(完)約束嫌いな私がしてしまった、してはいけない約束

奏直

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イオにとっての誕生日 ハル視点

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「あの…皆様は何故お誕生日をお知りになりたかったのです?」

その質問をしたイオに俺の事を意識してないんだなと分かっていたのに落ち込んだ。

俺はイオが好きだと自覚していた。
絶対そんな事にならないと自信があったのにな。
最初はイオの境遇に同情したのかもしれないとも思った。
でも一緒に過ごして本が好きなイオと話すのが楽しくて…本当は脆いくせに強くあろうとしていて…その弱い所を見せようとはしなくて…見せずに笑うんだよ…楽しそうに…でも偶に寂しそうに…。
報われない恋をしているって知って…辛くて…それで俺はイオが好きなんだって気付いて…
でも、初めてイオに会った時にイオを妻にする事はないと…俺を選ぶなと言ってしまったから…それもあって普段通りを装っていた。
普段通りとは言ってもあんまり触れないように気をつけたりした程度で……まぁ少しはぎこちなくなったかもしれないし、思わず触れてしまう事もあるんだけど…
俺だけが意識している事にイライラしたりして情けなくなる日も多かった。

「お誕生日ってお祝いするものなんですか?」

でもこの質問でイオの今までの境遇を思い出した。

「イオは今まで誕生日はどう過ごしてきたの?」

「いつも通り…」

いつも通り侯爵家の離れで1人で過ごして来た?
5歳からずっと?
だから誕生日に特別な思いがない?
家族の前なのに抱きしめたくて仕方ない気持ちになる。

「いつも通り…です。」

何か言おうとして、やめてしまった。
また、寂しそうな笑顔を浮かべている。
イオが無理して笑わなくて良いように、そういう事を言ってもらえるようになりたいのに…。

「まぁ!それじゃあ今年は皆で楽しく過ごしましょう!イザベル嬢も来てくれるのでしょう?それならお祝いしない手はないわね!」

「あの…」

母さんの言葉に遠慮しているのか申し訳なさそうにするイオ。

「それ良いな!」

「でも…」

エドに対しても同じ反応…

「イオ!誕生日はお祝いするもんなんだよ。貴族の中にはパーティーを開く人達もいるくらいなんだから気にすんなって!」

「そうなんですか?」

こういう時のダニーは前向きだよな…イオも気持ち遠慮が消えてるし…

「そうよ!そうと決まれば、お祝いしましょう!」

「ありがとうございます。」

そして、またこの笑顔…
もしかしたら遠慮してるだけじゃなく何か他にも不安な事があるのか?

「それじゃあイオ何が欲しい?」

「えっ?」

「誕生日なんだからプレゼント!イオの欲しいもの言ってよ!」

「エド兄!それは当日の楽しみにとっておくものだろう?」

「それもそうだな。まぁイオにとっては姉ちゃんが来てくれる事が1番のプレゼントか!」

「はい。」

やっぱり心なしか元気がないような…イオにとっての誕生日って何かあるのだろうか?
母さんも知らないような何かが?それとも単純に遠慮している?
イザベル嬢が来る事は喜んでいたから"誕生日"に何かあるんだろうな…
今度、一緒に過ごす日に聞いてみた方が良さそうだな。

あとイザベル嬢を自分からお茶会に誘ったり来る事を喜んでいるなら、イオが好きな奴は義妹の婚約者なんだろうな…

「ハルどうした?」

「イオに何をプレゼントしようか考えていたんだよ。」

本当に何をあげようかな…日にちが少ないから急がないとな!
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