〇〇、とやらをされたらしくて

蓮ヶ崎 漣

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最終章 満足、とやらをされたらしくて

卒業

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 魔族は容赦なくミラを引き裂こうと腕を振り上げた。


「クソガキィィッ!さっきのお返しだ!死ねぇぇぇえっ!」


俺は慌てて呪文を唱える。


「ソリッドウォール!」


「「!?」」


ミラと魔族の間に土壁が出来、その隙にミラを引っ張り隠した。

それとほぼ同時に魔族が土壁を破壊してくる。

すかさず次の呪文を唱えた。


「ソリッドボール!」


破壊された土の塊をそのまま魔族にぶつける。

運良く全ての塊が魔族に当たり多少のダメージを与えた。

魔族が怯んでいるのを見逃さず呪文を唱える。


「エクス・プローション!」


「ぎゃああああっ!!」


魔族は爆発して姿を消した。

ミラの前に行くとミラはだんだん顔を赤くし驚いた顔をして口を開く。


「な、何でここに……失敗したはずない……」


「おう。ちゃんと成功してたぜ」


「なら、何で……」


「何でだと?ミラが強がって戻れなくなってるんじゃないかって思ったからだよ!」


「だ、だからって!いざとなれば学園長やカナエールさんが助けてくれると思ったからシンヤを送ったのに!」


「はぁ?学園長は助けねぇって言ってただろ?」


「馬鹿だな!本当のピンチになったら助けに来るよ!何で学園長は結界魔法使ってたか分かる!?本来僕たちみたいな何の資格もない奴を魔界に連れてくるのは禁じられてるんだ!それを破った挙句、人を見殺しにしたなんてことになったら神格剥奪どころか処刑だよ!だから、どんなに助けないと思ってても助けざるを得ないんだ!その確信がなくちゃ僕だって一人残ったりしないよ!」


「そ、そうなのか?知らなかった……にしても、思ってたより元気だな……」


「元気!?馬鹿言うなよ!高熱で目の前が歪んでクラクラしてるから!シンヤの顔だってまともに認識してないよ!」


「威張って言うことじゃねぇからな!?つーか!そんな状態なら怒鳴るな!大人しくしとけ!」


「五月蝿いな!何だよ、目潰ししてたとは言え一人で倒すとか一人じゃ敵わないとか思った僕がすっごくカッコ悪いじゃん!僕の方が優秀なのに!実戦じゃシンヤに及ばないってこと!?何それ!すっごく腹立つ!!」


「あ、あのな!いきなり文句言われても困るんだよ!それに倒せたのはまぐれだし……」


「喧嘩売ってるの!?買うよ!?」


「売ってないから!買うなよ!って言うか、ミラ、お前、何?熱高いと絡んでくんの?落ち着けって!」


その後、ミラに何も言ってもキーキー怒鳴られるばっかりでついにはミラの目から涙まで零れ始める。


「何でだよ!元の世界に戻りたい癖に迷ってるくらいなら残ればいいんだ!そうすれば誰も悲しまないのに!そんな迷いがあるから一番に習得出来るはずの魔法を習得出来ないんだよ!シンヤにとっては人間界なんてその程度なんだろ!なら、残れよ!!」


俺はミラの言葉に衝撃を受けた。

色んな感情がグルグル回る。

そして、俺は思いっきりミラを一発殴った。


「痛っ!!」


「おう。さっきから黙って聞いてれば言いたい放題言ってくれてんな?迷って何が悪い!母さんのことも心配だしお前らと別れんのも辛いんだよ!迷うくらいなら残れだ?ハッキリ言えよ。ミラが俺に残ってほしいんだろ?」


