4 / 32
第一章 怪異の妖術譚
純日本猫の妖怪
しおりを挟む
妖力が並外れて強いと紗世さんに言われたが、イマイチ俺の力がどれほどなのかを把握し切れていない。
明日の仕事__仕事というよりかは修行?__に備えて、実力は分かっておきたい。だが、妖力を測る方法も見当がついていないのでどうしようもできない。
そういえば、妖力ってどんな力なんだ?妖怪に干渉出来るということは座敷童子ちゃんで実証出来たけれど、それ以外の効力が分からない。
狐の妖怪なら狐火、人の心を読む覚という妖怪なら読心術だろうか。俺は妖怪ではないのでその力を使えるかどうかは不明だが、紗世さんに習えば使う事が出来るようになるだろうか。
漫画やアニメでよくある、心の内に眠る力を感じる為にはどうすればいいのだろう?やはり、目を閉じて集中すること?それとも体のどこかに力を集めること?残念ながらオタクではない俺にはぴんとこない。
「…集中。自分の心の奥底を覗くように…俺の力はどんなものなのか…」
よくありがちな、目を閉じて自らの心に問いかけてみた。うむ、よく分からない。しかし、胸の奥、心臓のあたりに温かいものを感じた。ぽかぽかとしていて、そこから熱が広がって、全身を温めているような感覚だ。
この温かいものが血液だと言われたらそこまでだが、藁にも縋りたい俺の心情としては、妖力の源だと信じたい。
妖力の源だと仮定するなら、ここから全身に妖力が供給されているのだろう。感覚的には間違っていない筈だ。
俺の妖力の出所はある程度分かったが、どう使うのかがやはり分からない。集中すればするほど頭は冷えていくが、何かをひらめく予感は全くしない。
「それにしても…俺、またあやかし屋に行けるかなあ…ほとんど座敷童子ちゃんに引っ張られてただけだし、道分かんないや…」
明日の放課後のことを思うと、迷子になる予感しかせず胃がキリキリと痛んだ。
■■■
「おにいちゃん、まってたよ!」
せめて、昨日座敷童子ちゃんと出会った場所までは行こうと足を運んでみた。俺の心配は杞憂だったようで、あの電信柱の横で座敷童子ちゃんが鞠つきをしていた。どうやら俺のことを待っていてくれたみたいだ。
「ごめんね、ずいぶん待った?」
「ううん、だいじょうぶ。それに、このこがいたからさみしくなかったよ。」
座敷童子ちゃんは自分の右手側を見下ろした。釣られて視線をそちらに移すと、白猫がそこにいた。毛並みは紗世さんと同等、いやそれ以上に揃っており、二つの瞳の色は異なっていた。左目が青で、右目が黄色。いわゆるオッドアイというものだろう。初めて見た神秘的な姿に、思わずほぅっと息を漏らす。
しかし、俺は気付いた。
「ねえ、この猫、尻尾が二つ付いてるよ」
尻から伸びる尾の数は、通常の猫ではありえない、二本だった。これもまた、珍しい猫の種類に入るのだろうか?俺の知識が乏しいだけかもしれないが、二つの尻尾がついた猫なんて、化け猫しか知らない。
って、化け猫って…もしかして…
「このこはばけねこだよ。ていうか、ねこまたさんだよ。」
やっぱり、妖怪だったのか。二股の猫だなんて、聞いたことがなかった。妖怪以外で、だけど。
諦めたような呆れたような表情を浮かべてしまう俺の傍で、高めの女性の声が聞こえた。
「そうよ、私は猫又。今年で16歳。」
驚いて背後を振り返るが、誰もいない。左右も見まわしてみるが、女性どころか人っ子一人すらいない。
…となると、残されたのは猫だけだよね…
「…今の声は君?…猫又さん。」
「ええ。猫の妖怪は10歳まで生きると人の言葉を話せるようになるのよ。」
だ、だからか…。
猫から発せられているとは思えないほどに滑舌がよい。加えて、凛として澄んだ声をしているので聞き心地が良い。猫又さんが人間だったら一目ぼれならぬ一聞ぼれしてしまいそうだ。
「それにしても…アンタ、遅すぎるわよ。彼女がどれだけ待っていたと思っているのよ。」
「え、そ、そうだったの!?ごめん、道が分からなくて…」
妖怪とはいえ幼女を待たせてしまったことに責任を感じる。どうやら猫又さんはあやかし屋に住み着いており、なかなか帰ってこない座敷童子ちゃんを心配して一緒に待っていてくれたそうだ。
「まあいいわ。私も座敷童子と遊べて楽しかったし。」
喉の奥をごろごろと鳴らして、上機嫌っぽい雰囲気を漂わせた猫又さん。
それにしても、猫又は日本の妖怪なはずだ。日本の妖怪にしては、外見がやけに海外向きというか、ヨーロッパとか、洋風な建築が似合う風貌をしている。
「猫又さん、外国の猫の血が入ってたりしない?」
「失礼ね。私はれっきとした日本の妖怪で、日本の血しか入ってないわよ」
猫又さんは目を細めて俺の顔を睨んだ。うぅ…見当違いだったようだ。嫌われたんじゃないかと思ってちらりと猫又さんを見てみたが、特に嫌っている素振りはなかった。よかった、安心した。
「なかよくしてくれてうれしいよー!ね、そろそろてんしゅがまちくたびれてるだろうから、はやくいこう?」
座敷童子ちゃんが、人懐っこい可愛い笑顔を俺と猫又さんに向けて、手招きをした。やはり座敷童子ちゃんは店への道が完全に分かっているようだ。幼女の小さな頭の容量の大きさに驚きつつ、猫又さんの歩くスピードに合わせて彼女の後を追った。
明日の仕事__仕事というよりかは修行?__に備えて、実力は分かっておきたい。だが、妖力を測る方法も見当がついていないのでどうしようもできない。
そういえば、妖力ってどんな力なんだ?妖怪に干渉出来るということは座敷童子ちゃんで実証出来たけれど、それ以外の効力が分からない。
狐の妖怪なら狐火、人の心を読む覚という妖怪なら読心術だろうか。俺は妖怪ではないのでその力を使えるかどうかは不明だが、紗世さんに習えば使う事が出来るようになるだろうか。
漫画やアニメでよくある、心の内に眠る力を感じる為にはどうすればいいのだろう?やはり、目を閉じて集中すること?それとも体のどこかに力を集めること?残念ながらオタクではない俺にはぴんとこない。
「…集中。自分の心の奥底を覗くように…俺の力はどんなものなのか…」
