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ご褒美は頼もしくて可愛い(騎士視点)
ご褒美様は逞しくも可愛い
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「シュガール姫様、我が浅ましき愚弟を木っ端微塵にフッてくださり、誠に恐悦至極で御座います」
世界広しといえども、俺に対して此処まで陰険な口を叩ける兄はひとりしかいない。
と言うか、やっと護衛の交代でふたりきりになれたのに、この横槍!!
「……えっと、貴方……ケキー候子、だったかしら?」
「はい、ケキー侯爵が第一子、フォンジと申します。そこのがめついメッキ男の兄で御座います」
「……」
似てないな、と言う目線を頂きました。
と言うか久々に会ったが、本当に目付きも根性も悪いなこの長兄は!!
「それで、えっと、どういうことかしら?」
「いえ、姫様の回りを彷徨かせるのもそろそろご迷惑かと参りまして、引き取り処分に参りました」
「ひっ、引き取り処分!?」
「何か驚かれる事が御座いますか?」
「い、いやいやいや!だって、パルトフェは王家の覚えもめでたい騎士なのよ⁉」
「その王家の姫様の不興を買ったのですから、処分が妥当かと。そもそも、騎士爵位ごときで領地はありませんし、吹けば飛ぶような身の上です」
「ちょっ、えっ!?」
……あーあまた始まった。
この嫌味、本当に陰険だなあ。
そもそも長兄に俺を処分する権限なんて無い筈だ。
父上や殿下がたが許すわけないだろう。
大体、外国の冒険者が持ち込んで逃がしたワニも駆除したし。あれは本当に迷惑だった。外来種のワニがあんなに強いとは思わなかった。冒険者が退治しながら泣いてたけど、ペットを猫可愛がりして宿屋で鎖を外して逃がすから、ああなるんだ。
頑張って強くなった騎士なのに、何でも屋扱いされてる気がする。
まあ、確かにフラれたけど、姫様に付きまとってるけど。
俺を処分なんて……出来ない、筈だ。
……が、あの目。
長兄の目に殺意しか見えないんだが、嘘だろう?
「だ、だから出世出世言ってるの!?」
「高望みのことですか?
そうですね、家から追い出しても、妻も娶れないような給金にしがみつき、犬小屋のような住まいに住むしか無い男です。姫様の行く手を見苦しくも汚しておりますことお詫び申し上げます」
「パルトフェ!! お前、此処まで言われて悔しくないの⁉」
口を挟んだら長引くんですよ姫様。
あー、テレパシー使えないかな。苦笑いで察して頂けないでしょうか?無理か?
「何時ものことなので」
「何時も!?お前、愛されて当然の末っ子の癖に、お兄様にこんな暴言を許しているの!?」
姫様もなかなかの性格をしておいでだ……。そうか、そういうお考えでは兄王子殿下がたを振り回してもしょうがない……のか?
因みに俺は末っ子でなく、下に妹がいるのだがそれは突っ込むところじゃないな。
何故姫様が俺の前に立ち塞がっておいでなのだろう。
小柄な肩が大変可愛らしい。襟で項が見えないのが残念かな。
「末子であろうが中間子であろうが、その腕っぷしだけ発達した甘ったれた顔だけ野郎は我が家の恥です」
「お前、それでもお兄様なの!?うちのお兄様達はウッカリで女心が分からない顔だけ野郎だけど、お前程じゃないわ!!」
姫様ーー!!うちの陰険長兄は兎も角、お兄様がたへの過激トークはご遠慮ください!!
今王子殿下が誰か通りかからないかヒヤヒヤしたんだが!!出世の話どころではなく、俺が物理的に処断されます!!
シュガール姫様、……恐ろしい方だ。この方の回りを省みない率直な言動を甘くみていた。あー、誰もいないな、ホッ。
「……勿論私は殿下がたとは比べるべくもない俗物で御座います。
が、微力ながらも恥を忍んで、姫様に不快感を与える媚野郎な愚弟を処分に参ったのです」
うーん、毎度毎度長兄は俺を下げる言動しかしないな!
