(完)約束嫌いな私がしてしまった、してはいけない約束

奏直

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始まりの雨

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 その日も雨が降っていた…


 雨だったから会う事ができた…


 紅茶を口に含みカップを静かに置く…


「本当にあの男と結婚するのか?」


「えぇ。私は彼を愛しているので。」


 静かに…でも力強く話す妹…


「お前を想って白い結婚をする事も出来たのに他の女と子供まで作ったんだぞ?その子を愛する事が出来るのか?」


「出来ますわ。お兄様が私を…妹と思って下さるように私もその子を愛します。彼の子供ですし…彼が…想いを向けられた方の子供ですから。」


「想いを向けたって…それを分かっていて嫁ぐつもりなのか?」


「はい。彼を愛していますから。それに彼女には結婚が決まった時に彼が望むなら、彼の子供を産んで欲しいと私が頼みましたの。」


「何でそんな…いやお前がそれで納得しているなら良い…幸せになれ。」


「お兄様、ありがとうございます。」


 美しい妹…


 心根の優しい妹…


 我慢強く控えめな性格の妹…


 いつも誰かの犠牲になっていた妹…


 俺達兄妹は複雑な関係だった…


 兄妹として年に数度だけ会っていた…


 そして妹と会うのはこの日が最後になった…








ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 雨が降る…


「俺は幸せになれと言ったよな?どうして…どうして……死ぬ前に俺に相談してくれなかった…俺なら助けてやれたのに…」


 小さな墓の前…


 男が去るとオレンジのガーベラの花束がそこに置かれていた…


 その花束を手にする幼い少女…


 少女の流す涙を雨が隠してくれた…
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