亡国の王子の復讐

朝日

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可愛いイモウト

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――あれから、九年の歳月が流れていた。カモーアという国はなくなり、サイが領土を広げ、多数の犠牲を生んだ戦争は終わった。九歳だったイリスも成長して充実した毎日を過ごしていた。出来る限りの教養を身につけ、隠れて剣技を学んでいた。


政治問題には口を挟んでよいと言葉をもらい、会議にも顔を出すことが許された。イリスにも弟や妹ができ、幸せな日々が続いていた。膝の上ですやすやと眠るのが可愛くてしょうがない。


九年前、イリスの息の根を止めると誓ったディルは……


「……"お姉さま"」

当時の面影を失くして、女のドレスを着て行動していた。これも仕方のない理由がある。歳はイリスの一つ年下で、十七歳になっていた。


「ディル、私の前では素でいいと言ったでしょ?二人だけなんだから無理をしないで……」

「何を言っているのですか?私は、リリィです。九年前にその名は捨てました」

「だけれど――…」

「これ以上言ったら例えお姉さまでも怒りますよ」

冷たい温度で眼光を光らす。体が震えるような、身が竦むような、暗い恐怖が走る。自分など映っていないかのようでイリスは怖かった。


ディルは男として生きる事を奪われ、女として生かされていた。玩具など不要と言った父ブレイヴが気紛れに殺すと呟き、イリスが何とかしようとしてこの結果が生まれた。

あの時の記憶を、イリスは振り返る。


『わ、私の玩具としてお父様がくださったじゃないですか!どうして今さら殺すなどと!?』

『日に日にカモーアの王に似ていくのが気に食わんのだ。あの男があざ笑うかのようで憎らしい。違う玩具ならいつでも用意できる』

『いいえ、私は彼しか要りません。殺すなんて許さないです』

『私に逆らうのか?』

『っ、それは……!』

『イリスよ、カモーアの王子が生きていると国民に知ったらどうなると思う?反乱分子がまた戦をおこすかもしれんぞ』

『……分かり、ました。それでは……彼の名を捨てましょう。ディルという人物を消せばいい。そうならば、誰も文句は言わない』

『ほう…名だけ消すとな?しかしどうだ?玩具は男子、イリスを襲おうと思えばいつでもできるぞ。可愛い娘を殺させたくはない』

『……そんな、では…』

『考えもなくはない。玩具を、女にしてしまえばよいのだ。恰好を変え、心までな…』

『――っ!??』

イリスは、抗う事が出来なかった。




「ディル……。貴方の命を救うのは、これしかなかったの」

綺麗な銀髪をひらめかせ、女としても申し分のない容姿を持った彼に、情けなく謝っていた。


屈辱以外なにものでもない。国を滅ぼされ、男としての権利も奪われ、こんな姿になって。その原因は自分にあるのがイリスは本当に悔しかった。もう何年も見ているが、ずきんと痛む心は年を越えるごとに増していった。


「その話はしない約束でしょう、お姉さま?私を怒らせたいのですか?」

ジワリと心を探ってくる銀の瞳が、睨むように見つめてくる。


「……そう、ね。貴方は…リリィ」

与えられた名はリリィ。隠された意味は、“罪人”、ぴったりだろうと父は笑っていた。ドレスを着こなし、口調も婦人のようになった。道を歩いても、彼が男だとは疑うことはないほどだった。


「分かっているのならいいです。そろそろあの子がやってく――」

訝しげな顔をしたディル……リリィは、ドアの方を見た。そうすると、ドドドっと大きな音を上げて廊下を走る誰かに気づく。



「おねえさまぁぁーーっ!」

上機嫌でノックもせずに入ってくるのは、5歳になったばかりの可愛い弟、ウィールだった。次の瞬間には座っていたイリスのもとに飛んできて、猫のようにすり寄ってくる。


「あらあらウィール、今日も元気ね。だけどノックはちゃんとしなきゃ」

「ごめんなさい、イリスお姉さま。一秒でも早く会いたかったの。ゆるしてー!」

「ふふ、可愛い子ね」

うるうると瞳を向けて大好きと叫ぶウィールに、「リリィにも挨拶をしなさい」と言った。一瞬顔を曇らせたがウィールは礼儀正しく立ち上がり、にこっと笑った。


「こんにちはリリィおねえさま!……いたのにまったく気づきませんでした」

「存在が薄いから仕方ないわ。お姉さまに会いたかったんでしょう」

「そうなんだぁ、だってお姉さまって……」

そう言うウィールはぼさっとイリスの腕の中におさまる。いつものことなので、イリスは微笑んでみていた。


「ふっくらしていて、とーーっても気持ちいいんだもの。リリィお姉さまにはないやわらかさっ!」

「……そうね、否定はしないわ」

リリィは涼しい顔で冷静に答えた。イリスが気づくことはないが、黙れクソガキと無言の威圧を飛ばしている。


「知ってますー?イリスお姉さまって、ここがふわふわしてるの。ぼくの指に入らないくらい。お優しいから、いつも触らせてくれるの」

そう言ってウィールはイリスの胸に手をやる。もにゅと小さな手で握ると、イリスは「…っ」と甘い声をもらした。リリィの眉がぴくんと上がる。知ってか知らずか、ウィールはにやりと笑って、豊満な胸に顔を沈める。


「気持ちイイーー僕のまくらみたいー。ね、リリィお姉さま?」

「っ……」

リリィは他人では分からないほどほんの少しだけ顔をしかめ、ウィールを見つめた。


「およしなさい、ウィール。くすぐったいじゃないの」

イリスはくすくす笑って、ウィールの柔らかい金髪を撫でた。

 
「イリスお姉さま。リリィお兄さまはなんでここにいるの?」


お兄さま。


イリスは一瞬だけ顔色を変えたが、ぱちんっとウィールの額にデコピンをして微笑んだ。リリィは無表情のまま立っている。その足が若干震えていることをイリスは知らなかった。


「"リリィお姉さま"、でしょう?今日はいっしょにおでかけするの。お留守番でいい子にしているウィールにもお土産買ってくるわよ」

「え、僕も行きたい!ずるいですー。本当の姉妹じゃないのにおでかけなんてー」

「もう、どこからそんな話を聞いたのかしらね。信じちゃだめよ?」

「はぁい」


リリィに見せつけるようにぎゅっと抱きつくウィールは、わざと何度もイリスの胸に手をおく。無邪気な顔をしながら、揉んでいるように動かすと、イリスの頬が少しだけ赤くなっていった。ウィールは時々先端部分を小刻みに震わす。

湿っぽい息を吐き出し、イリスは小さく肩を上げる。ウィールがリリィに挑発しているのだと気づかないイリスは子供の悪戯だと思いこみ、やめなさいと声をかける。


「お姉さま、もう時間です。そろそろ出発しましょう」

リリィは落ち着いて言葉を落とす。青筋が浮かんでいることにイリスは気づかない。


「ちぇー……ぼくだけのお姉さまなのに」

「はいはい、私もウィールが大好きよ?また違う日に遊んであげるから、今日は戻りなさい」

「分かりました……」

不機嫌そうにイリスからおりると、ひょこひょこと足をもたつかせ、不自然な動作でドアに向かう。そしてわざとらしく、ぐいっとリリィの足を踏みつけた。イリスはあっと声を出して、慌ててウィールに近寄る。


