異世界製作 〜転生しようと思ったら異世界作る側だった〜

第一章 「村開拓とモブ対抗戦」

第9世 「筒抜け」

　もちろんこの司書は死んでもまた生成すれば良い話だ。
　それがコピーした時の状態で生成されるのか、
　それとも1から子村人として生成されるのか、
どーなるのかは分からない…

　だけど、それがどうであれ、この世界で初めて仲良くなった存在を1度でも失う事が少し怖かった。

　どんな力を持った創造主になっても、"孤独"というものの悲しい力には敵わない。

　その宿敵と戦い続けなければならない俺の重荷を、
少しでも楽にしてくれる人を、俺は大切にしたい。

　それが自分が作ったモブであってもだ。



　まぁ、それに…そんな大層な理由が無くても、
こいつには"心"が見えた。

　物に魂が"生まれる"。

これはあり得ない話だ。
　魂は宿る事はあっても、その場で生まれる事はあり得ない。

　こんな奇跡、世界どうこう以前にほったらかしにできないだろ。



　そんな事を言い訳にして、俺はあっさり、
創造者の力を使った。



　ゾンビを遠ざけ、
あたりの怪物を全て倒した。
　一瞬にして柵を村の周りに生成し、
囲った。
そして、ついでにまた壊れた扉も直した。



　司書はその一瞬の出来事に驚いた顔で言う。
「エ？オマエ、ツヨイ？」

　「ちげぇーよ、俺の力な？まぁ、だけど、ありがとよオマエ。」

こうして俺にはオマエという友ができた。



　そして数日が経った。

　柵ができちまうと平和なもんだ。
「どうだルプ？村を柵で囲えたらこーやって生活していけるだろ？
もう転生者入れて次の世界作っても良いと思わ無いか？

誰がしてくれるのか知らんが…」

　「はい、ヘルプです。
はぁ。まず…普通こんな短い間でそんな簡単に異世界はできませんよ…。」

　今、ため息ついた？
　「おま、答え方簡単になりすぎだろ…」

　「だから、作成では無く攻略が目的なのであれば、
力はあんなに使うなと警告したのに…使いましたね…

まぁ今回の事はおっしゃるように村を囲う事ができれば良かった話ですから、世界も見逃してくれるのでは無いかとわたくしも思いますが…

知らんけど…」

　「え」
今小声で知らんけどって言わなかった？

「このブロック異世界のルールは知りませんが、おま…
オホン。創夢様のおっしゃっていたスレンダードラゴンというものを倒すのでは？」

　「あー、そっか、やっぱ倒さなきゃ転生者は来ないんだな」

　「ルール上、それが当然の話です。
ですが…それを管理してるのはあのおじさまですから…

って言っても、記憶無いんでしたね、創夢様は。
はぁ」

　「あぁ、なんか…ごめんな、お前も苦労してんだな…」

　「とにかく、そのドラゴンを倒して怪物の出現をできるだけ減らすまでは転生者が現れるどころか、
この前話した異世界としての審査さえしてくれないと思ってください。」

　「分かった分かったよ。」

　それはつまり、今から1度も力を使わずに、転生者モードで誠実にスレンダードラゴンを倒したところで、審査する者に、

　この日神の力使ってたよね？
それでクリアできたんでしょ？
じゃあ無しだねーって感じで、

この前使った神の力を審査で指摘されたら、
また1からやり直しってこった。

　「はい、そう言ってますよね？
でもあれはクリアに直結してるようには感じないので、その世界のお方も見逃してくれるのでは？と、
言いましたよね？」

　ん、キレてる？

　「分かったよ、ごめんごめん。
心の中にまで返答するなよ…。」
　まぁそう謝ったものの、これから力を使わないよう気をつける事は無い。

　なぜって、今から何をやっても意味が無いかもしれないんだぞ？
　それならいっそもう力を使いまくってとりあえず世界のもっと深い詳細や原型だけ作っちまったら良いんじゃ無いかって話だ。

　今はまだ、
この世界を俺が作った、というより、
コピーしただけに過ぎないって事だな。
　だから、まだこの世界は完成じゃないってことにして、力を好きに使うんだ。

　「そぉーれに、今はそもそも分からん事が多すぎる。」
そう言い、ベッドに横になると、オマエがどこからか帰ってきた。



◽︎第9話用語解説
・オマエ♂
司書の役職を持った村人。無魂生命体のはずが…。
創夢のこの世界での2人目の友達である。