置いていかれた真っ黒騎士様、年の差婚を致しましょう

宇和マチカ

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早くもない再会

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「……何か借りてくるんだったわ」

 夜も更けて……後悔してしまうわね。
 帰っても、お祖父様のボケ疑惑に未だ紛糾していたわ。

「ガキの癖が強すぎる父親がボケ!
 少女趣味な母親の件でも僕がどれだけ世間に……あああ!」
「旦那様、し、しっかりなさって!」

 お父様とお母様が騒いでいるわね。
 今顔を出したらブーブー何か文句を言われそう。夕食まで昼寝でもしたい所だけれど……。
 お祖父様の書庫から何か持ってこようかしら。

 でも、何だか面倒で……、眠くなってきたわ。
 慣れない勉強ばかりで疲れたもの……。

「……」
「!? ……!」
「え?」

 窓の外が何だか騒がしいわね。
 さてはお祖父様が脱走されたとか……。
 眠いわ……。

 でも、ランプの光が眩しくて……。……ランプ?
 今、昼間よ? 曇り空でもないし……。侍女は未だ火を入れに来ていないわよね? 
 では、この目を照らす光は……。

「……また、居た」
「えっ?」

 その、掠れた声は……。
 黒い髪に、黒い瞳……。そして、体に添わない黒い鎧の少年だわ。お名前は、ヴァン。そう、ヴァン少年。

「まあ……また、お会いしましたわね。
 さっきぶりですかしら」
「さっき!? この前から半年は経ってる!」
「え?」

 ど、どういう事かしら? そう言えば、ヒョロっとした少年の体が少し成長してる、かしら? 揺らぐ松明の灯りでは不確かですけど。
 それに周りをよく見れば……湿った土に、壁にはツタ……。
 ど、洞窟?
 私、また見知らぬ場所に……歩いてきてしまったの?
 王都にこんな場所有ったかしら。まさか、我が家の庭の中に洞窟風の場所が急に増設されたかしら? 
 花壇の為に盛り土はして有った気がするけれど。

「嫌だわ……。夢遊病なのかしら、私」
「む、夢遊病……で、こんな所まで。やはり、魔女姫なんだな」
「ですから、その魔女では御座いませんってば。それに、お姫様でも御座いません」
「そんなに可愛い顔して膨れても……怪しいもんは怪しい」
「……」

 まあ! 幼い割に淑女への賛辞がお上手!
 そう、綺麗より可愛いって言われたいタイプですの。末っ子ですから、ふとした時にチヤホヤされるの大好きですわ!

「そ、そんな潤んだ目で見られても……」
「まあ、お見苦しくて申し訳ありません。
 ちょっと埃アレルギー気味なんですのよね」
「魔女姫なのに……アレルギーとか有るのか。治せないなんて世知辛いな」
「ですから、魔女ではありませんってば!」

 何を以てして魔女だと言い張られるのかしら、このヴァン少年は。頑固ですわね。チート能力皆無、との本人の申告を信じて頂きたいわ。

「急に現れるのって、レベルの高い魔法使いか魔女だ」
「そんな国家資格持ちみたいな技能はからっきしですのよ」
「そんな事ない。アンタ……」
「アミエッテですわ。アミアとかエッテとか呼ばれております」
「……魔女姫を、軽々しく呼んだら不敬だろ」
「……其処まで偉くない其の辺の者ですので、軽々しくどうぞ」

 其処までお伝えしてるのに、鼻を赤くしてそっぽ向かれてしまいましたわね。
 照れておられるのかしら。
 同世代にやられると、フル無視して置いていきたい所ですが、ヴァン少年ではとてもお可愛らしい。

「坊っちゃんみたいな事を言うよな」
「お友達ですか?」
「とんでもない! お仕えしてる方だよ。偉い人の息子なんだけど……俺に何故か構ってくださるんだ」

 その坊っちゃんとやらも、ヴァン少年がお気に召したのでしょうね。
 分かりますわ。ふとした儚い表情ですとか、不器用そうな感じとか。出会ったばかりですが、頷きますわ。
 放っておけない感じが致しますもの。ちょっと坊っちゃんと熱い握手を交わせそうかもしれませんわね。

「そう言えば……あの薬、役に立った。返そうと思ってたけど、今日は持ってきてなくて」
「まあ、お使い頂けまして?」
「わっ!」

 どれどれ。
 あら、綺麗に跡もなく治ってますわ。薬の効能+若さの勝利ですわね。

「ち、近……。いい匂いする……」
「いい匂い? まあ、何処かでお夕食の仕度でもしてるのかしら?」

 つまり、此処は何処かのお夕食の仕度の香りが届くような場所……。人里離れた場所まで夢遊病しなくて良かったですわ。
 この洞窟風な場所から、ちゃんと帰れると良いのだけれど。

「アミア、迷子なら俺と一緒に来る?」
「そうさせて頂こうかしら……」

 この布の室内履きでは、ちょっと歩きづらいですわね。
 しかし、何処なのかしら此方は。
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