騎士爵を得ようとワニを倒そうとも、一番乗りで嫌味を吹っ掛けてくるこの長兄とは、根本的に合わない。
「パルトフェ!!お前、パーフェクト騎士なんじゃないの!?兄に苛められている不憫な男なのね」
「は?いえ、まあ……」
パーフェクト騎士……!?
……後ろの護衛や侍女達ギャラリーの視線がグサグサ刺さる。恥ずかしいな。最近新聞で目撃した、ビラビラした花屋か甘味処みたいな渾名もかなり恥ずかしいが。
それに、長兄とは騎士宿舎に居るから偶にしか顔を合わせないし、それこそボケッと聞いてるんですよ。
だが、口を挟もうとしても姫様がやけに憤慨してくださっている。
兄は、弟妹を守るべきだと思ってらっしゃるんですね……。ちょっと都合よく使いすぎでは?とも思わなくもないですが、良かったですね!報われましたね!兄王子殿下がた!
「仕方無いわね!お前のような家庭内で不憫な騎士を守ってやるのも、高貴なる王女の仕事かもしれないわ」
「はい?」
何故使命感に燃えておられるのだろう。まるで姫様のバックに炎がメラメラと燃えているようだ。
何がスイッチになったんだろう。身売りしない範囲でご婦人の機嫌を取るのはかなりやってきたが、この前、玉座の間で覚醒された姫様は分からないな。
「シュガール姫様、寧ろソイツは幼少からアホのように甘やかされた顔だけ戯け者です」
「兄なら弟を分からないように、正道へ導きなさい!」
「苦言は幼少から呈しております」
姫様、結構無茶を仰る。長兄の話なんかで導かれたくありません。俺は俺の信念で何とか出世を得るんです。
が、口を挟めない……。敢えて空気を読まないこともある俺としたことが、口を挟めない迫力だ!!
「パルトフェ」
「ハイ!?」
「汚名返上の機会をくれてやるわ! 付いてきなさい! 新聞社の局長が来ているの。
私達の仲の良さを見せ付けてやってもいいわよ!」
何なんだこの展開は。姫様の繊手で袖を引っ張られて……いや、力一杯袖を千切るレベルでブンブン振られている。
お、思っていたのと違う。
俺の未来予想図では、ちょっと強引になった俺に姫様がツンデレながらもデレていき、兄王子殿下がたもお認めになり、代替わり出来る爵位と領地を頂き、姫様と暮らすと言う……。
そう、ちょっとずつお互いを知り、頼れる俺を……。
「いえ姫様お考え直しを。この愚弟には立場にそぐわしい令嬢を娶らせ、領地の片隅に追いやりますので!!」
「は?な、何ですって!?お前、お兄様達と同じ気配を感じると思ったら、やはりブラコンなのね!?それも、構いすぎて嫌がられるタイプの!!」
「は?」
不敬待ったなしの声が思わず漏れてしまった。
「ブ、ブラコン?」
「わざと構わなくて怒った途端構ってくるお兄様達とやりくちがそっくりなのよ!!
行くわよパルトフェ‼ ブラコンは敵だわ! こんなブラコンに付き合ってられないわ! 御褒美になってやるから新聞のトップを飾ってやるの!!」
「姫様!! お考え直しを!! 愚弟をお離しください!!」
姫様は俺が好きだと言うことでいいのだろうか。
……えっと、どういう事に陥ったんだ?
………………。
早まっただろうか。
取り敢えず、長兄がブラコン説は頭から消し去りたい。早急に。
可愛がるなら俺よりゴツいが、次兄にしろ。
手を繋がれているというのに、この頭を占める疑問符は何なんだろう。
多分、この場で姫様と長兄しか解り合っていない。
えっと……まあ、細かいことはいいか!
