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誰にも邪魔はさせないから
天罰
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「そろそろ暗くなってきたし帰ろうかしら」
「分かったわ。気を付けて帰ってね」
真乃はそう言って椅子から立ち上がった。
もう夕方か……意外と時間が経つのが早いなぁ……。
やっぱり麗紗と一緒に居るからだろうね!
「まあ真乃なら大丈夫でしょ。一応大人だし特色者だし」
「一応って何よ一応って。まあいいわ。あんたも早く家に帰って寝るのよ」
「帰る……私、麗紗の家から帰るのかぁ……いやだ……帰りたくない帰りたくない帰りたくないよぉ!」
もうずっと永遠にここにいたい。
麗紗のそばに居ないと……私は……わたしは……。
全部が灰色になってしまう。
「高校生にもなって駄々こねてんじゃないわよ!」
真乃が私にひどい事を言ってくる。
高校生だろうが大学生だろうが社会人だろうが麗紗のそばに居られないのはつらいのにぃ!
「えへへ……そんな風に言っていただけるなんて嬉しいです……」
「……麗紗、あなたは人を見る目がなさすぎるわ」
それに引き換え麗紗は天使だな。
人格が黄金比でできてる。
「付き合ってられないからもう帰るわよ麗紗」
「琥珀先輩をそんな風に言うなぁ!」
「あっ……ごめんなさい。琥珀は麗紗の事が好きすぎるからこうなってるだけなのよね。ごめんね麗紗。私ちょっと考えが足りなかったわ」
「それでいいのよ真乃! それじゃあ琥珀先輩! 真乃を見送りましょう!」
「うん……」
真乃の言葉に麗紗はご満悦みたいだ。
すごくいい笑顔を浮かべている。
ちょっとだけ、沈んだ気持ちが和らいだ。
この笑顔をずっと見つめていられたらいいのに。
「それにしてもこの屋敷ってずいぶん広いわね。掃除とかって使用人がやってるの?」
「そうよ。氷を出せる能力の使用人が氷を使って広い範囲を上手く掃除をしているのよ」
「へ~。便利ねえ。一家に一人欲しいわねその使用人」
「あいつ氷でそんなことを……」
器用だな凍牙。どうりで能力の扱いが上手いわけだ……。
そこは関係ないかもしれないけど。
氷でどうやって掃除をしているんだろう?
ゴミとかホコリとかを氷にくっつけてるのかな?
今度会ったら吐かせてみよう。
その時にはもう忘れてるかもしれないけどね。
「他にも使用人は居るの?」
「居るわよ。色々薬とか機械とか便利なものを作ってくれる使用人と、あと……」
麗紗が説明しようとしたら、ちょうど私達の目の前にふらっと耕一郎が現れた。
「あっ! 噂をすればね! この人が屋敷の庭園とかの世話をしてる……」
「……なんでアンタがここにいるのよ!!! “knightjump”!!!」
「どわっ!?」
真乃が足に水色のバネを具現化させて跳び、耕一郎に踵落としを決めた。
え……? 何で……?
麗紗もぽかんとした顔でこの光景を見ている。かわいい。
「ここで会ったが百年目よ! ぶっ殺してあげるッ!」
「ぎゃあああああああああああああっ!!!」
まるでスーパーボールように廊下を跳ね回り、耕一郎を翻弄する真乃。
なんか前に戦った時よりも速くなってる気がする。
強くなったのか真乃……。
「ぐっ……どうなってやがる……」
「あははははは!!! 高校の時はよくも幼稚園児扱いしてくれたわね!!! ざまあみなさい!!! これが天罰よ!!!」
「うっ!」
真乃は床に転がる耕一郎を踏み付けて高笑いした。
高校の時……? 昔二人の間に何かあったのかな……。
「高校の時……? 何の事だよ……ていうか誰だお前……」
「……はぁ?」
でも耕一郎は心当たりがなさそうな顔をしている。
そんな耕一郎に真乃はドスの利いた声を出した。
「アンタ……まさか……本当に私の事忘れたの……? そんな訳ないわよね……?」
「すまん、俺お前の顔に見覚えねえんだ」
「……ふざけんじゃないわよ! どんだけ人の事馬鹿にしたら気が済むのよッ!」
「ぎゃあっ!」
うわあ……真乃がキレた……。
でも耕一郎の事だ……何かひどい事言っても、3秒後にはもう忘れていたとしてもおかしくない。
なんかやらかしたんだろうな……多分。
「まあいいわ……どうせそんな事だろうと思ってたし……今日はこのくらいで勘弁しておいてあげるわ! また今度天罰を食らわせてあげる! あはははは!!!」
真乃はいきいきとスキップをしながら屋敷を出て行った。
耕一郎が、ボロボロの体でゆっくりと起き上がる。
「ぐうっ……」
「ねえ耕一郎……あなた一体真乃に何したのよ……」
「俺にも分かんねえよ……あいつの事知らねえし……」
それが分からないから真乃は怒ってるんじゃ……。
私はなんとなくそう思った。
「分かったわ。気を付けて帰ってね」
真乃はそう言って椅子から立ち上がった。
もう夕方か……意外と時間が経つのが早いなぁ……。
やっぱり麗紗と一緒に居るからだろうね!
