紗が来た事に驚きつつも、慌てて優紀を指差した。

 その次の瞬間、桃色の糸が優紀達を薙ぎ払う。

「なん……で……来てくれたの……?」
「そんなの友達だからに決まってるじゃない」

「麗紗……! あんた……!」

 真乃は麗紗の思わぬ答えに心が揺さぶられた。
 てっきり真乃は、麗紗に人の心が無いのではないかと思っていた。

 もっとも、その考えは間違っていないが。
 麗紗は感動する真乃に、クスリと笑って言った。

「それに、襲撃者は倒さないと。うちの用心棒はやられちゃったし……」
「ふがいない用心棒でごめんなさい……」

「別にいいわよ。用心棒以外にも色々とやってほしい事があるし。……そもそも私に、用心棒なんて必要ないもの」

 申し訳なさそうに謝る真乃に、麗紗は軽くそう言い放つ。

 とんでもなく不敵な宣言だったが――。

 麗紗ならば、十分言う資格があった。

「私と子猫ちゃんのふれあいを邪魔するなぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」
「……はぁ? その子猫ちゃんが誰だかは知りませんが私はここ四日先輩と全く会えていないんですよ!!! 確かに一瞬でも愛する人と離れる事はとても辛いです! すごく辛いです! ですが! ですがですがですがですがですがですがですがですがですがですがですが私はそれよりも遥かに長い時間先輩に会えていないんです!!! 今私は先輩ニウムが不足して禁断症状を起こしているんですよ!!! 先輩の声はいつでも聴けるように機械を仕込んでありますがそれじゃ全然追い付かないんです!!! 需要が供給を大幅に上回り過ぎているんですよ!!! そう! 足りないんです! 全然足りていないんですよ先輩ニウ厶が!!! 足りない足りない足りない足りない足りない足りない足りない足りない足りない足りない足りない足りない足りない足りない足りない足りない足りない足りない足りない足りない足りない足りない足りない足りない足りない足りない足りないああああああああああああっ!!! 先輩ニウムが欲しい! 今すぐ先輩を抱きしめて五感全てで味わって先輩ニウムを補給したい! ああもう私狂ってしまいそうぅぅぅぅ! 先輩が居ない日々がどれだけ苦痛に満ちている事か! まるで何もない部屋に90年ぐらい閉じ込められてる気分ですぅ! 先輩が居ないとすべてが色褪せて見えるんですぅ! ああもう嫌だもう嫌だもう嫌だもう嫌だもう嫌だもう嫌だもう嫌だもう嫌だもう嫌だもう嫌だもう嫌だもう嫌だもう嫌だもう嫌だもう嫌だもう嫌だもう嫌だもう嫌だもう嫌だもう嫌だもう嫌だもう嫌だもう嫌だもう嫌だもう嫌だ……ああ禁断症状でしょうか目の前のあなたが先輩に見えてきましたよ……ってあなたは先輩のお友達の方ではないですか! これは失礼致しました。あなたを敵だと勘違いするとは……私ったらなんて早とちりを……これで許して下さい許して下さい許して下さい許して下さい許して下さい許して下さい許して下さい許して下さい許して下さい許して下さい許して下さい許して下さい許して下さい許して下さい許して下さい――」