俺の言葉にミラは驚き動きが止まる。

しばらくしてミラが口を開いた。


「……僕がそう言ったところでシンヤはどうせ人間界に帰るだろ。なら、言うだけ無駄じゃん」


少し落ち着いたのか木に寄りかかりながらミラは俺を見上げる。

俺はそんなミラの態度にため息を吐いた。


「……お前な。泣きながら残れって言っておいてそりゃねぇだろ。熱が高いと本音がポロポロ出てくんのかよ」


「……そうみたいだね。あまり自覚はないけど日頃溜まってる鬱憤が爆発するんじゃない?それより怠い。帰りたい。すっごく疲れた」


「あんだけ怒鳴り散らせばそりゃあ疲れるだろうよ。で?戻る魔力は?」


「……あるけど巧く使えない。つまり、危機を脱した以上、学園長たちの助けは望めないからシンヤが僕を連れて戻るしかないね」


「……何か棘のある言い方だな」


「気のせいだよ。結界魔法がある間に早く帰ろう。周りは魔族でいっぱいなんだから」


ミラの言葉に慌てて周りを見渡す。

すると周りには赤い光が点々とこっちを見ていた。



いつの間にかこんなに集まってたのか……

そりゃそうだよな……

ミラがあんなに怒鳴り散らしてたんだから……

集まらない方がどうかしてる……



俺は心の中でため息を吐くとミラを背負う。

そして、呪文を唱えようとしてあることに気付いた。

俺の動きが止まったことに気付いたのかミラが口を開く。


「シンヤ?どうかしたの?」


「……ミラ。よくよく考えたら俺、まだ転送術成功させてない」


「は?」



そうだよ!

よくよく考えたらさっきのはミラが送ってくれた訳で自分からした訳じゃないんだよ!

つまり、俺だけがまだ習得してないことになる!

なのにいきなり二人とか魔力持つか?

それ以前に成功するか?



俺が不安に思ってることが伝わったのかミラがギュッと俺の首を絞めにかかってきた。


「ぐぇっ!」


「……さっきも言ったけどお前が一番に習得出来るはずの魔法だ。失敗なんか許さない。もし失敗なんかしてみろ?お母さんのところに帰れないと思え?」


首をゆっくり絞めながらそう言うミラに俺は心底恐怖を覚える。

声が出せないので返事の代わりに腕を叩く。

それに気付いたミラは力を緩めてくれた。

俺はゆっくりと意識を集中させる。



そうだよな……

俺には母さんが待ってるんだ。

こんなところで立ち止まってる訳にはいかない。



深呼吸を一回して呪文を唱えた。


「トランスミッション!」


ゆっくり目を開く。

そこにはみんながいた。

そして学園長が口を開く。


「見事諸君らは合格だよ。これで学校ここも安心して卒業出来るね。本当におめでとう」


そう言われながら俺とミラは証明書を受け取った。

ミラは学園長に治してもらう。


「……ありがとうございました」


「どういたしまして。君とは近いうちにまた別の形で会う気がするよ」


「……?どう言う意味ですか?」


「ふふっ、それは秘密だ。私はそれまで楽しみにしているよ。では」


学園長はそう言うとパッと姿を消した。

ミレイはキョトンとしているミラに近寄るとミラの両頬をパンッと叩く。


「痛っ!」


「うふふ、ミーラー?魔界での話なんだけど……言い方ってものがあるでしょー?」


「いひゃいっ!いひゃいって!」


ミレイは笑顔でミラの両頬を叩いた後なのにお構いなしに両頬を引っ張った。

それをアーシャが宥めて止める。

ミラは両頬を押さえながらふんっとミレイにそっぽを向いて謝る気がないことをアピール。

ミレイは当然その態度に腹を立てミラの両頬を再び引っ張ろうとするのをみんなで宥めた。

その後はカナが合格祝いと言ってみんなを家に招待してプチパーティーを開く。

みんなでわいわい騒ぎ合いながらおそらくみんなで過ごす最後の夜を目いっぱい楽しむ。

後からミラにそう言えば聖なる庭ホーリィーガーデンから魔界に来たなら転送術成功してたってことだよねと言われなら俺首絞められた意味なくね……?と内心感動よりもショックを受けたのだった――――
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