麗紗ちゃんは最狂メンヘラ

吉野かぼす

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最終章 最狂の愛

一気飛翔

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『ソイアお姉様! ここは連射に切り換えるわ!』
『ええ!』

 姉妹は水色の光弾を高速で乱れ撃ち、光弾の雨を降らせる。
 “混色”したため威力と弾速が比類なく向上していた。

「ちょっと大人しくしてなさい」
「えっ、ちょ……うおわあああああああああああああああ!?」

 それを真乃は耕一郎をお姫様抱っこしながら躱していく。
 バネの超加速が耕一郎の脳を揺さぶった。

「はあっ!」

『ぐっ……! これも避けるの!?』
『能力が向上してる……!? まだ余力があったのね……!』

 そのまま真乃は姉妹に蹴りを叩き込む。
 矢継ぎ早に放たれるそれに姉妹は対応しきれず食らい続けた。

 しかし姉妹を差し切るまでには至らないようだ。

『ここはちょっと賭けに出るしかないわよ、ピセッロ』
『了解よお姉様! 覚悟なら出来てるわ!』

『『“スプラウトブリッツ”!!!』』
「くっ……!」

 姉妹は至近距離で砲口を真乃に向け光弾を発射した。
 もちろんこの至近距離で撃てば姉妹もただでは済まない。

 賭けの一手を察知した真乃は慌てて距離を取って射線から外れた。
 対象が消えた光弾は空を切り壁で爆発した。

「あ、危なかったわ……」
「お……おい……いい加減降ろしてくれよ……」

 額の汗をぬぐいながら真乃はほっと一息をつく。
 耕一郎は加速に付いてこれず完全に酔ってしまっていた。

『これも避けられるなんて……!』
『大丈夫。計算通りよ。私の言う通りにして』

『わ、分かったわお姉様』

 珍しく本来の上下関係に戻った姉妹が、大砲から調整がなされた光弾を放った。

 光弾は、ゆっくりと空中を飛んでいく。

「……? やたら遅いわね……?」
「なんか仕出かす気だな……! “百姓一気”!」

 危険を感じ取った耕一郎は抱きかかえられたまま土袋の防壁を作り出す。

「急にどうしたのよ? あれならあなたでも避け――」
「馬鹿野郎! 伏せろ!」

 耕一郎は真乃の腕の中から脱出し、真乃の体もろとも地面に倒れ込んだ。

 次の瞬間、水色の爆発が土袋の防壁を吹き飛ばした。

「どわっ! やっぱりな! こんなこったろうと思ったぜ!」
「きゃっ!? ……広範囲に爆発させて私のスピードを無効化させようって寸法ね……! 厄介だわ……!」

『さすがお姉様! あいつらを寄せ付けない素晴らしい戦略です!』
『うっぷ……急に褒めないでちょうだい……なんか気持ち悪くなって来たわ……』

『……ふーん。こういうプレイもありね……お姉様って美人で才色兼備で……』
『おええええええええっ!』

 ソイアは誉めそやされて拒否反応が出た。
 新たなの境地のプレイが開拓された瞬間である。歴史的なのかもしれない。

「このまま撃たれ続けたら一方的にやられるだけじゃない……! 飛び込んでも吹き飛ばされるわ……!」

「……なあ、真乃のバネはどこにでも付けられるんだよな?」
「そうだけど何?」

 耕一郎は真剣な表情をしながら聞く。
 そっけない返事に、耕一郎は手をぽんと叩いた。

「なら俺の“百姓一気”とバネを組み合わせるぞ。そうすりゃちょっとくらい吹き飛ばされても何個かは当たるだろ」

「なるほど……! あなたもちょっとは頭が回るじゃない!」
「へっ、俺は相手が面倒臭がることがよく分かんだよ。行くぜ!」

 耕一郎は勝ち誇るようにそう言ってトラクターを数台出した。

「さあ、遊んできなさい。“knightwing”」

 それに真乃が天使の羽が生えたバネを付け、壁に投げつけて次々と跳躍させた。

『『無駄よ。“スプラウトブリッツ”』』

 姉妹は広範囲で爆発する光弾を撃ち出した。
 神速を得たにも関わらずトラクターは無残にもバラバラになってしまう。

 だがそうなったのは一つだけだった。
 姉妹にトラクターが隕石のように降り注ぐ。

『があっ! 発射が間に合わない……!?』
『そんな……ここまでだなんて……!』

 耕一郎と真乃は、息をぴったりと合わせて攻撃を放ち続ける。

「オラオラオラオラ! ぶっこむぜぇぇぇぇぇ!」
「私のバネに、限界なんてないのよ! はああああっ!」

『あぐっ……お姉様、ここで倒されても、私達はずっと一緒、ですよ……』
『当たり前、じゃない……うっ……』

 姉妹は絶え間なく飛び回るトラクターに成すすべもなく倒れた。

「ぜえっ……ぜえっ……倒した……のか……?」
「そう、みたいね……」

 限界まで能力を出し切った二人は床に倒れる姉妹を見て確信した。
 自分たちの勝利を。

「やった……私達、勝ったのよ耕一郎!」
「ああ……こんなに腹が減ったのは初めてだぜ……」

 嬉しさのあまり耕一郎に抱き着く真乃。
 しかし耕一郎は頭に糖分が回っておらず朦朧としている。

 そんな耕一郎に、真乃はくすりと笑ってこう言った。

「しょうがないわね。後で私が作ってあげる」
「へへ……ありがとよ……」

 返事にすべての力を使い果たしたのか、耕一郎は真乃の腕の中で倒れるように眠ってしまう。

「ふふっ……ほんと……しょうがない人なんだから……」

 真乃はまたふわりと笑い、手で耕一郎の髪を梳いた。







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