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彷徨える図書館
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「ふう……」
昨日は、家族会議(お祖父様抜き)が紛糾したわねえ……。両親が私の婚約者をサッサと決めないから悪いだの、お姉様がお嫁に行った時点でどうにかしろ、だの……。
先送りしていた問題が表に出てきてしまったわ。
だからと言って、婚約者がフィクションの人物は無いでしょう……。
いえ、居るには居たのよ。私にもね。
ただ、随分歳上のご令嬢が婚約者を亡くされて、その穴埋め政略で他へ婿入りされたものだから……。
当時は気楽な次女だったし、そのうち見付かるだろうと高を括っていたのね。
元々そんなに交流も無かったものだし。
……面倒だわあ。
ピクニックにでも行きたいわ。でも、此処は領地では無いしねえ。せいぜい外周公園かしら。
手元のベルを鳴らすと、侍女のニニが直ぐにやってきたみたい。
「お嬢様、如何なさいました?」
「図書館で本を借りて、外周公園へ散歩に行くわ」
「畏まりました」
モヤモヤ晴らしには……お庭で緩いドレス装備でダラダラしたいものだけれど。
流石に今日は両親も祖父母もガッツリ居られるものね。流石に怒られるわ。
街を彷徨くにしても、アカデミックな事でも偽装しないと……。
ああー、気楽な立場のつい去年までが懐かしいわ!
外歩き用のドレスが辛いわ……。口数少なく大人しくしていなければいけない環境が、とてもストレス……!
まあ、元々そんなに外でベラベラと喋らないのだけれど。
「いっその事、低位の貴族と平民の通う学校とやらに通っていれば良かったかしら……?」
「まあ、お嬢様」
「平民と貴族の恋人? なんて面白そうよね」
よく乙女小説に有る、学校とやら。
私は家庭教師が要るから通わないけれど……楽しそうよね。平民が王子殿下を籠絡したり、階段から身を投げたりするのかしら。
……考えただけで楽しそう。滅茶苦茶傍から観ていたいわ。
「我が国では、平民が低位とはいえ貴族を誑かしたら死罪ですよお嬢様。学びの場にそんな質の悪い者は不要かと」
「そうよね……。フィクションだから面白いのよね」
ダラダラとお茶を頂きながら、面白い見世物を学びながら見物出来る……。
楽しそうよね……。侯爵家でなければやってみたかったわ。
それにしても、今家では婚約者の見繕いで大騒ぎでしょうね。
出来るだけ楽そうな相手だと良いのだけれど。
「図書館へ着きましたわね」
「そうね……。待機しておいて」
「畏まりました」
普通の令嬢なら、本を届けさせるのだろうけれど……。
私、本が好きなのよね。
この王立図書館へよくお祖父様に連れられて来たものだわ……。お祖母様にもよく外周庭園へお連れ頂いたけど。
私って、結構ジジババコンプレックスかしら。
「……! 前伯爵夫人が仰って! わたくしの言うことが……!」
「ですが、……!」
まあ、図書館でモメてる御婦人方が……。あっ、あの眉毛が鋭角で瞼が金色とピンクのストライプに光り輝く合わせ技メイクの方は……! 嫁イビりで3人のご令嬢を追い出した鬼義母中の鬼! いえ、イビゴロス前公爵夫人では?
……何故図書館にあのオニババ……いえ、ご夫人が。
関わりたくないわね。速やかに移動しなきゃ。
……図書館は静かね……。耳を澄まさなければ、外界の出来事は消え失せたよう。
旧い本から新しい本まで整然と並ぶ本棚が迷宮のようだわ。何をお借りしようかしら。
そう言えば、お祖父様の推し英雄も、迷宮を彷徨ったのかしら。
魔物とか魔女とかと戦っていたそうだものね。
今でも魔物は少し居るけれど……有り難いことに王都にまでは押し寄せていないし。魔物図鑑もいいけれど、冒険者の小説もいいかしらね。
……? 靴に砂が……。
変ね。図書館にこんな砂利道の廊下が有ったかしら。
ボケっと歩いていたら、カーテン? にぶつかったわ。
何故こんな道の真ん中にカーテンが。随分目地の荒いカーテンね。
蔵書にお金をかける為に節約しているのかしら。
それにしても、此処は何処かしら。随分奥まで入り込んでしまったわ。ツタが壁に這っているし……間違えて外に出てしまったかしら? 戻った方が……?
「……だ、誰だ?」
「? 司書の方かしら」
あら、灯り。……誰か居られるみたいね。
良かったわ。
「あの、迷ってしまって……」
ボンヤリと浮かび上がったのは……黒い鎧。
騎士の方?
「な、なんでこんな所に姫君が……」
「はい? 私は王女殿下では有りませんが……」
そもそも我が国には王子殿下ばかりで、王女殿下はおられませんものね……。勘違いかしら。余所の国の方?
