39 / 215
恋を知らない男の涙 ダニー視点
しおりを挟むハル兄とチェスの勝負をしていたらエド兄がやって来た。
エド兄が来るなりハル兄が勝つ。
今まで手加減してたのかよ!
やっぱりハル兄は強いんだよな…
勝負が終わったからエド兄の話を聞いたら、思いもよらぬ話をしだした。
「あいつ…好きなやついるみたいで…初日にあった時に話していたからさ。お前達何か聞いてないかと思って…」
何の話?
イオに好きな奴がいるって話?
何でエド兄は知ってるの?
最近は俺もイオと仲良くなったと思っていたけど、そんな話は聞いてないし…
「…いや。特に聞いてないけど?」
ハル兄も知らないらしい。
まぁハル兄は人に興味ないから知らなくても仕方ないと思うけど。
「そうか…」
好きな奴の話するって事は今のところエド兄がイオと1番仲良いって事なんだよな…
でも、エド兄の話って信じて良いのかな?
聞き間違いじゃないの?
「エド兄はなんて聞いたの?」
「ん?あ~憧れている人がいるって…イオが一方的に慕っている人だって。」
「何それ。報われない不毛な恋愛でもしてるの?」
報われない不毛な恋…イオが?
それにハル兄のあの言い方だと、エド兄の聞き間違いじゃなかったな…
そっか俺達とあんな約束したのも…
「だからイオも縁談に乗り気じゃなかったんだ。」
って事だよな…不毛な恋をしていても俺達とは結婚したくないからあんな事…って違うし俺だってイオと結婚とかする気なかったし。
「だから約束したんだろ。良いじゃないか俺達だってそのつもりだったんだから。」
そう言うとハル兄は部屋を出て行った。
ハル兄の言う通りだよ。
でもイオは他の女とは違うと思っていたんだけどな…結局イオも女だったって事だよな…
「そうだけどさ…まぁそういうものだよね。」
俺も何か気分が優れなくて部屋に戻る事にした。
ハル兄に容赦なく負かされたせいだ。
そうに決まっている。
部屋に戻っても何もする気になれなくてベッドで横になる。
俺付きの侍女はすぐに下がらせた。
1人になりたかったから…でも1人になるとイオの事ばかり考えてしまっていた。
会う前は適当に遊んで捨ててやるって思っていた。
初めて会った時は地味な女で驚いたんだよな。
侯爵令嬢なのにあんなに地味とか想像できないだろう?
まぁイオと過ごしいるうちに俺の知ってる女達とは違うと思うようになったんだよな。
俺に裏表なく接してくるイオが…何か気になって…
前に遊び疲れたイオがソファで眠ってしまった事があった。
イオの侍女も居なくて…イオに近づいて…イオの髪に触れて…頬に触れて…キスしてしまおうと思った。
元々は遊んで捨てるつもりだったんだから問題ないはずだ。
でも出来なかった。
こんな俺が手を出しちゃいけないって…遊びで手を出しちゃいけないって…思ったんだ。
あの時、手を出さなくて良かった。
イオいい奴だもんな…好きな奴いてもおかしくないよな…なのに何で不毛な恋なんてしてるんだよ…幸せになれよ…
気がつくと涙が頬を伝っていた。
俺は涙を拭うこともせずただ目を閉じた。
こんなにイオを想っていたのに、これが初恋だと俺はまだ気付いていなかった。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
1,685
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる