置いていかれた真っ黒騎士様、年の差婚を致しましょう

宇和マチカ

文字の大きさ
4 / 9

黒い鎧の少年と出会う

しおりを挟む
 目の前の殿方は……松明を掲げておられるわ。よく見れば、結構若い? よく見れば……背丈は有るけれど、成人男性よりもかなり……12、3歳くらいかしら。ヒョロっとした少年だわ。
 格好は……よく見え辛いけれど、滅茶苦茶時代遅れな黒い鎧に、黒い髪に黒い瞳……かしら。顔に小さな傷が痛々しいわね。
 しかし、何故鎧。まさか、ご親族のお古とかを着ているのかしら? 
 図書館の地下に古書の研究室みたいなものが併設されていると聞いたから……。研究者の助手的な立場かしらね。

 でも、図書館で働いている割に埃っぽさが……少年冒険者みたいな風体? 本での知識のみで、リアルでは見たことはないけれど。 
 いえ、図書館で冒険者はないわね? そんな訳無いわよね。
 研究の為にコスプレしてるだけよね、きっと。
 しかし、こんな少年が図書館で働いているとは……。

「あの、はじめまして?」
「……と、囚われの姫君……てヤツ?」
「囚われ……。
 じ、自主的に歩いて参りましたが」

 何なら図書館の裏に馬車を待たせているし。
 ……でも、何だか……図書館だと思えないくらい湿っぽいわ。
 何時の間にか立入禁止の地下に迷い込んだのかしら?

 しかし、滅茶苦茶見てくるわね、この子。そんなに私ってば不審者かしら……。
 立入禁止の場に迷い込んだのだったら、確かに不審よね。どうしましょう。どう誤魔化したものかしら。

「あの、この場に迷い込んで本当に申し訳御座いません。怪しいものでは御座いません。アミエッテと申します」
「あ、ヴァンです。いや、ココ俺の家じゃないし……」


 上司に指示を仰ごうか迷われている感じかしら……。
 困ったわね……。
 無理矢理隙をついて抜け出してきたから、怒られるのは困るわ……。
 何かこう、誤魔化せそうなアイテムは持っていたかしら。袖の下的な……。
 ああ駄目だわ。小銭入れを置いてきてしまったわ。
 ポシェットを探っても、ハンカチに手鏡、他は何も……あっ! 

「あ、あの……此処で何してんすか?」
「え、あ、あの! 本当に私、怪しいものでは!」

 ええい、何かこう……良いものではないけれど! さっき手に触れた紙で手を切った用の傷薬位しかないわ!
 貝の細工のあるコンパクトタイプの女性物だけど、きっと図書館の人なら役立てる筈!
 見逃して貰い用の小銭か焼き菓子でも持ち歩くべきだったわ! 明日からそうしましょう!

「あの、これ差し上げますから、私のことは黙っていらして!! 単なるドジで迷い込んだだけですの!」
「は、はあ? え、ココってドジで来れるものか? まさか、アンタは魔女姫……」
「ま、魔女!? 私が!? とんでもない!」

 私が魔女って……そんなエリート職業に就けるような魔力持ちじゃないわよ! 昔の小説なんかでは悪さしてたみたいだけれど、今は国家公務員だものね。
 でも、まさか此処ってそんなに魔術関連の厳重な所なの!? ど、どうしましょう! 私の魔力なんて底辺だと鑑定されているのに! まさか、変に底辺なせいで防犯魔術の誤作動!?
 ああ、面倒な事になってしまったわ! こういうセキュリティに何故か昔からよく引っかかるのよ!

「こ、コレ、お詫びに差し上げます!
 あなたのお顔に負われたような小さな傷によく効きますのよ! 大きな傷は……微妙な安全な薬ですわよ! あ、無理なさらず治癒師かお医者にお掛かりになってね!」

 胡散臭い科白だったけれど丸め込むのに精一杯で、手甲越しの手に押し付けてしまったわ。背丈はヒョロいけれど、まだまだ華奢な手ね。
 しかし、細かいコスプレだわ……。随分実用的な物なのね。きっと名のある研究対象な鎧なんだわ。知らないけれど。

「えっ、あ、あの!」
「ご機嫌よう!!」

 もと来た道を、速やかに戻る! それできっと帰れる!
 裾をからげて踏みそうになりながらも、走って走ったら……。

「えっ、お嬢様……」
「あら?」
「お早いお戻りですね。5分と経っておりませんが。託けて頂ければ、お迎えに参りましたのに」

 目の前がう明るくなったと思ったら。
 目の前にはメイドのニニと、御者のサニーが馬車の前で不思議そうに私を見ていたの。

 そう、此処は……。……玄関を出て、5グルっと回らないと着かない図書館専用の馬車停。
 ……あの、地下は何処に繋がっていたのかしら?



しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

虐げられた私、ずっと一緒にいた精霊たちの王に愛される〜私が愛し子だなんて知りませんでした〜

ボタニカルseven
恋愛
「今までお世話になりました」 あぁ、これでやっとこの人たちから解放されるんだ。 「セレス様、行きましょう」 「ありがとう、リリ」 私はセレス・バートレイ。四歳の頃に母親がなくなり父がしばらく家を留守にしたかと思えば愛人とその子供を連れてきた。私はそれから今までその愛人と子供に虐げられてきた。心が折れそうになった時だってあったが、いつも隣で見守ってきてくれた精霊たちが支えてくれた。 ある日精霊たちはいった。 「あの方が迎えに来る」 カクヨム/なろう様でも連載させていただいております

死に戻ったら、私だけ幼児化していた件について

えくれあ
恋愛
セラフィーナは6歳の時に王太子となるアルバートとの婚約が決まって以降、ずっと王家のために身を粉にして努力を続けてきたつもりだった。 しかしながら、いつしか悪女と呼ばれるようになり、18歳の時にアルバートから婚約解消を告げられてしまう。 その後、死を迎えたはずのセラフィーナは、目を覚ますと2年前に戻っていた。だが、周囲の人間はセラフィーナが死ぬ2年前の姿と相違ないのに、セラフィーナだけは同じ年齢だったはずのアルバートより10歳も幼い6歳の姿だった。 死を迎える前と同じこともあれば、年齢が異なるが故に違うこともある。 戸惑いを覚えながらも、死んでしまったためにできなかったことを今度こそ、とセラフィーナは心に誓うのだった。

もう、愛はいりませんから

さくたろう
恋愛
 ローザリア王国公爵令嬢ルクレティア・フォルセティに、ある日突然、未来の記憶が蘇った。  王子リーヴァイの愛する人を殺害しようとした罪により投獄され、兄に差し出された毒を煽り死んだ記憶だ。それが未来の出来事だと確信したルクレティアは、そんな未来に怯えるが、その記憶のおかしさに気がつき、謎を探ることにする。そうしてやがて、ある人のひたむきな愛を知ることになる。

前世の記憶しかない元侯爵令嬢は、訳あり大公殿下のお気に入り。(注:期間限定)

miy
恋愛
(※長編なため、少しネタバレを含みます) ある日目覚めたら、そこは見たことも聞いたこともない…異国でした。 ここは、どうやら転生後の人生。 私は大貴族の令嬢レティシア17歳…らしいのですが…全く記憶にございません。 有り難いことに言葉は理解できるし、読み書きも問題なし。 でも、見知らぬ世界で貴族生活?いやいや…私は平凡な日本人のようですよ?…無理です。 “前世の記憶”として目覚めた私は、現世の“レティシアの身体”で…静かな庶民生活を始める。 そんな私の前に、一人の貴族男性が現れた。 ちょっと?訳ありな彼が、私を…自分の『唯一の女性』であると誤解してしまったことから、庶民生活が一変してしまう。 高い身分の彼に関わってしまった私は、元いた国を飛び出して魔法の国で暮らすことになるのです。 大公殿下、大魔術師、聖女や神獣…等など…いろんな人との出会いを経て『レティシア』が自分らしく生きていく。 という、少々…長いお話です。 鈍感なレティシアが、大公殿下からの熱い眼差しに気付くのはいつなのでしょうか…? ※安定のご都合主義、独自の世界観です。お許し下さい。 ※ストーリーの進度は遅めかと思われます。 ※現在、不定期にて公開中です。よろしくお願い致します。 公開予定日を最新話に記載しておりますが、長期休載の場合はこちらでもお知らせをさせて頂きます。 ※ド素人の書いた3作目です。まだまだ優しい目で見て頂けると嬉しいです。よろしくお願いします。 ※初公開から2年が過ぎました。少しでも良い作品に、読みやすく…と、時間があれば順次手直し(改稿)をしていく予定でおります。(現在、146話辺りまで手直し作業中) ※章の区切りを変更致しました。(9/22更新)

地味な私では退屈だったのでしょう? 最強聖騎士団長の溺愛妃になったので、元婚約者はどうぞお好きに

有賀冬馬
恋愛
「君と一緒にいると退屈だ」――そう言って、婚約者の伯爵令息カイル様は、私を捨てた。 選んだのは、華やかで社交的な公爵令嬢。 地味で無口な私には、誰も見向きもしない……そう思っていたのに。 失意のまま辺境へ向かった私が出会ったのは、偶然にも国中の騎士の頂点に立つ、最強の聖騎士団長でした。 「君は、僕にとってかけがえのない存在だ」 彼の優しさに触れ、私の世界は色づき始める。 そして、私は彼の正妃として王都へ……

侯爵夫人のハズですが、完全に無視されています

猫枕
恋愛
伯爵令嬢のシンディーは学園を卒業と同時にキャッシュ侯爵家に嫁がされた。 しかし婚姻から4年、旦那様に会ったのは一度きり、大きなお屋敷の端っこにある離れに住むように言われ、勝手な外出も禁じられている。 本宅にはシンディーの偽物が奥様と呼ばれて暮らしているらしい。 盛大な結婚式が行われたというがシンディーは出席していないし、今年3才になる息子がいるというが、もちろん産んだ覚えもない。

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

追放された悪役令嬢は辺境にて隠し子を養育する

3ツ月 葵(ミツヅキ アオイ)
恋愛
 婚約者である王太子からの突然の断罪!  それは自分の婚約者を奪おうとする義妹に嫉妬してイジメをしていたエステルを糾弾するものだった。  しかしこれは義妹に仕組まれた罠であったのだ。  味方のいないエステルは理不尽にも王城の敷地の端にある粗末な離れへと幽閉される。 「あぁ……。私は一生涯ここから出ることは叶わず、この場所で独り朽ち果ててしまうのね」  エステルは絶望の中で高い塀からのぞく狭い空を見上げた。  そこでの生活も数ヵ月が経って落ち着いてきた頃に突然の来訪者が。 「お姉様。ここから出してさし上げましょうか? そのかわり……」  義妹はエステルに悪魔の様な契約を押し付けようとしてくるのであった。

処理中です...