……何だかあの方のお召しの鎧、古めかしいわね。
昨日は、家族会議(お祖父様抜き)が紛糾したわねえ……。両親が私の婚約者をサッサと決めないから悪いだの、お姉様がお嫁に行った時点でどうにかしろ、だの……。
先送りしていた問題が表に出てきてしまったわ。
だからと言って、婚約者がフィクションの人物は無いでしょう……。
いえ、居るには居たのよ。私にもね。
ただ、随分歳上のご令嬢が婚約者を亡くされて、その穴埋め政略で他へ婿入りされたものだから……。
当時は気楽な次女だったし、そのうち見付かるだろうと高を括っていたのね。
元々そんなに交流も無かったものだし。
……面倒だわあ。
ピクニックにでも行きたいわ。でも、此処は領地では無いしねえ。せいぜい外周公園かしら。
手元のベルを鳴らすと、侍女のニニが直ぐにやってきたみたい。
「お嬢様、如何なさいました?」
「図書館で本を借りて、外周公園へ散歩に行くわ」
「畏まりました」
モヤモヤ晴らしには……お庭で緩いドレス装備でダラダラしたいものだけれど。
流石に今日は両親も祖父母もガッツリ居られるものね。流石に怒られるわ。
街を彷徨くにしても、アカデミックな事でも偽装しないと……。
ああー、気楽な立場のつい去年までが懐かしいわ!
外歩き用のドレスが辛いわ……。口数少なく大人しくしていなければいけない環境が、とてもストレス……!
まあ、元々そんなに外でベラベラと喋らないのだけれど。
「いっその事、低位の貴族と平民の通う学校とやらに通っていれば良かったかしら……?」
「まあ、お嬢様」
「平民と貴族の恋人? なんて面白そうよね」
よく乙女小説に有る、学校とやら。
私は家庭教師が要るから通わないけれど……楽しそうよね。平民が王子殿下を籠絡したり、階段から身を投げたりするのかしら。
……考えただけで楽しそう。滅茶苦茶傍から観ていたいわ。
「我が国では、平民が低位とはいえ貴族を誑かしたら死罪ですよお嬢様。学びの場にそんな質の悪い者は不要かと」
「そうよね……。フィクションだから面白いのよね」
ダラダラとお茶を頂きながら、面白い見世物を学びながら見物出来る……。
楽しそうよね……。侯爵家でなければやってみたかったわ。
それにしても、今家では婚約者の見繕いで大騒ぎでしょうね。
出来るだけ楽そうな相手だと良いのだけれど。
「図書館へ着きましたわね」
「そうね……。待機しておいて」
「畏まりました」
普通の令嬢なら、本を届けさせるのだろうけれど……。
私、本が好きなのよね。
この王立図書館へよくお祖父様に連れられて来たものだわ……。お祖母様にもよく外周庭園へお連れ頂いたけど。
私って、結構ジジババコンプレックスかしら。
「……! 前伯爵夫人が仰って! わたくしの言うことが……!」
「ですが、……!」
まあ、図書館でモメてる御婦人方が……。あっ、あの眉毛が鋭角で瞼が金色とピンクのストライプに光り輝く合わせ技メイクの方は……! 嫁イビりで3人のご令嬢を追い出した鬼義母中の鬼! いえ、イビゴロス前公爵夫人では?
……何故図書館にあのオニババ……いえ、ご夫人が。
関わりたくないわね。速やかに移動しなきゃ。
……図書館は静かね……。耳を澄まさなければ、外界の出来事は消え失せたよう。
旧い本から新しい本まで整然と並ぶ本棚が迷宮のようだわ。何をお借りしようかしら。
そう言えば、お祖父様の推し英雄も、迷宮を彷徨ったのかしら。
魔物とか魔女とかと戦っていたそうだものね。
今でも魔物は少し居るけれど……有り難いことに王都にまでは押し寄せていないし。魔物図鑑もいいけれど、冒険者の小説もいいかしらね。
……? 靴に砂が……。
変ね。図書館にこんな砂利道の廊下が有ったかしら。
ボケっと歩いていたら、カーテン? にぶつかったわ。
何故こんな道の真ん中にカーテンが。随分目地の荒いカーテンね。
蔵書にお金をかける為に節約しているのかしら。
それにしても、此処は何処かしら。随分奥まで入り込んでしまったわ。ツタが壁に這っているし……間違えて外に出てしまったかしら? 戻った方が……?
「……だ、誰だ?」
「? 司書の方かしら」
あら、灯り。……誰か居られるみたいね。
良かったわ。
「あの、迷ってしまって……」
ボンヤリと浮かび上がったのは……黒い鎧。
騎士の方?
「な、なんでこんな所に姫君が……」
「はい? 私は王女殿下では有りませんが……」
そもそも我が国には王子殿下ばかりで、王女殿下はおられませんものね……。勘違いかしら。余所の国の方?
……何だかあの方のお召しの鎧、古めかしいわね。
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