14 / 26
鉛の瞼と来訪者様
しおりを挟む
「……」
酷い顔色と瞼ですわね。今年一番浮腫んでますわ……。
泣きまくって寝落ち、だなんて幾つぶりかしら。……頭を揉めばマシになる……って聞きましたけれど。
「お嬢様、お食事は如何なさいますか?」
「あの……」
昨日までの私よりも上等なお仕着せの侍女さんが聞いてくる。
どう返事するのが正解なのか分からず、返答に困っていると……。
ごぎゅーーーん、と。死にたい位の轟音が響き渡しました。
「……こ、これは、その」
……凄まじくお腹が鳴ってしまいました。………………何で、今……こんな……こんな!!
い、何時もは違いますのに!! こんな、空腹でも此処までは!!
「あらま、お早めにお持ちしますわね」
「お、あのその、ええと!! そんな、お食事なんて……私は」
「お待ちくださいませ」
お代をどうお支払したら宜しいのおお⁉
それに、お父様はどちらに⁉ そもそも……あの話は本当に、真実⁉ 盛大に不敬なドッキリでは無くて⁉
……と思っている間に……やってきましたわ。
軽食と称された豪華でボリュームたっぷりのお野菜や鶏肉の解された具のスープに柔らかなパンに挟まれた濃いめのお味付けのお肉と野菜のサンドイッチに、瑞々しいサクランボに苺……。
……王宮で頂いた並みに凄いお食事でしたわ。最早これが最後の晩餐でも宜しいですわね……。
……そして、わんさかお花が植わったお庭を眺められるバルコニーで、ボケッとする更なる贅沢を頂きまして……。
……良いことが起きすぎて、最早本当に死期か夢オチを悟りますわね。夢オチであった方が宜しいのか宜しくないのか……。
「シェリカ、目が覚めたかなあ」
「……お父様……何だか薬草臭いですわね」
後ろから現れたのは……黄色の髪が地味で、お服も安っぽい何時ものお父様でした。
私がテンパっている間、別室で湿布を貼っていたらしいと伺ってちょっとコケそうになりましたけれど。
本当にどうしようもないお父様。ですが……。
「御免ね、シェリカ」
「いいえ。よく考えれば……多少の苦労は致しましたが、罪人のように虐げられて暮らしていた訳でもないのに大袈裟に泣いてしまいました。
お父様に文句を申し上げて、此方こそ御免なさい」
「お前は良い子に育ったね」
よしよし、とお父様の手が私の青と黄色の混じる、斑な頭を撫でてきました。
そう、だってお父様なのです。先程は悲劇のヒロインぽく浸ってしまいましたが、家族ですもの。
許さずに居られましょうか。まあ、ちょっと家族の形を疑ってはしまいましたけれどね。
「それで、1ヶ月程此処に住んで勉強して欲しいんだ、シェリカ」
「はぁ?」
「公爵家の親戚の娘として、ズガタカ侯爵家に嫁ぐ命がその内下るだろうから」
「はあああああ⁉ ……ちょ、ちょっと、待ってください⁉
何で私がお勤め先に嫁ぎますのよ!?」
ちょっと甘くしたらこうですわよ!! 何なんですの⁉ やっぱりお母様の様に毅然としておくべきでしたわ!!
「あれ? あそこの大バカ無能無計画娘がやらかしただろう? 勤労に励む可愛いシェリカを虚仮にして」
……お、お父様?
何だか蟀谷に青筋が立ってますわよ?
背後のノックの音が加わって余計に怖く……ノックの音?
「は、はいい!」
「お話し中失礼致します。お客様がお見えで御座います」
「お客? シェリカと僕に何の用かな」
そ、そうですわね。そもそも私とお父様が公爵家にお邪魔しているなんて限られた方しか知り得ない筈ですのに。
「先触れが来られまして……お嬢様にどうしても謝罪をされたいと……。ホワー伯爵令息がお見えです」
「え? 謝罪?」
「……ふーむ?シェリカ、謝られるようなことをされたのかな?」
「いえ、心当たりが全くゼロですわ……」
一体何か……はっ、謝りたいのはカモフラージュで……逆に謝罪を求めてこられるとかですの⁉ 恥をかかせやがった! 的な⁉
いえ……そんなことされる程、親しくもさせて頂いてませんわね。
ロイド様は……ちょっと癖が強いですが良い方ですしね。ちょっと被害妄想が過ぎましたわ。混乱し過ぎですわね。
「兎に角、会ってみるかい?アポ無しで失礼だが、来たものは仕方ないし」
「そ、そうですわね……」
酷い顔色と瞼ですわね。今年一番浮腫んでますわ……。
泣きまくって寝落ち、だなんて幾つぶりかしら。……頭を揉めばマシになる……って聞きましたけれど。
「お嬢様、お食事は如何なさいますか?」
「あの……」
昨日までの私よりも上等なお仕着せの侍女さんが聞いてくる。
どう返事するのが正解なのか分からず、返答に困っていると……。
ごぎゅーーーん、と。死にたい位の轟音が響き渡しました。
「……こ、これは、その」
……凄まじくお腹が鳴ってしまいました。………………何で、今……こんな……こんな!!
い、何時もは違いますのに!! こんな、空腹でも此処までは!!
「あらま、お早めにお持ちしますわね」
「お、あのその、ええと!! そんな、お食事なんて……私は」
「お待ちくださいませ」
お代をどうお支払したら宜しいのおお⁉
それに、お父様はどちらに⁉ そもそも……あの話は本当に、真実⁉ 盛大に不敬なドッキリでは無くて⁉
……と思っている間に……やってきましたわ。
軽食と称された豪華でボリュームたっぷりのお野菜や鶏肉の解された具のスープに柔らかなパンに挟まれた濃いめのお味付けのお肉と野菜のサンドイッチに、瑞々しいサクランボに苺……。
……王宮で頂いた並みに凄いお食事でしたわ。最早これが最後の晩餐でも宜しいですわね……。
……そして、わんさかお花が植わったお庭を眺められるバルコニーで、ボケッとする更なる贅沢を頂きまして……。
……良いことが起きすぎて、最早本当に死期か夢オチを悟りますわね。夢オチであった方が宜しいのか宜しくないのか……。
「シェリカ、目が覚めたかなあ」
「……お父様……何だか薬草臭いですわね」
後ろから現れたのは……黄色の髪が地味で、お服も安っぽい何時ものお父様でした。
私がテンパっている間、別室で湿布を貼っていたらしいと伺ってちょっとコケそうになりましたけれど。
本当にどうしようもないお父様。ですが……。
「御免ね、シェリカ」
「いいえ。よく考えれば……多少の苦労は致しましたが、罪人のように虐げられて暮らしていた訳でもないのに大袈裟に泣いてしまいました。
お父様に文句を申し上げて、此方こそ御免なさい」
「お前は良い子に育ったね」
よしよし、とお父様の手が私の青と黄色の混じる、斑な頭を撫でてきました。
そう、だってお父様なのです。先程は悲劇のヒロインぽく浸ってしまいましたが、家族ですもの。
許さずに居られましょうか。まあ、ちょっと家族の形を疑ってはしまいましたけれどね。
「それで、1ヶ月程此処に住んで勉強して欲しいんだ、シェリカ」
「はぁ?」
「公爵家の親戚の娘として、ズガタカ侯爵家に嫁ぐ命がその内下るだろうから」
「はあああああ⁉ ……ちょ、ちょっと、待ってください⁉
何で私がお勤め先に嫁ぎますのよ!?」
ちょっと甘くしたらこうですわよ!! 何なんですの⁉ やっぱりお母様の様に毅然としておくべきでしたわ!!
「あれ? あそこの大バカ無能無計画娘がやらかしただろう? 勤労に励む可愛いシェリカを虚仮にして」
……お、お父様?
何だか蟀谷に青筋が立ってますわよ?
背後のノックの音が加わって余計に怖く……ノックの音?
「は、はいい!」
「お話し中失礼致します。お客様がお見えで御座います」
「お客? シェリカと僕に何の用かな」
そ、そうですわね。そもそも私とお父様が公爵家にお邪魔しているなんて限られた方しか知り得ない筈ですのに。
「先触れが来られまして……お嬢様にどうしても謝罪をされたいと……。ホワー伯爵令息がお見えです」
「え? 謝罪?」
「……ふーむ?シェリカ、謝られるようなことをされたのかな?」
「いえ、心当たりが全くゼロですわ……」
一体何か……はっ、謝りたいのはカモフラージュで……逆に謝罪を求めてこられるとかですの⁉ 恥をかかせやがった! 的な⁉
いえ……そんなことされる程、親しくもさせて頂いてませんわね。
ロイド様は……ちょっと癖が強いですが良い方ですしね。ちょっと被害妄想が過ぎましたわ。混乱し過ぎですわね。
「兎に角、会ってみるかい?アポ無しで失礼だが、来たものは仕方ないし」
「そ、そうですわね……」
応援ありがとうございます!
64
お気に入りに追加
305
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる