(完)約束嫌いな私がしてしまった、してはいけない約束

奏直

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親父

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親父の帰宅は今日も遅かった。
政務を終え疲れて帰ってきた親父には悪いが今日はずっと話をしようと決めてた。
イオと話して以降ずっと考えていた事を親父に伝える。
母さんには親父と話したいと伝えていたから、問題がなければクラレンスが呼びに来る予定だ。

暫くすると部屋の扉がノックされる。
返事をするとクラレンスが中に入ってくる。

「エドガード坊っちゃま旦那様の準備が整いました。」

「あぁ。クラレンス、遅くに悪かったな。」

「とんでもございません。」

そう言い頭を下げるクラレンスの横を通りすぎる。
クラレンスにはそのまま下がるように告げる。
親父達の部屋の前に着き深呼吸をしてから扉をノックする。

「エドガードです。」

「入れ。」

いつもの軽い雰囲気ではなく緊張感が漂っている感じがしてしまう。
あぁ俺は緊張しているんだな…
中に入る前にもう一度深呼吸をする。

ガチャリ

扉を開けて中に入ると部屋には親父だけしかいなかった。

「母さんは?」

「大事な話のようだから…と席をはずしたよ。」

「そっか。悪いことしたな…親父も疲れているのに悪い。」

「気にするな。まぁ座れ。」

親父に促されてソファに掛ける。
テーブルにはクラリスが用意していったのだろう飲み物が置いてある。
俺はそれを手にするでもなくジッと見つめる。
疲れている親父にわざわざ時間を作ってもらっているのに話し出せずにいた。
親父は急かすでもなく俺が話し始めるのを待っている。
時計がカチカチと進む音が大きく聞こえる。
目を一度ギュッと閉じて開けると親父の顔を見た。
親父は俺を真っ直ぐ見ていた。

「あのさ…。」

「あぁ。」

「イオと話をして…さ」

「あぁ。」

「見つかったかもしれない。」

「ん?」

「見つかったかもしれないんだ。」

「エド、何が見つかったんだ?」

「俺の好きな女。」

「イオだったのか?」

イオ?

「へ?違うよ。何で?」

「今の話を聞く限りそれしか考えられんだろう?」

「あっあぁ、そっか…いや違うんだけど。イオの姉ちゃんの話を聞いたんだ。」

「まさか…‼︎相手ってイザベル嬢か?」

「……うん。」

「それは確かなのか?」

「分からない。そうかもしれないし、違うかもしれない。でもイオの話を聞いて…その…特徴が似ているんだよ。」

「特徴…というと?」

「髪の色と性格。」

「だけか?」

「…はい。」

「それで?」

「イザベル嬢がその人か確かめる。」

「で?」

「もしそうなら…」

「イザベル嬢には婚約者がいるんだぞ?下手にお前が想いを告げても困らせるだけじゃないか?」

「……………。」

親父の言ってることは正しい。
もしイオの姉ちゃんだったとして…それで俺の気持ちを言ったとして…迷惑だよな…分かってるよ。

「分かってる。でも…せめて確かめたい。会ってみたいって…昨日今日で決めた訳じゃないんだ。イオに聞いてからこの1週間悩んで決めたんだ。」

「たった1週間悩んだ位で決めれる問題か?」

たった1週間だ…でも俺は悩んで…今までにないくらい悩んで…それで分かったんだよ…俺はイオみたいに前を向いていたいって!親父に認めてもらいたいって!

「決められないよ!そんな簡単な事じゃないって分かってるよ!でも、いくら悩んだって結果は変わんねぇんだよ!俺は…会いたい……会いたいんだ…だから……父さん…会わせて下さい。」
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