俺のご褒美様は頼もしくて可愛い!
世界広しといえども、俺に対して此処まで陰険な口を叩ける兄はひとりしかいない。
と言うか、やっと護衛の交代でふたりきりになれたのに、この横槍!!
「……えっと、貴方……ケキー候子、だったかしら?」
「はい、ケキー侯爵が第一子、フォンジと申します。そこのがめついメッキ男の兄で御座います」
「……」
似てないな、と言う目線を頂きました。
と言うか久々に会ったが、本当に目付きも根性も悪いなこの長兄は!!
「それで、えっと、どういうことかしら?」
「いえ、姫様の回りを彷徨かせるのもそろそろご迷惑かと参りまして、引き取り処分に参りました」
「ひっ、引き取り処分!?」
「何か驚かれる事が御座いますか?」
「い、いやいやいや!だって、パルトフェは王家の覚えもめでたい騎士なのよ⁉」
「その王家の姫様の不興を買ったのですから、処分が妥当かと。そもそも、騎士爵位ごときで領地はありませんし、吹けば飛ぶような身の上です」
「ちょっ、えっ!?」
……あーあまた始まった。
この嫌味、本当に陰険だなあ。
そもそも長兄に俺を処分する権限なんて無い筈だ。
父上や殿下がたが許すわけないだろう。
大体、外国の冒険者が持ち込んで逃がしたワニも駆除したし。あれは本当に迷惑だった。外来種のワニがあんなに強いとは思わなかった。冒険者が退治しながら泣いてたけど、ペットを猫可愛がりして宿屋で鎖を外して逃がすから、ああなるんだ。
頑張って強くなった騎士なのに、何でも屋扱いされてる気がする。
まあ、確かにフラれたけど、姫様に付きまとってるけど。
俺を処分なんて……出来ない、筈だ。
……が、あの目。
長兄の目に殺意しか見えないんだが、嘘だろう?
「だ、だから出世出世言ってるの!?」
「高望みのことですか?
そうですね、家から追い出しても、妻も娶れないような給金にしがみつき、犬小屋のような住まいに住むしか無い男です。姫様の行く手を見苦しくも汚しておりますことお詫び申し上げます」
「パルトフェ!! お前、此処まで言われて悔しくないの⁉」
口を挟んだら長引くんですよ姫様。
あー、テレパシー使えないかな。苦笑いで察して頂けないでしょうか?無理か?
「何時ものことなので」
「何時も!?お前、愛されて当然の末っ子の癖に、お兄様にこんな暴言を許しているの!?」
姫様もなかなかの性格をしておいでだ……。そうか、そういうお考えでは兄王子殿下がたを振り回してもしょうがない……のか?
因みに俺は末っ子でなく、下に妹がいるのだがそれは突っ込むところじゃないな。
何故姫様が俺の前に立ち塞がっておいでなのだろう。
小柄な肩が大変可愛らしい。襟で項が見えないのが残念かな。
「末子であろうが中間子であろうが、その腕っぷしだけ発達した甘ったれた顔だけ野郎は我が家の恥です」
「お前、それでもお兄様なの!?うちのお兄様達はウッカリで女心が分からない顔だけ野郎だけど、お前程じゃないわ!!」
姫様ーー!!うちの陰険長兄は兎も角、お兄様がたへの過激トークはご遠慮ください!!
今王子殿下が誰か通りかからないかヒヤヒヤしたんだが!!出世の話どころではなく、俺が物理的に処断されます!!
シュガール姫様、……恐ろしい方だ。この方の回りを省みない率直な言動を甘くみていた。あー、誰もいないな、ホッ。
「……勿論私は殿下がたとは比べるべくもない俗物で御座います。
が、微力ながらも恥を忍んで、姫様に不快感を与える媚野郎な愚弟を処分に参ったのです」
うーん、毎度毎度長兄は俺を下げる言動しかしないな!
騎士爵を得ようとワニを倒そうとも、一番乗りで嫌味を吹っ掛けてくるこの長兄とは、根本的に合わない。
「パルトフェ!!お前、パーフェクト騎士なんじゃないの!?兄に苛められている不憫な男なのね」
「は?いえ、まあ……」
パーフェクト騎士……!?
……後ろの護衛や侍女達ギャラリーの視線がグサグサ刺さる。恥ずかしいな。最近新聞で目撃した、ビラビラした花屋か甘味処みたいな渾名もかなり恥ずかしいが。
それに、長兄とは騎士宿舎に居るから偶にしか顔を合わせないし、それこそボケッと聞いてるんですよ。
だが、口を挟もうとしても姫様がやけに憤慨してくださっている。
兄は、弟妹を守るべきだと思ってらっしゃるんですね……。ちょっと都合よく使いすぎでは?とも思わなくもないですが、良かったですね!報われましたね!兄王子殿下がた!
「仕方無いわね!お前のような家庭内で不憫な騎士を守ってやるのも、高貴なる王女の仕事かもしれないわ」
「はい?」
何故使命感に燃えておられるのだろう。まるで姫様のバックに炎がメラメラと燃えているようだ。
何がスイッチになったんだろう。身売りしない範囲でご婦人の機嫌を取るのはかなりやってきたが、この前、玉座の間で覚醒された姫様は分からないな。
「シュガール姫様、寧ろソイツは幼少からアホのように甘やかされた顔だけ戯け者です」
「兄なら弟を分からないように、正道へ導きなさい!」
「苦言は幼少から呈しております」
姫様、結構無茶を仰る。長兄の話なんかで導かれたくありません。俺は俺の信念で何とか出世を得るんです。
が、口を挟めない……。敢えて空気を読まないこともある俺としたことが、口を挟めない迫力だ!!
「パルトフェ」
「ハイ!?」
「汚名返上の機会をくれてやるわ! 付いてきなさい! 新聞社の局長が来ているの。
私達の仲の良さを見せ付けてやってもいいわよ!」
何なんだこの展開は。姫様の繊手で袖を引っ張られて……いや、力一杯袖を千切るレベルでブンブン振られている。
お、思っていたのと違う。
俺の未来予想図では、ちょっと強引になった俺に姫様がツンデレながらもデレていき、兄王子殿下がたもお認めになり、代替わり出来る爵位と領地を頂き、姫様と暮らすと言う……。
そう、ちょっとずつお互いを知り、頼れる俺を……。
「いえ姫様お考え直しを。この愚弟には立場にそぐわしい令嬢を娶らせ、領地の片隅に追いやりますので!!」
「は?な、何ですって!?お前、お兄様達と同じ気配を感じると思ったら、やはりブラコンなのね!?それも、構いすぎて嫌がられるタイプの!!」
「は?」
不敬待ったなしの声が思わず漏れてしまった。
「ブ、ブラコン?」
「わざと構わなくて怒った途端構ってくるお兄様達とやりくちがそっくりなのよ!!
行くわよパルトフェ‼ ブラコンは敵だわ! こんなブラコンに付き合ってられないわ! 御褒美になってやるから新聞のトップを飾ってやるの!!」
「姫様!! お考え直しを!! 愚弟をお離しください!!」
姫様は俺が好きだと言うことでいいのだろうか。
……えっと、どういう事に陥ったんだ?
………………。
早まっただろうか。
取り敢えず、長兄がブラコン説は頭から消し去りたい。早急に。
可愛がるなら俺よりゴツいが、次兄にしろ。
手を繋がれているというのに、この頭を占める疑問符は何なんだろう。
多分、この場で姫様と長兄しか解り合っていない。
えっと……まあ、細かいことはいいか!
俺のご褒美様は頼もしくて可愛い!
応援ありがとうございます!
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みんなの感想(1件)
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面白い!この視点は新鮮です、更新楽しみです。がんばってください!
わあ、有難う御座います!