「わっ!ごめんなさい、お姉さま!そんなところに足があるなんて知りませんでしたぁー!ていうか見えなかったぁー!」

「……い、いいの。私が退かなかったのがいけないから」

「お優しいですねー!あ、見かけだけでしたっけ?じゃあ失礼します、イリスお姉さま!」

そう言って風のように去っていった。

 
「リリィ、大丈夫?あの子、思いっきり踏んだわよね」

心配そうに屈んでイリスはリリィの足を覗こうとする。すっと長い指が触れそうなときに、リリィは嫌がるように目を細めた。


「平気です、お姉さま。さあ、もう行きましょう」

リリィは素っ気なく言うと、手が触れる前に足を引き、イリスに呼び掛ける。


「あ、いけない。ディッシュを待たせてるわよね。痛かったらちゃんと言ってね?」


「これくらいは痛くありません」

何でもないと顔で示すリリィは、早くとだけ言った。


「ならいいんだけど。ディルは強いものね。それじゃ、鞄を持って行きましょ」

「……はい」


イリスは、『ディル』と呼ぼうとする癖を直すつもりはなかった。せめて、自分だけは覚えておこうと心に決めていた。そんな心情を知っているのかは分からないが、ディルはこれ以上深くは問い詰めようとはしない。

イリスは愛用の剣を取り出すと、生き生きとした目を輝かせる。サイの国章が描かれた剣は光沢を浴びてうっすらと光っていた。


「今日は天気もいいからきっといい試合ができるわ。ふふ、ディルにだって負けるつもりはないもの」


街で行われる剣技大会へ父ブレイヴに内緒でこっそり出るつもりのイリスは心から楽しそうに笑っていた。知り合いの民家に泊めてもらうつもりで、ずっと前からこの日を楽しみに待っていた。

一日中ディルと二人っきりになれることもあまりない。普段はウォールや妹のサミルとの時間で潰されることがほとんどだった。


「……どうでしょうね、お姉さま」

そう口を動かし、リリィは颯爽と廊下を進んでいく。侍女たちはイリス達に気付くと横一列に並び、一礼して挨拶をしていく。イリスはにこやかに返事をかえし、リリィに話しかけた。


「最近は負けが続いているけど、昨日はとても調子が良かったのよ。ディルの好きな角度の攻撃を見破ったわ。見てなさい、必ず打ち負かしてみせるから」

「へぇ……見破ったつもりでしょうけど、私の攻撃は簡単に崩せませんよ」

「どうかしら。これでもたくさん稽古したの。楽しみね」

ふふんとご機嫌で歩いていくイリスの金髪は高い位置に一束ねして、過ぎゆく風になびいている。男用の服を身にまとい、すらっとしたラインを描く足は細長かった。襲って下さいとでも言うように、真っ白なうなじがたまに見える。


「……楽しみですね」

リリィはぱっと眼をそらして、ツカツカと歩を進めていった。




 「ディッシュ、送ってくれてありがとう。今日は楽しみね」


馬車に乗り込むと、同じような服を来た青年がよーっと気さくに手を振ってきた。顔立ちの良い、優しそうな雰囲気を纏った人で、輝く灰銀の髪が覗く。出身国はディルと同じカモーアだった。


「おいおい、イリス。王女が剣技大会に参加するなんて聞いたことねーぞ。男顔負けの腕を持っているのは認めるけど」

ディッシュは、呆れたように声を掛けてきた。


「大丈夫よ。ディッシュには劣るけど、ちゃんと戦えるから」

イリスはにっこり笑って、柄の剣を握って態度に示す。


「おいディ……リリィ、お前も止めなかったのか」

ディッシュは、面倒臭そうに訊ねる。


「私が止めてもお姉さまは嫌と言うだけよ。一度決めたら頑固だもの。そのへんの岩みたいに」

小馬鹿にした口調で言ってくるが、イリスは気にもしない。


「そうかい。分かってたけどなんかなぁー……この美貌が傷つくって考えるとひやっとする」

「美貌?あ、リリィのことね。だいじょーぶ、リリィは強いから誰にもやられたりしないもの」

ね?と純粋な目を向けて歯を見せて笑うイリス。


「……じゃなくて。くそ、イリスは鈍感だったな。言っても伝わんねーか」

「え、気になるじゃない。教えなさいー、イリス必殺☆お色気攻撃するわよ」

「やだね。そんなの受けたらリリィにブッ飛ばされる。だいたいこいつはいつもイリスの胸ばっかり見……っ、なにすんだよテメー!」

「黙りなさいこのハゲ。年中女の尻追いかけまわしてるくせに余計なこと言わなくていいの」

「痛いじゃねぇか、リリィ……」

泣きそうな顔をして震えるディッシュを、微笑んで見つめるイリスはリリィとのいつものやり取りを楽しそうに聞いていた。


「口ごと縫ってもいいのよ?針と糸ならその辺で買えば手に入るもの」

リリィは冗談か本気か分からないような口調で続ける。


「や、やめときます…」

ディッシュはリリィの鋭い視線を受けると、体を縮ませて大人しくなった。 



試合が行われる場所につけば、屈強な体つきをした戦士がたくさんいた。イリスなど一発でへし折ってしまいそうな体格のいい強面の男子も紛れている。中には女性も交ざっているが、皆が気の強そうな顔をしている。平均よりもずっと大きくがっしりと筋肉の付いた体で、いかにもという風格を醸し出していた。


「久しぶりねーっ、ディル。みんなにも会えるんじゃない?」

そうですね、とリリィはいつもよりも明るい表情で相槌を打つ。


「……三月ぶりでしょうか、馴染みのある顔も見られますね」


足を進めていくイリスを見るなり、強面の男たちが一瞬で輝く目に変わる。その変化にイリスを知らない人間は目を瞬かせた。そうしてどしどしと足音を立ててやってくる。その響きに地面が少し揺れた。


「おおぉーいイリス!久しぶりじゃねぇーかぁ!最近顔ださねぇーと思ってたら今日は来たのか!」

「あらヒストン。相変わらず素敵な筋肉ね!」

イリスも愛想よく返事を返す。


「そうだろう?俺様自慢のムキムキの麗しい体。イリスにも分けてやりたいぜ」

「せっかくのヒストンの筋肉だから遠慮しとくわ。もし試合で勝負しても負けないわよ」

「お互い様だぜ。俺に勝とうなんていう男、そうそういないからな」

「そうね」


――なぜかヒストンをはじめ、他の友人たちはイリスの事を男だと思っている。ディッシュのように仲が深い者は一部だけ知っていた。


口調も声も女性なのに、卓越した剣さばきを見て、完全な男だと錯覚したらしい。イリスは女性はか弱いからという理由で軽蔑されたくないと思って、何重にもさらしを巻いている。盛り上がった胸を隠すのはすごく苦労した。