よくありがちな、目を閉じて自らの心に問いかけてみた。うむ、よく分からない。しかし、胸の奥、心臓のあたりに温かいものを感じた。ぽかぽかとしていて、そこから熱が広がって、全身を温めているような感覚だ。
この温かいものが血液だと言われたらそこまでだが、藁にも縋りたい俺の心情としては、妖力の源だと信じたい。
妖力の源だと仮定するなら、ここから全身に妖力が供給されているのだろう。感覚的には間違っていない筈だ。
俺の妖力の出所はある程度分かったが、どう使うのかがやはり分からない。集中すればするほど頭は冷えていくが、何かをひらめく予感は全くしない。
「それにしても…俺、またあやかし屋に行けるかなあ…ほとんど座敷童子ちゃんに引っ張られてただけだし、道分かんないや…」
明日の放課後のことを思うと、迷子になる予感しかせず胃がキリキリと痛んだ。
■■■
「おにいちゃん、まってたよ!」
せめて、昨日座敷童子ちゃんと出会った場所までは行こうと足を運んでみた。俺の心配は杞憂だったようで、あの電信柱の横で座敷童子ちゃんが鞠つきをしていた。どうやら俺のことを待っていてくれたみたいだ。
「ごめんね、ずいぶん待った?」
「ううん、だいじょうぶ。それに、このこがいたからさみしくなかったよ。」
座敷童子ちゃんは自分の右手側を見下ろした。釣られて視線をそちらに移すと、白猫がそこにいた。毛並みは紗世さんと同等、いやそれ以上に揃っており、二つの瞳の色は異なっていた。左目が青で、右目が黄色。いわゆるオッドアイというものだろう。初めて見た神秘的な姿に、思わずほぅっと息を漏らす。
しかし、俺は気付いた。
「ねえ、この猫、尻尾が二つ付いてるよ」
尻から伸びる尾の数は、通常の猫ではありえない、二本だった。これもまた、珍しい猫の種類に入るのだろうか?俺の知識が乏しいだけかもしれないが、二つの尻尾がついた猫なんて、化け猫しか知らない。
って、化け猫って…もしかして…
「このこはばけねこだよ。ていうか、ねこまたさんだよ。」
やっぱり、妖怪だったのか。二股の猫だなんて、聞いたことがなかった。妖怪以外で、だけど。
諦めたような呆れたような表情を浮かべてしまう俺の傍で、高めの女性の声が聞こえた。
「そうよ、私は猫又。今年で16歳。」
驚いて背後を振り返るが、誰もいない。左右も見まわしてみるが、女性どころか人っ子一人すらいない。
…となると、残されたのは猫だけだよね…
「…今の声は君?…猫又さん。」
「ええ。猫の妖怪は10歳まで生きると人の言葉を話せるようになるのよ。」
だ、だからか…。
猫から発せられているとは思えないほどに滑舌がよい。加えて、凛として澄んだ声をしているので聞き心地が良い。猫又さんが人間だったら一目ぼれならぬ一聞ぼれしてしまいそうだ。
「それにしても…アンタ、遅すぎるわよ。彼女がどれだけ待っていたと思っているのよ。」
「え、そ、そうだったの!?ごめん、道が分からなくて…」
妖怪とはいえ幼女を待たせてしまったことに責任を感じる。どうやら猫又さんはあやかし屋に住み着いており、なかなか帰ってこない座敷童子ちゃんを心配して一緒に待っていてくれたそうだ。
「まあいいわ。私も座敷童子と遊べて楽しかったし。」
喉の奥をごろごろと鳴らして、上機嫌っぽい雰囲気を漂わせた猫又さん。
それにしても、猫又は日本の妖怪なはずだ。日本の妖怪にしては、外見がやけに海外向きというか、ヨーロッパとか、洋風な建築が似合う風貌をしている。
「猫又さん、外国の猫の血が入ってたりしない?」
「失礼ね。私はれっきとした日本の妖怪で、日本の血しか入ってないわよ」
猫又さんは目を細めて俺の顔を睨んだ。うぅ…見当違いだったようだ。嫌われたんじゃないかと思ってちらりと猫又さんを見てみたが、特に嫌っている素振りはなかった。よかった、安心した。
「なかよくしてくれてうれしいよー!ね、そろそろてんしゅがまちくたびれてるだろうから、はやくいこう?」
座敷童子ちゃんが、人懐っこい可愛い笑顔を俺と猫又さんに向けて、手招きをした。やはり座敷童子ちゃんは店への道が完全に分かっているようだ。幼女の小さな頭の容量の大きさに驚きつつ、猫又さんの歩くスピードに合わせて彼女の後を追った。
0
あなたにおすすめの小説
同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。
ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。
真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。
引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。
偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。
ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。
優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。
大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
母の下着 タンスと洗濯籠の秘密
MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。
颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。
物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。
しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。
センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。
これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。
どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる