(完)約束嫌いな私がしてしまった、してはいけない約束

奏直

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最悪な1週間の始まり①

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天気の良い昼下がりの公爵邸。
応接間でネイオウミ・レナイトは人を待っていた。
待っていたというのは語弊がある。
何故ならネイオウミは公爵家当主に呼ばれて来た客人だったから正確には待たされていただ。
ネイオウミは侯爵令嬢でありながら地味なワンピースを着ている。

〔こんな大きな邸にこんな格好で来るなんて場違いよね…でもこれが1番良い服で…どうして私がここに呼ばれたの?もう静かに暮らしていけたらそれで良いのに…〕

ソワソワしながらも何故私がここに居る事になったのか思い出す。
あれは私の最悪な人生の中でも最悪な1週間の出来事が始まりだったと…


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

ジャキッ ジャキッ ジャキン

その始まりは"可愛い義妹"シャーロットがハサミで私の髪を切った事だった。
"可愛い義妹"というのは世間からの評価であって私にとっては"意地悪な義妹"だった。
童顔な顔に似合わず豊満な体つきのシャーロットはその大きな胸を揺らしながらいつも私に悪意を向けてくる。

「お義姉様の髪が傷んでいたので整えてあげましたわ。その髪型よくお似合いですよ。」

さも当然の様に自分の偽りの優しさを押し付けてくる傲慢なシャーロット。
誰に言われたかは忘れたが母に似たと言われた大事な髪を切られ、呆然とする私を見てにんまり笑うシャーロットは可愛くないと思う。
今までも色々とされたが髪をいきなり切るのは立派な傷害罪だ。
だがこの家ではシャーロットが私にこういう事をするのは当たり前だった。
髪を切り落とされたのは初めてだが、それでも私にとっては当たり前の出来事の1つだった。
シャーロットは切り落とした私の髪を床にばら撒く。

「お義姉様ったらこんなに床を汚して…汚らしいから早く片付けて下さいね!」

「でもレイモンド様がいらしているの…」

そう私の2人目の婚約者であるレイモンド様が来ていた。
余談だが1人目の婚約者は今は義姉の婚約者になっている。

「あら、レイ様は私がお相手しますわ。お義姉様はここの片付けが終わったら庭に咲いている薔薇のお手入れをして私の部屋まで持ってきて下さい。可愛い義妹の頼み聞いて下さいますよね?お義姉様。」

「そんな…」

私の婚約者なのに愛称で呼びシャーロットが会うなんておかしい…
おかしいがシャーロットはここ半年程、レイモンド様が来るといつも私に用事を言いつけ会っていた。
そんな状況でもレイモンド様が私を責められたり咎められた事は1度もない。
それを優しさだと思っていた。
私の言葉を聞かずシャーロットはレイモンド様の待つ部屋に向かう。
私は仕方なく言われた事に取り掛かる。
義妹に言われたからと言って"普通"は従う必要はないのだろう。
だがシャーロットの母親は私の母親よりも家格が上であるため私は従わないと折檻されたり食事を抜かれる。
それに幼い頃より染み付いた"当たり前"が私にとっての"普通"であるため疑問を持つ事もなかった。
一時間程が経ち薔薇を抱えシャーロットの部屋の前に着いた。
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