「うわあ……」
「わ、私の双子ちゃん達が……! 嘘……!」

 麗紗は優紀が繰り出した双子達を蹂躙しながら闇を吐き出し、それを出し切るとようやく襲撃者の正体が優紀である事に気付いた。

 自らの行いを懺悔し、自らの手に無数の穴を空けていく麗紗。

 優紀は双子達があっさりと倒された事に驚愕する。

「それならこいつで子猫ちゃんを守る!」

 優紀は先程作ったつみれの双子を麗紗に差し向ける。

 つみれの双子は黄色のハリセンを出現させ、麗紗に振り下ろした。

 黄色の斬撃が、麗紗を断ち切ろうとする。
 しかし、その斬撃は麗紗の体よりも柔らかかった。

 斬撃は麗紗の体に当たると金切り声を上げ空へと逸れていった。

「これも効かないなら……!」

 優紀は水色の光を手に纏いながら麗紗に近付き。

「まずい! 避けて麗紗!」

「“増殖ジェミニ”」
「えっ……?」

「あっ……」

 その手で触れた。
 真乃が声を上げたが、その時にはもう遅かった。

 水色の光が、麗紗の双子を出現させる。

「これなら勝てるでしょ! いっけー! 子猫ちゃんを守れ!!!」
「な、何で私そっくりの……!」

「麗紗あぶな――」
「きゃああああああああああああああああああああ!!!」

 刹那。
 麗紗の体が宙へと打ち上げられる。

 藍色の、糸によって。

「“藍色紗織あいいろさおり”」
「そんな……」

 真乃は目の前に広がる光景が信じられなかった。
 麗紗のコピーが存在しているこの光景が。

「……ああ本当に私の顔そっくりね。なんて醜いのかしら」
「“藍色紗織”」

 麗紗の桃色の糸と、双子の藍色の糸が鍔迫り合う。
 周囲に衝撃が走り環境破壊が勃発する。

 どちらも、押される気配はない。

「……何なのよ……あんたの能力は一体何なのよぉっ!!!」
「なになに? おしえてほしいのこねこちゃん?」

 真乃は優紀にそう叫ばずにはいられなかった。
 そんな彼女に、優紀は優しく頭を撫でながら言う。

「わたしの“ぞうしょくじぇみに”はふれたものの“ふたご”をつくりだすのうりょくだよ~。ふたごはみためはそのふれたものにそっくりでもなかみはちょっとちがってて、たとえば……とくしょくしゃのふたごをつくると、ちがうのうりょくになる、みたいなかんじでね! でもちからとかのうりょくれべるはおんなじだよ! わたしののうりょくれべるは9くらいかな! わかった? こねこちゃん?」

「何よそれ……反則じゃない……!」

 真乃は優紀に頭を撫でられながらそう憤った。



しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

私がガチなのは内緒である

ありきた
青春
愛の強さなら誰にも負けない桜野真菜と、明るく陽気な此木萌恵。寝食を共にする幼なじみの2人による、日常系百合ラブコメです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

私と先輩のキス日和

壽倉雅
恋愛
出版社で小説担当の編集者をしている山辺梢は、恋愛小説家・三田村理絵の担当を新たにすることになった。公に顔出しをしていないため理絵の顔を知らない梢は、マンション兼事務所となっている理絵のもとを訪れるが、理絵を見た途端に梢は唖然とする。理絵の正体は、10年前に梢のファーストキスの相手であった高校の先輩・村田笑理だったのだ。笑理との10年ぶりの再会により、二人の関係は濃密なものになっていく。

学園の美人三姉妹に告白して断られたけど、わたしが義妹になったら溺愛してくるようになった

白藍まこと
恋愛
 主人公の花野明莉は、学園のアイドル 月森三姉妹を崇拝していた。  クールな長女の月森千夜、おっとり系な二女の月森日和、ポジティブ三女の月森華凛。  明莉は遠くからその姿を見守ることが出来れば満足だった。  しかし、その情熱を恋愛感情と捉えられたクラスメイトによって、明莉は月森三姉妹に告白を強いられてしまう。結果フラれて、クラスの居場所すらも失うことに。  そんな絶望に拍車をかけるように、親の再婚により明莉は月森三姉妹と一つ屋根の下で暮らす事になってしまう。義妹としてスタートした新生活は最悪な展開になると思われたが、徐々に明莉は三姉妹との距離を縮めていく。  三姉妹に溺愛されていく共同生活が始まろうとしていた。 ※他サイトでも掲載中です。

〈社会人百合〉アキとハル

みなはらつかさ
恋愛
 女の子拾いました――。  ある朝起きたら、隣にネイキッドな女の子が寝ていた!?  主人公・紅(くれない)アキは、どういったことかと問いただすと、酔っ払った勢いで、彼女・葵(あおい)ハルと一夜をともにしたらしい。  しかも、ハルは失踪中の大企業令嬢で……? 絵:Novel AI

ヤンデレにデレてみた

果桃しろくろ
恋愛
母が、ヤンデレな義父と再婚した。 もれなく、ヤンデレな義弟がついてきた。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

処理中です...