「まあ真乃なら大丈夫でしょ。一応大人だし特色者だし」
「一応って何よ一応って。まあいいわ。あんたも早く家に帰って寝るのよ」
「帰る……私、麗紗の家から帰るのかぁ……いやだ……帰りたくない帰りたくない帰りたくないよぉ!」
もうずっと永遠にここにいたい。
麗紗のそばに居ないと……私は……わたしは……。
全部が灰色になってしまう。
「高校生にもなって駄々こねてんじゃないわよ!」
真乃が私にひどい事を言ってくる。
高校生だろうが大学生だろうが社会人だろうが麗紗のそばに居られないのはつらいのにぃ!
「えへへ……そんな風に言っていただけるなんて嬉しいです……」
「……麗紗、あなたは人を見る目がなさすぎるわ」
それに引き換え麗紗は天使だな。
人格が黄金比でできてる。
「付き合ってられないからもう帰るわよ麗紗」
「琥珀先輩をそんな風に言うなぁ!」
「あっ……ごめんなさい。琥珀は麗紗の事が好きすぎるからこうなってるだけなのよね。ごめんね麗紗。私ちょっと考えが足りなかったわ」
「それでいいのよ真乃! それじゃあ琥珀先輩! 真乃を見送りましょう!」
「うん……」
真乃の言葉に麗紗はご満悦みたいだ。
すごくいい笑顔を浮かべている。
ちょっとだけ、沈んだ気持ちが和らいだ。
この笑顔をずっと見つめていられたらいいのに。
「それにしてもこの屋敷ってずいぶん広いわね。掃除とかって使用人がやってるの?」
「そうよ。氷を出せる能力の使用人が氷を使って広い範囲を上手く掃除をしているのよ」
「へ~。便利ねえ。一家に一人欲しいわねその使用人」
「あいつ氷でそんなことを……」
器用だな凍牙。どうりで能力の扱いが上手いわけだ……。
そこは関係ないかもしれないけど。
氷でどうやって掃除をしているんだろう?
ゴミとかホコリとかを氷にくっつけてるのかな?
今度会ったら吐かせてみよう。
その時にはもう忘れてるかもしれないけどね。
「他にも使用人は居るの?」
「居るわよ。色々薬とか機械とか便利なものを作ってくれる使用人と、あと……」
麗紗が説明しようとしたら、ちょうど私達の目の前にふらっと耕一郎が現れた。
「あっ! 噂をすればね! この人が屋敷の庭園とかの世話をしてる……」
「……なんでアンタがここにいるのよ!!! “knightjump”!!!」
「どわっ!?」
真乃が足に水色のバネを具現化させて跳び、耕一郎に踵落としを決めた。
え……? 何で……?
麗紗もぽかんとした顔でこの光景を見ている。かわいい。
「ここで会ったが百年目よ! ぶっ殺してあげるッ!」
「ぎゃあああああああああああああっ!!!」
まるでスーパーボールように廊下を跳ね回り、耕一郎を翻弄する真乃。
なんか前に戦った時よりも速くなってる気がする。
強くなったのか真乃……。
「ぐっ……どうなってやがる……」
「あははははは!!! 高校の時はよくも幼稚園児扱いしてくれたわね!!! ざまあみなさい!!! これが天罰よ!!!」
「うっ!」
真乃は床に転がる耕一郎を踏み付けて高笑いした。
高校の時……? 昔二人の間に何かあったのかな……。
「高校の時……? 何の事だよ……ていうか誰だお前……」
「……はぁ?」
でも耕一郎は心当たりがなさそうな顔をしている。
そんな耕一郎に真乃はドスの利いた声を出した。
「アンタ……まさか……本当に私の事忘れたの……? そんな訳ないわよね……?」
「すまん、俺お前の顔に見覚えねえんだ」
「……ふざけんじゃないわよ! どんだけ人の事馬鹿にしたら気が済むのよッ!」
「ぎゃあっ!」
うわあ……真乃がキレた……。
でも耕一郎の事だ……何かひどい事言っても、3秒後にはもう忘れていたとしてもおかしくない。
なんかやらかしたんだろうな……多分。
「まあいいわ……どうせそんな事だろうと思ってたし……今日はこのくらいで勘弁しておいてあげるわ! また今度天罰を食らわせてあげる! あはははは!!!」
真乃はいきいきとスキップをしながら屋敷を出て行った。
耕一郎が、ボロボロの体でゆっくりと起き上がる。
「ぐうっ……」
「ねえ耕一郎……あなた一体真乃に何したのよ……」
「俺にも分かんねえよ……あいつの事知らねえし……」
それが分からないから真乃は怒ってるんじゃ……。
私はなんとなくそう思った。
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