細長いシルエットを見て、剣を持つ男たちはいつもごくんと喉を鳴らしていた。男色愛好家はいないが、イリスなら抱いてみたいという者が大半だろう。王女だと知らない面々は次々にイリスに挨拶をした。
 

「イリスが出てきたら優勝は誰になるか分からないな。って、ディルも出るのか!?おいおい、俺らの勝ち目ないだろ。観戦しろ観戦!」


ここでは、ディルは男として活動できる。それもイリスが考えたことで、一時の逃れでしかないが男性として剣を握る機会を作ったのだ。


「無茶言わないでくれる?こんなむさ苦しい男の試合を見るなんて耐えられないわ」

「……ディル」


ここでもなぜか、ディルはいつもと変わらない口調で話す。試合用のズボンをはいて、見た目は限りなく男に近いというのに、王の言いつけを守っているのだ。せっかくの時間、今だけでも男として笑ってほしいというイリスの願いは叶えられなかった。

 
男が半数以上を占めているこの大会にも、イリスは自然のように溶け込んでいた。


初めて参加したときは異様なものを見る目付きで眺められ、多くの人に馬鹿にされたことを思い出す。最初こそ受け入れられなかったが、イリスの剣技の腕と熱意が伝わるとだんだんと打ち解けて、今ではもう仲間のように接してくれた。

目を奪うような金髪を揺らして爽やかに挨拶するイリスは、ディルの手を引いて、その辺の岩に腰掛ける。すると剣技大会でも上位常連の馴染みの男に声をかけられた。


「よ。聞いたぜ。ディルとイリスが参戦するとなっちゃぁ気合入れなきゃなあー。久しぶりに本気出すか!」

「あら、楽しみにしてるわ。私も腕を上げたって示さなきゃいけないもの」

イリスはうきうきとした表情を隠さず、挑戦的に微笑んだ。


「やり合えたらいいなー」

そう言って男たちは仲間のところに戻っていく。イリスはふふっと笑みを落として、リリィに視線を移す。しかし彼の表情は曇って、どこか上の空だった。口調も少なくどんよりと気分を落としているようにも見える。


「ディル、どうしたの?貴方、いつもなら嬉しそうな顔をするのに。緊張してお腹が痛くなったのかしら」

試合まであと少しで、イリスは剣の調子を見ながら質問した。リリィ…ディルの銀の瞳は静かな炎を燃やして、自分を見ているのだとその時は何も知らなかった。


「……別に。ただお姉さまは、随分と警戒心が薄いのだと思っただけです」

「そうかしらね。背後をとられても反応出来る自信はあるけれど。ここで女だと知っている人は少ないから護身術は学んであるわよ」

「なら、いいです」


ディルは九年前のあの時から切っていない銀の髪をまとめて渋った光を発しながら、ぼそりと呟いた。

彼をカモーアの王族だと知る人はもうあまりいない。だけど、高潔そうな、気品のある雰囲気までは隠せない。女性なら熱を上げてみるだろう、その憂いを秘めた顔に、誰もが虜になる。ここまで生きてくれたのは、あの誓いがあるからだと、胸にしまっている。誰にも秘密の約束。彼から離れない。この息が止まる瞬間まで、そばにいるのだから。



「さ、もうすぐ始まるわ。心の準備は大丈夫?」


「――お姉さまこそ」

ディルの言い返した言葉がイリスの心の中で妙に響いた。

彼の行く道を、止める事はしない。憎しみに全てを預けて、この命だけを狙う。もう、いいんじゃないかと思った。九年も苦しんだ彼を、一番近くで見てきたのはこの私だと。イリスは押し潰されそうな痛みを感じた。

 

「――ふぅ。今日も、終わったわね……」

イリスは疲れた体を休めようと、ゆっくりベットに腰を下ろす。ディッシュの家に泊まらせてもらい、かいた汗を流して、じんわりと温まる火照りに気分は安定していく。

もう時間は夜も深まっていた。今夜は心地よく眠れそうだとイリスはごろんと横になる。


「何かしら……」

どことなく、イリスは嫌な胸騒ぎを感じていた。形容しがたい、心に波を与えるような、直感に近いものを。おかしい話だと、誰かに話したら笑われそうだった。

イリスは目を閉じ、精神を落ち着かせる。今まで生きてきたことを後悔するつもりはない。しかしイリスは、九年前のあの日から、自分の終わりが見えている気がした。ディルの手によって、死ぬその瞬間が目に浮かぶ。


「……馬鹿よね、わざわざ自分から行動するなんて」

ほんの少しだけ、怖かったのかもしれない。その時が訪れるのを。今でも、思い出す。憎悪に全てを捧げたあの顔が、記憶に焼き付いて離れようとしない。

真っ直ぐに歩いてきた今までを手繰り寄せて、磁石のように吸い込もうとしているように。抗えない引力が、体の肌に染み込んでいた。ディルはきっと苦しい思いを抱えている。こんなことになって屈辱しかないはず。プライドなど、とうの昔に粉々に消え去っただろう。


「……心の中では、燃え盛る炎のように、憎いでしょうに。何を躊躇っているの…?」


窓の外は、今日の大会のせいで興奮した男たちが、お酒を飲んで酔っ払っている。イリスは誘われたが、丁寧に断っていた。ディルも同様に。試合は決勝の手前でディルと戦って負けてしまった。見破ったと言っていたのに、機転を利かした攻撃に体が言う事をきかず、そのまま終わった。



「――…ディル」

微かな声で、届くはずのない彼の名を呼ぶ。


早く、私をその手にかけて。

この複雑な感情を消し去るように、すべてを奪い取って。地面に力を入れて生きる糧にした憎しみをぶつけてほしかった。ディルを見る度に、どうしようもないほど、泣きそうになる。心臓が鈍い音を立てて、誇張するように、求めるように、激しく震える。


「もう……いいでしょう」

いっそこと、王族の誇りを持ったまま、父や母のもとに逝かせてしまった方がよかったのか。自分のしたことが間違っていたのか。分からない。生きていることが、ディルのためになったのか。あの時イリスには何が最善かなど考える余裕がなかった。



イリスは、小さな涙を頬に流し、眠りについた。口元に手をやり、苦しそうな顔で、一定の呼吸を吐き出す。


「……ん…」

ガタガタと足音がするのにも気づかずに、絹のような金髪の髪を広げて、静かに首を動かした。イリスの剣は机の横に置いてあり、いつでも戦えるようにしてある。城外ということで、警戒心を緩めるようなことはしなかった。

無防備な寝顔をさらけ出すイリスは、深い眠りの淵を歩いていた。





イリスが眠る家の奥で、ディッシュとディルは激しく口論をしていた。


「……本当にいいのか。あの、イリスだぞっ!?お前をあのクソ王から必死で守ってきた、家族みたいなもんだろ……何で、こんなことになるんだよ!」

「いいのよ。もう潮時だと、あの人も分かってるはず。復讐しろと私に言ったのは……紛れもない、イリスお姉さま」

「強がってんじゃねぇ!そんな顔をして言うなよ、イリスに復讐だと!?思いの矛先が違うだろっ!」

「ずっと前に決めたことだと何度言ったら分かるの。同じ事を言わせないで」


ディルは冷たい目を向けて、ディッシュに吐き捨てた。


「………カモーアの王子。俺らは、あんたに従うしかない。望む事はこの身がどうなろうとも捧げると決めてあるぜ。死ぬ時も一緒だと誓う」

でもな、とディッシュがディルの服を血管が浮き出るほど力を込めて握る。


「……自分の思いも伝えられねぇ腑抜けを主として認めたわけじゃねぇ。イリスは俺にとっては大事な奴だ。傷つけるしかできないなら俺はあんたを殺す」

「絶対服従。その言葉の意味を忘れると言うの?」

「ああ、いざとなったら忘れてやる!イリスが苦しむ顔をするくらいなら、死んだ方がましだ!」

「……そう、覚えておくわ」

「忘れんな、俺はあんたが思ってるほど強い人間じゃない。場合によっては味方だって敵に変わる」

「覚えておくしかないようね。もういい、話し合いは十分済んだでしょう。行動に移しなさい」

そう言うディルの顔には、躊躇いは感じられなかった。


「……御意、我が王子」

ディッシュは目を閉じ、片膝をついて頭を垂れた。


長い廊下に十人に近い男たちが集った。イリスの馴染みのある人物も含まれている。先頭を行くのはディッシュだった。一番後ろにはディルが唇を噛んで待機していた。腕を組んで、無の表情を貫いたまま、一部始終を見守っている。

殺気だった空気があたりに満ち、多くの者が手に汗を浮かばせていた。


「行くぞ。もし抵抗するなら剣を使ってもいい。女だからと甘く見たらイリスにやられることを肝に銘じておけ」

「……分かった」

「いっぺんに抑えつけろ。躊躇するな。真っ直ぐに捕らえるんだ――…行くぞ」

その緊張感が走るディッシュの声を合図に、ダダダッと廊下にけたたましい音が響いた。


ドンッ!とディッシュがドアを開けると……

――イリスが剣を持って、立っていた。既に構えの体勢に入っている。


「……話は、終わったかしら?」

チッとディッシュは軽く舌打ちした。そこで「行け!」と大声で命令する。しかしイリスは、そんなディッシュに攻撃を始めていた。キィィン、と金属音が振動を巻き起こし、鈍い剣圧をイリスは肌で感じる。

反回転した剣の速度を利用し、ディッシュの後ろにいた人間を奥まで追いやる。狭い!と思ったイリスはさっと部屋を見渡す。そしてすぐさま距離をとり、じりりと一時対峙する。


「……カモーアの?」

イリスは攻撃を加える面々を見つめ、ハッとして剣を持つ力を緩める。圧倒的に不利な状況を理解すると、悲しそうな顔をして、ふわっと儚く微笑んだ。


「……ディルの、命令?」

どことなく解放されたような、力を抜いた顔をする。安堵した、と言ってもいいような柔らかいものだった。


「イリス……っ」

ディッシュが苦虫をかみつぶしたような、苦しそうな表情をつくって、イリスの名を苦しそうに呼んだ。


「カモーアの…反政府論の……そう…なら、争っても意味はないわね。ディルの命令だもの」

イリスは勝ち目などないと悟って、銀にきらめく剣を、静かに置いた。そうして、ゆっくりと一歩下がる。驚いた顔をする一同に、イリスは諦めた様子で攻撃する気はないと、そっと手を差し出す。鎖につなげてくれと自ら進んで捕まりに行こうとすると、少し震えた唇で掠れた言葉を投げかける。



「連れて行って。私を、ディルの所まで。話は、そこからね」

「おいっ、なんでイリス――」

「ありがとう、ディッシュ。抵抗しないから、安心して。みんなも、ごめんね」

「っ、イリ……」

「大丈夫、ちゃんと…分かってるつもりだから」

貴方達の考えも、想いも。そんな、泣きそうな顔をしてまで、行動している意味も。イリスはいつものように優しい笑顔を向ける。



――イリスは氷のように冷たい鎖に拘束された。

そこから伝わるのは、悲しみだったり、憎しみだったり、誰かを想う気持ちだったり。比べる事が出来ないような、重くて、不安定で――だけど、揺ぎ無いものだとイリスは強く感じた。


「……ごめんね、ちゃんと逃げないから」

ぐっと縛り付けられ、身動きが取れない。周りを見たら、皆が苦しそうな顔をして直視を避けていた。


「そんな顔、しないで……皆、私が憎いのは知ってるから……睨んでくれたら、いいのに」


その言葉に、皆がはっとして息をのんだ音がする。そしてイリスの視界が急に暗くなってぎゅっと目隠しされた。ごめんな、と耐えるようなディッシュが言う声が聞こえて、鼻や口に布を抑えつけられる。


その瞬間、イリスは「――っ!」と声にならない音を出す。そして、イリスの意識が外界と完全に途切れる事になった。ばたっと崩れ落ちるイリスを、ディッシュが優しく支える。


「……終わったぜ、ディル。イリスも分かったような眼をしてた…」

目隠しを解くと、瞼を閉じるイリスの睫毛が濡れていた。じわっと涙が浮かび、つらそうな表情を浮かべている。


「……穏便に済んでよかったわ。暴れられたら誰か怪我していたかもしれないしね」

簡単に言うディルはイリスを見ようとはしなかった。そこにいないような扱い方にディッシュの苛立ちはどんどん募っていった。


「何で、そんなに平然としていられるんだよ…!お前は、つらくないのか?イリスが何のために自ら進み出たか分かってんのかよ!」

「つらい?そんな感情、とっくの昔から経験してるわ……お姉さまはただ単に勝てる気がしなかったからでしょう。もう、行くわよ」

踵を返すディルは、イリスを見ずに歩いていった。心なしか、その背中は頼りなく揺れているようだった。ディッシュの腕に沈むイリスは、前髪に隠れた瞳から、溢れる涙を零していく。ディッシュはやり場のない怒りを発散できず、ぎゅっと拳を握りしめることしか出来なかった。


「もう女として喋んなくていいだろ。元に戻れよ……素直になれって…言ってんだろうが……イリスが死ぬほど大事なくせに。本当は……壊したいほど、愛してるくせに……」

「……ディッシュ、そろそろ行こう。こんなところで悩んでたって、何も始まらない」

味方の声によって、ディッシュもやっと動こうという気になった。


「……あぁ」

 悔しそうにディッシュは、イリスを横抱きにして、後を追った。

 

 「……ん…」

イリスが覚醒したのは、どこか暗い一室だった。ゆっくりと顔を上げて周りを見るが、慣れない暗さのため、目が順応に反応しない。次第に慣れてくると、人気がなく、誰もいないのだと分かった。広いわけでもない部屋は、イリスだけが鎖に繋がれていた。


拘束が甘い。普通、全身に渡って動きを制止するように鎖を繋げるはずなのに。ああ、とイリスはぼんやりと考えた。ディルから逃げることはないと、知っているから。この命はディルだけのものだと、約束したから。ちゃんと、覚えていたのねとイリスは薄く笑んだ。


「……ディッシュ…」

友人の名前を呟いて、心苦しそうな顔が最後だったと微かに思った。嗅がされた香りのせいか、頭が白くぼんやりとして、きちんと働かない。首を動かすのも億劫で、手に力が入らない。

人間、暗い部屋に閉じ込められたら我を失いそうになる。独りだと思い知らされて、誰でもいいから、しがみ付きたくなる。


「馬鹿ね……孤独を感じたのは、他でもない、あの人だけ――」

イリスは小さく、呟いた。


銀の瞳を思い出すと、胸が熱くて苦しくなる。体中の熱がそこに集中するように、込み上げる思いが悲鳴を上げる。辱めを受けても、王族のプライドを守ろうとした彼を……助けたと言えない。真の意味で助けるのなら、もっと別の事をしなきゃいけないと何度も思った。 

ディルと向かい合った時、目に見えない強さと人柄を垣間見た気がした。どんなことをされても、毅然とした態度で立ち向かっていた。


「……まずは、精神的に追い込むってことかしら」


全ての憎しみを、自分向けて。感情を全て吸って、無になるまで、私を憎み続けて。まだまだ足りないはず。私も辱めを受けるのだろうか。彼を初めてみた時のように、甚振られて、追い込まれて。そして孤独を、思い知らされるのかしら。イリスはぼんやりとそんな事を考えた。


「……暗闇は、怖いものね」

もうすでに、心の暗闇は迫ってる。夕方の空を終えたように、夜の闇に葬られそう。心が痛い。心臓に直接刺激を受けるような、苦しみを感じる。



ディル、ディル。


ディル。


「……早く、私を殺して…」

この爆発しそうな思いが、無に還るまでに。



あれから何時間たったか分からなかった。時間の感覚がなく光が射さないこの部屋は、いつ目が覚めたかも知らない。暗さに慣れたが、一人、孤独だということには慣れない。世界で自分しかいないようにイリスは感じた。


「……このまま放置して死なせるつもりかしら…」


それはそれで苦しみをぶつけるには丁度いいかもしれない。見た頃には干からびた自分が彼を迎えるだろう。でもディルはもっと別の事をしてくるはずだとイリスは確信していた。何年も一緒にいたから、ある程度のことは、熟知している。

淋しい……と思って、イリスはゆっくり体を動かしてみる。手につけられた鎖は頑丈のようで、壁に繋がれていた。女の腕力ではどうにもできそうにない。

逃げるつもりは、ないのだけれど。ぼうっとしていて気付かなかったが、すぐ近くにイリスの剣が横たわっていた。取れない距離でもない。頭を使えば、鎖を切る事だってできるかもしれない。追い詰められたら、その剣を手にかけると思ったのか。私の心を揺さぶる為に、わざと置いたのか。イリスは複雑そうな顔をする。



「試しているのね、ディル……分かっているでしょうに。私は逃げないって」

そうこぼしたら、何者かの気配を感じた。


「……イリス」

気まずそうにした、見慣れた人影がゆっくり入ってくる。イリスは驚いたように見つめ、掠れた声で話しかけた。


「ディッシュ!貴方、ここにきて大丈夫なの?ディルは私を一人にするためにここにおいたんじゃ…」

「よく、分かったな……さすがイリスだ。だけど捕まえてから時間が経過した。お腹もすいてるだろ?」

「時間の感覚がないから、分からなかったの。あまり、お腹は減ってない…」

「……イリス、なんでお前はいつもみたいに話してくれるんだ?裏切ったんだぞ、俺は」

「裏切ってなんかないわ。貴方はディルのために行動したんでしょう?そうならば、問題はないはずよ。ディルの味方は私の味方だもの」

何を言ってるの、と普段通りに笑ってディッシュに返事をした。


「っイリス……俺は……ディルの下についてるからよく分かる。あいつ、イリスのことは嫌ってない。憎むような感情を持っていない」

真っ直ぐな目を向けて、ディッシュは真剣にイリスと向き合う。


「どうして?ディルはずっとずっと私を憎んでるわ。殺したいほどに…だからこそ、こうやって閉じ込めているんでしょう」

「違う!ディルは、お前の事が――…」

あまりにも必死な声に、イリスは息をするのも忘れて続きを聞こうとした。


「そこまでにしなさい、ディッシュ。余計な口を叩くなんて、誰かしていいと言った?」

そこには、冷たい表情をしたディルが立っていた。


「ディル、貴方……」

いつからそこにいたのと、イリスは呆然としてディルを見た。

彼は、記憶のままの姿だった。ディルは腕を組んでイリスを見てから、険しい顔でディッシュを睨む。その目はディッシュを一瞬で黙らせて、少しだけ体を震わせる。イリスは自分に向けられていないと分かっていても、冷たい恐怖で体が固まった。


「……ごきげんよう、イリスお姉さま。ご気分はいかがですか?」

その場で動かないディッシュの肩を思いっきり退かせると出ていけと顎で示す。それでも反応しない姿を見て、イラついたように、「命令だ」と強く言葉を投げる。ディッシュは逆らえずに悔しそうにして出ていった。


「あら、皮肉が上手になったようね。まあまあよ……ディル」

イリスは努めて冷静に言い返した。いざ本人の目の前にすると、少しだけ汗が浮かぶ。

普段よりも冷たい色を宿してディルは、一歩、一歩、追いつめるようにイリスへ歩いていく。美味しそうな獲物を狙って、じんわりと甚振るように。恐怖を植えつけるためなのか、見下す視線が全身を観察する。


そんな彼には、少しだけ狂気を孕んでいるように見えた。普段から発される雰囲気とは異種の、ぞくっとするような美しい顔をしている。


「……自ら進み出るなんてやはりお優しいようですね、お姉さまは。ディッシュ達を傷つけないためと綺麗事を並べて自分を高めたいのでしょう?」

そして、もう近づけないほど、ディルは側にいた。身が凍えるような気持ちになり、イリスは肩を震わす。


「そう悟ったならディルが思うようで構わないわ。私は、逃げない…そう誓ったでしょう?」

「あの約束のためですか?健気ですね、甘いほど純粋で……腹の底から憎らしいです。いつまでも私を守ろうとしているその姿を……めちゃくちゃにしたくなる。傷ついて、乱れて、陥れて…この国の王女の恥辱をぜひ拝見したいですわ」

成す術もないまま食べられるのを待つ憐れな動物のようだとイリスは思った。怖くてディルをこれ以上直視できそうにない。


「その気なのでしょう?私を追い詰めて…命を奪うつもりでしょう……」

何を今さら……とイリスは視線に耐えきれず、顔を下に向ける。ディルはくすっと笑って静かに座っていく。ビクンと揺れるイリスを楽しそうに見つめた。


「命を奪う?甘い夢に酔いしれていませんか?そんな現実は存在しない。私の憎しみはこんなものじゃない……恐怖だけじゃない、痛みも苦しみも味わってもらわないと……」

お分かりですか?と、ふぅー……と息を吹きかけ、耳朶を甘噛みしてぺろっと舐める。グチャ、と生々しい唾液の音が鼓膜を刺激して、イリスの鎖が大きな音を出した。


「ひゃあぁ……っ!んっ……はっ、はッ!」

びく、びくっと反応してイリスは涙をぽろぽろと零す。脅えたように恐怖に歪んだ顔はこの上なく扇情的で、男を誘うようだった。


「どうして、こんなことを……食べ物じゃないのに…」

雌の色香を匂わせ、眉を落として、困惑しながらディルを見つめる。湿った唇がびくびくと震えながら、ディル…と掠れた甘い声を出した。


「ディルっ」

「っ……」

ディルは不覚にも感じてしまった。

 
「あ、貴方の憎しみや怒りは受け止める。だけど、関係のない人を巻き込むのはやめて……」

叶うか分からない願いを、イリスはか細く呟いた。


「関係のない人?ああ、ディッシュ達のことですか?それとも愛しい家族のこと?ずいぶん虫のいいお話をされるのですね。父を目の前で虐殺され、泣き叫ぶ母と引き裂かれ、大切だった者たちを次々に手にかけていったサイ国の王女様…」

ディルは呆れたようにガッと乱暴に顎を掴み、イリスはその強さに目を見張る。


「……っ!」


「何も、言い返せないでしょう?すべて事実。紅い血を全身に浴びて、絶叫だけが残る城内で、私は孤独になった。誰も助けてくれる者はいない、周りは自分を舐めまわすように見つめる敵だけ。裸にされ、性器を潰され、それでも尚、苦しみ続ける…っ!」


「う、あぁあ……っ」


更にぐっと力を加えられ、イリスはどうすることもできずにいた。


「今も耳に焼き付いて離れない、叫び声……」

イリスは冷たい床に押し倒され、馬乗りになるディルを泣きながら見つめた。やはり、彼に圧し掛かるのは苦しみと憎しみと痛みだと思い知った。手だけ不釣り合いに壁の方に伸びて、跨るディルの体はもうイリスよりも大きくなっていた。九年前とは違う。


ディルの気持ちを考えたら、頭が破裂してどこかに飛んでいきそうだった。

憎しみしかない瞳の先はイリスがいる。何も言わないその姿はディルを離さずに鎖でつなげたように見つめ受け止めた。その強い眼差しにディルは心の核に触れられ、果てしない独占欲がドロドロと込み上げてきた。ドクっと心臓が高鳴り、逸る興奮を何とか自制の檻に閉じ込める。


「……ディル…貴方の、気が済むまで好きにして……私は、そうするしかないのだから」

その言葉も甘い余韻を与え、空気に染み込む。イリスは唇を真っ直ぐに曲げて、すとん…と床に全てを預ける。驚いた様子でディルはイリスを見た。


「……ずいぶん余裕ですね。私にどんなキケンなことをされても、女神のように受け入れると言うの?」

「だってそれが約束だもの」

あの時に心に刻みつけた、たった一つの繋がりだから。


「……本当に、私をイラつかせるのがお得意なようで…骨の髄まで汚したくなる…っ!」

ディルは怒りのためかっと赤くなって、イリスの足を掴んだ。そして大きく開脚させて挑発するように卑猥なポーズをとらせる。ズボンを穿いているのが救いで、イリスは黙って抗おうともせず素直に従った。しかし、足の先が細かく震えを刻んでいる。

ぐっと力を入れるのは紛れもなく男の腕力だった。ディルははぁはぁと息を零し、興奮した体の勢いに任せて行動する。太ももを辿って布越しの秘部を視姦して歪んだ顔で笑った。ディルの美しさが違う方向で妖艶だった。


「王族ともあろうお方が、赤子がおしめを替える様に足を開いて……羞恥以外何でもないですね?犯して下さいと言ってるのと同じことです…ああ、淫乱なお姉さまは裸になりたいんでしたか」

「こ、言葉を考えなさい……ディルの品格が下がるわ…そう…ね、恥ずかしくて死にそうだわ…」

「この下はどうなっているのでしょうね?売女のように男を誘っているんでしょうか… 触ってほしそうに震えていますけど…」

「……た、確かめるんでしょう?私も…生まれたばかりのような姿にして…」


いけない……とイリスは困惑した。じわりと下着が濡れてきたのが分かる。ディルは一つも逃すまいと視線をよこし、見定めるかのようにしてくる。言葉で攻められるなんて、よほど辱めたいのだろう。イリスは羞恥で押し潰れそうになった。


「ディッシュ達の前で痴態を晒そうかと思いましたが、今はまだ私一人で十分です。大人数に見られた方がよかったと思えるような破廉恥なことをして差し上げましょう。せいぜい喘いでいたら気持ち良くなりますよ」


ディルの指先が優しくイリスの頬を撫でて、痛みつけるように耳元に波紋を落とす。イリスは稲妻が走ったように敏感な反応をした。


「っ、ずいぶん性悪な趣味ね。今度は私を玩具にするつもり……?私はディルだけのモノというわけね…」

所有物の如く扱って、最終的にはごみのように捨てる気なのか。こうなることが分かっていたが、今さらイリスに身震いがこみ上げる。


「可愛いですね、その脅えた目。今から何をされるのか想像してみてください。自ら腰を振ることになりますよ」

「……時間をかけて…甚振るの?」

「もちろん。この部屋には一切入らない様に命令してある。二人だけの時間を楽しみましょう?」

「先は、長いのね」

理性が持つか心配だ、と呑気な事を考えている暇はない。ディルはリリィのときのように口元に柔らかい笑みを浮かべた。


「ご存知ですか?何度も何度も脳内で思い浮かべ、この瞬間が訪れるのを待っていた。イリスお姉さまを傷つけ、乱れさせるこの時を、心待ちにしていました」

ひんやりした手で耳を弄び、ディルの長い指が奥まで入ってくる。そして口に移動すると、上唇から下唇にかけてなぞっていった。


「遅いと思って……ッいたのよ。復讐するなら、いつでもチャンスは、あったはず……んんっ」

「大人になるまで、ゆっくりと待ち続けましたよ。何度か手にかけようと思いましたが、叱咤して取り押さえました」

一苦労でしたよ、首に手が伸びかけた時はどうなるかと思いました……と残酷な笑顔で、イリスの口の中に手をつっこむ。


「むぅっ……は、あぁ……なして…っ!きたなっ」

ざらりとした手が舌を触れると、イリスの銀の唾液が引っ掛かる。次第に涎がこぼれ落ち、イリスの顔を汚していく。ディルは少しだけ息を飲んで見た。頬が上気し、切なげに眉を落とし、長い指を咥えているイリスはとんでもなく厭らしかった。



「でぃ……ふぁ、みっ」

じゅく、ちゅぱ、ぷじゅっ、ちゅぅー……とディルの理性を粉々にするような音が漏れる。生きているような指がイリスの舌を往復すると、びくんびくんと腰を揺らせる。


「でぃっ、てが……よごれ…」

「っ」

「ふぁめだったら……っ!だ、えきっ、ひぁ……」

ディルは無意識に首筋に片方の手を伸ばし、金髪を掬っていた。そして、じわじわと服を脱がせていく。真っ白で健康的な肌が少しずつ顔を出すと、羞恥に顔を崩すイリスは涙と涎が交ざりあって、きつく目を閉じた。


「美しいと評判なお姉さまのあられもない姿……他の王族の方に見せてあげたいくらいです。はしたない涎が口から出ていますよ。もう一度生まれた頃からやり直したらいかがですか?」

「やぁぁ……っんあ、ひくっあ、ぁ……やめ……」

「喋れない子供のように泣いていらっしゃいますね、十八歳だというのに」


足を開かせ、その間を割って入るディルはイリスの服を肩まで脱がせていた。つるるんとした汗にまみれ、滑るイリスの官能的な体がディルの興奮を呼び覚ます。

首筋に顔を沈め、ディルはゆっくりと感じさせるように舐めまわす。切なげに喘ぐイリスにディルの下半身は思いっきり反応していた。


「ッ、ん!」

感じやすいイリスは何とか声をおさえようと躍起になるが、ディルの肌が擦れる度に喘ぎ声は空気へ放たれていく。


「……はっ、緊張のため、心臓が尋常でなく早いですね。いえ失礼しました、感じているからですか?」

「なに、をっ……!」

「女として生かされた私の指を喜んで咥えているくせに……人のせいになさるおつもりですね、痴女お姉さま……っ」

ディルは徹底的にイリスを追い詰めていく。


「っひぁ……ぁ、ああっ」

イリスの中途半端に乱れた服が、ついに胸まで達していく。じゅく、じゅ、っちゅぱっとディルは唾液を絡ませ、優しく噛みつくようにイリスの綺麗な肌を舐めた。


今まで溜まりにたまった欲望をぶつけ、ディルは男としてイリスを犯していく。お互いの熱い体が近距離で触れ合い、一つの温度になっていく。


ゆぱっ、きゅ、ちゅ、っちゃぷ……


「は、汗までかいて興奮しているのですか?変態でいやらしいお姉さま……っ」

「やめ…ひぃ、ん……っ」


ぎゅちゃっ、ぱっ、ちゅ、ちゅぱっ


「やめて、なんて言っていると痛くしますよ……?ああ、痛い方がお好きですか?弟に胸を遊ばれて喜んでいましたものね!」

「ちがっ……なに、を…っあぁぁ!」

勢いに乗じて、ディルは思いっきりイリスの服を引き千切る。ぷるんっと形の良い胸が空気に投げ出されて揺れる。ディルは逸る興奮を何とか鎮め、少し動きを止めて、イリスの顔を覗きこむ。


「見ない、で……」

恥ずかしくて死んでしまいたかった。冷たい涙が頬を伝う度に、胸が苦しくなる。

ピンク色の先端はかすかな反応を示していた。手におさまり切るか分からない豊満な双丘は弾力のある柔らかさで、白雪のような色をしていた。ディルはドクンと心臓に音をたて、平静を装ったままイリスにたずねる。


「恥ずかしいですか?可愛いイモウトに見られて」


「ディ、ル……っ」

イリスは戸惑いと不安を隠しきれないまま、か細い声で名前を呼んだ。


「馬鹿なお姉さま……触ってほしいならそう言ったらどうです?私の胸を撫でまわして、揉んでくださいと言えばいいでしょう…」

「……私がそう言ったら…貴方の気は…少しでも晴れるの?」

イリスは揺れる瞳を向けて、迫りくる羞恥に耐える。その純粋さがディルの心にもやもやを与える。優しい吐息の香りはイリスがもう大人だと表し、甘美な蜜のように誘い掛ける。


「……試してみてはいかがですか?」

挑発するようなディルの言い方が、イリスの溶けそうな頭に響く。 


ディルは、イリスの覚悟を思い知る事になる。いくらイリスが優しくても王女としてのプライドは必ずあるはず。聡明で、気高く、美しいイリスは周りからの信頼も厚い。ディルはそう思い、ギンギンと反応する下半身の熱をおさえつける。はち切れんばかりに膨らんだソレはイリスだけに集中していた。


「……どう…言えばいいの…」

頬を赤く染めながら、戸惑ってイリスは問いかける。ディルはくすっと艶美に笑って、イリスを馬鹿にした。


「賢いお姉さまなら誘い方も御承知のはずでしょう?まあ、言える筈もな…」

――と、ディルは息をのんだ。イリスはすぅと口を開く。その目に、躊躇いはなかった。


「……ディル…もっと胸を…揉んで、撫でまわして…?」

その瞬間、イリスはぶるぶると体を揺らして、誘うかのように胸を突き出す。これが本当にイリスなのか疑いそうになる卑猥なねだり方で、早く…とイリスは潤んだ瞳で先を急かす。


「――っっ!!」

ディルは驚いて背中ごと一歩離れた。その顔は高揚して赤くなっている。はぁっはぁっと息をもらしながら、信じられないと困惑してイリスを見つめた。


「貴方がっ、言ったんでしょう?ちゃんと……言ったのに」

イリスは自棄になって睨みつける。恥ずかしさの嵐でどうにかなってしまいそうだった。未だかつて経験したことのない羞恥に、違う自分が生まれてしまうようで怖い。


「どこで、そんな誘っ…やべ熱……っ…くそっ…」

女の言葉ではない男の口調で、イリスはドキンとした。久しぶりに本当のディルに会った気がして、こんな状況なのに少しだけ心が温かくなる。


「――っ…」

二つの膨らみが冷たい空気に触れて、ふわりと揺れた。イリスはこの沈黙の間、ぎゅっと目を閉じて現実から逃れる。ディルはやっと落ち着きを取り戻し、長い呼吸を吐き出した。


「とんでもない、お姫様ですね。まさか本当に口にするだなんて……淫乱なお姉さまだこと」

「なんとでも言いなさい。もう、貴方が知るイリスじゃ、なくなってしまうわ……」

淫乱、と言う言葉にびくんと熱が集中する。わざとそう言ってるだと分かっているのに。ディルの言葉のすべてが、甘い刺激となって体を覆いつくしていく。


「どう、触ってほしいのですか?言って下さらないと分からないわ」

ディルはイリスの胸に少しだけ触れる。柔らかい感触で、たぷたぷと揺れた。


「っ、そこまで強要するの?もう……いいでしょう」


こんな恥ずかしい恰好をされているのに。


「高慢なお姫様ですね…せっかく我が儘に付き合ってあげているのに、そんなことをおっしゃるのですか。ほら、ココ…もうビンビンになっていますよ」

「ひぁっ、あ、やめ……恥ずかし、ぃ……!」

「ココをこねればいいのですか?それとも…柔らかく揉んでほしいのですか?」

これ以上そんな恥ずかしいこと言えない。ディルの前ではしたない姿を見せたくない。だけど……


「そんなことっ、聞かな、もう……だめ……ったら、ぁっ!」

「ひどく興奮されているようですね、イリスお姉さま。自尊心さえ粉々になるように……乱れて溺れて…」


まるで酔いしれるようにディルは震える。
 

「くすぐった……ぁっ、や…ど、して…」

顔に朱が走り、はしたない声がイリスの口からもれる。触れているのがディルだと考えると体の芯が溶けていきそうになった。


「そんなに喘いでどうしたいのですか?気持ちよくなりたいと?」

焦らしこねるように強弱をつけて揉んでいく。胸の外側をたどり、頂上に向かい、双丘を何度もディルの手が往復する。くちゅと厭らしい音が奏でられ、誰もが羨む美貌を持ったイリスの乱れっぷりに、ディル自身、余裕のない顔をした。


「……はぁっ、貴方も…憎い……女を…抱い、て……まんざらでも、ないようね……」

イリスは一方的にやられるのが悔しくてぼそりと呟いた。お互い、体温が焼けるように熱い。体の底から求めているのは自覚できた。


「よく喋るお口です。塞いでしまいますよ?」

「やっ、ちょ……んむ…っ!」

ディルは噛みつくように唇を塞いで、舌を侵入させて絡み合わせる。いきなりで驚いたイリスは迫りくる舌から反射的に逃げようとしたがディルがそれを許さない。思いをぶつけるようにディルはぺちゃくちゃと舌を動かした。 


「っ!いっ、ん……ゃっ、あぁ……っ」

そして胸を愛撫することも忘れずに、親指を細かく動かし撫でくり回す。流れに任せるままイリスの乳首が勃起していく。長い指で押し潰し、掴み、グリグリと弄ぶ。イリスの溶けていきそうな思考回路は、快感の波に溺れそうになっていた。


「も、だ……っ、でぃ……っはぁ…っ、ちゅ、んぁ」

苦しくて酸素を吸おうと精一杯イリスは口を開く。


「は……っ、涎が出てますよ……破廉恥な…っ、ふは…っんちゅ」

じゅくっとお互いに唾液が音を立てて止まらない。


「ん、はっ、あぁ……い、ぁ……」

両胸を鷲掴みにするとディルは形を変えるように揉んでいく。膨らんだ乳首を口に含むとイリスは大きな声を上げた。


「今、反応しましたね?ずいぶん可愛らしい声で鳴く人……誘ってるのかしら」

「やめ……っ、そんなこと、しないでっ」

イリスは真っ赤になって首を振るが、ディルが止まることはなかった。


「否定してる割には感じてますね……?ホラ、この桃色の突起……触ってほしそうに大きくなっていますよ?」

「それ、は……ぁっ……ディルが…っん…」

「私が?なんだって言うんですか?人のせいにして、イケナイお姉さま……」


ディルは円を描くように揉んでイリスの胸を握り、指先で転ばしていく。薄桃色の突起は膨らんで、ディルの口の中で遊ばれた。そしてほどよい弾力のお腹を伝うと、舌もその後を追っていく。


「真っ白な肌、艶やかな体…穢れの知らないお姉さまを汚していると思うとすごく興奮します」

「やめ……も、いいでしょうっ……私の体を触って、何が楽しいの……?」


ぺちゃっとお腹を舐めて味わうように舌を動かす。上に下に生々しい感触がすると、イリスはびくんと肩を上げた。

昨日まで妹のように思っていた存在がこんな姿で自分を襲っていると思うと鳥肌が立つ。心のどこかで、女の子のように思っていたのかもしれない。こんな性の干渉をすることになろうとは考えたこともなかった。


ディルは胸を扱くと二本の指で乳首を触るのも忘れず唾液をつけ何度も擦る。


「馬鹿ですね。お姉さまほどの人が乱れゆく様をこの目で見たい……その男の本能をまるで理解していない。王女の中でもとびぬけて美しいのに」

「こんなときでも、アぁッ…冗談を、言うのね……っ、やぁ…!」

イリスは涙をあふれさせ、快感から逃れるために顔を背けた。


「今はこんな口調でも、私が男だということはお忘れではないでしょう……?私の理性を粉々にしているのは貴方のくせに……っ!」

そうして、一気にズボンを脱がせる。不意打ちで油断したイリスは一瞬遅れて反応する。しかし、ディルの男の力にはかなわない。下着まで器用に脱がせるディルは、無意識のうちに食い入るように見つめていた。イリスはじたばたと暴れて、ディルから逃げようと力を込める。


「やぁっ、あ……そんなっ!見ないで、見ないで……っ」

ぐっと足を押さえて、ディルはふぅ…と熱のこもった息を吹きかける。ひくんひくんと揺れるイリスの秘部は確かに濡れていた。嗚咽をこぼして泣くイリスは羞恥のためか足がぶるぶる痙攣している。細長い足を固定し、ディルは思わず呟いた。


「……綺麗ですね、ココ」

じっと見つめられている。誰にも触れさせたところのない箇所を……ディルに。


「っ……ディル」

もう、どうにかなってしまいそう。


「何も知らない子供のようで。それでも私を求めてひくついている……」

「見ないで…」

イリスは感情を込めてディルを見つめる。が、ディルはなんと舌を出して秘部を一舐めした。


「い、ぁぁ……っなにを!そんな汚いところ…やめ……あっ、ん!」

「汚くなんかないですよ。ホラ、粘膜のような液が漏れてくる…感じている証拠だ」


ペチャ、くちゃ、チュパっ、チュ……そして何度も舐められ、体に甘い刺激が駆け巡る。イリスは耐え切れず、ぎゅっと目を閉じて耐えた。時々我慢できない喘ぎ声が、情けなく口から抜け出していく。

  
「……なんですか、これは?」

ディルがイリスの目の前に濡れた指を持ってきて、冷たい表情のまま静かに尋ねる。イリスは羞恥が込み上げ、ぱっと目をそらして真っ赤になった。その様子に満足気な顔をしたディルはイリスの口に指を突っ込み、舌と唾液に絡ませる。交わる卑猥な音に響くのは悲しみだった。


「んっ、でぃ、ア……」

苦しかった。このまま息をせずに、ディルの痛みをすべて飲み込んだまま果ててしまいたいと強くイリスは思った。


「オイシイですか、自分の汁は?喜んで口にして……誘うように咥えてお姉さまは淫乱ですね?」

すぐそばにあるディルの吐息に、ブルッとイリスの全身が震えた。卑猥な言葉の数々にドクンドクンと体の熱が反応していく。


「ちがっ……これは…ぁっ、も……」

胸をえぐるような思いに耐えきれず、ぐすんぐすんとイリスは涙を流した。ディルは指をイリスの口から離すと耳元で小さく囁いた。



「……覚悟はできてる?偽りのイモウトに犯されるってこと」

「――っ…!」

偽りの、イモウト。そう、私たちは最初から、家族になることなど出来なかった。心のどこかで願っていたのかもしれない。ずっとこのまま、嘘で固められた関係が続けられることを。でも淡い期待は粉々に砕けていくだけだった。


「そんな顔をしても無駄……ずっとこの時を待っていたんだから」

お前を、許すつもりなんて、ないんだよ。

実の姉妹のように思っていた存在は、見たこともないほどの憎悪を抱いていた。その奥に隠される秘密の感情を知ることはなく、イリスは悲しく見つめるだけだった。

 
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