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不審な男
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本屋を出て視線のする先に向かう。
そこに居たのは少し青みがかったグレーの髪色をした壮年の男性だった。
俺よりも10歳…いや15歳くらいは年上だろうか…本屋を睨みつけていた。
近づく俺に気付くと男の表情は一変し綺麗な礼をした。
服装からして何処かの邸に仕えているのだろう…身なりは良いから家格は良さそうだと思う。
見た目で判断するなら侯爵家以上か…
ただその男に見覚えはなかったため、どの家の者なのか判断は出来なかった。
「誰だ?」
「貴方様に名乗れるような名はございません。」
俺の事は知っているのだろうが、名も名乗らないのでは裏に誰がいるのか皆目検討がつかない。
無礼だと声を荒げることも出来たがイオもいるため騒ぎにはしたくなかった。
男もそれが分かっているのか…それともあえて名乗らなかったのか…
「誰に何の用があって見ていた?」
「私は大事な用を預かっておりまして、それを届ける途中でございました。そんな時、知っている方をお見かけしたので見ていただけにございます。」
「知っているのは俺か?それとも…」
だが、その男はそれに対して微笑むだけで答えようとはしなかった。
恐らくだが主人から依頼されたであろう大事な用事の途中にも関わらず俺達を見ていたのだ…何かあるに決まっている。
それも俺ではなくイオに…
「もし彼女に危害を加えるなら許さないからな。」
「そうですか…ですが貴方様とお嬢様とでは不釣り合いではありませんか?」
俺とイオが不釣り合い?俺が?イオが?どちらにしても戯言だな。
それに何をもって不釣り合いだと言っているのか…
ジロリとその男を睨む。
「そう怖い顔をしないで下さい。私はこれにて失礼致しますので。」
俺が何も言わないのを確認すると男は綺麗な礼をし去り際に『それでは、また…』と言い去っていった。
また会う機会があるのか?
あの男はイオだけでなく俺の事も知っているのか?
どちらにしても今後も警戒するに越した事はないなと気に留めておく。
暫く男の背中を見ていたが、1人にしたイオが心配でイオの元に戻った。
戻りがてら適当に俺が好きなジャンルの本を数冊手に取る。
イオにはじっくり悩んで決めたように装うつもりだ。
「1人ですよね?お連れさん来ないじゃないですか。だからこれから俺とお茶でもしましょう?楽しませますよ?」
「結構です!一緒に来ている方がいるので!」
イオの近くに戻ると軽薄そうな話し声が聞こえてくる。
男の姿は背中しか見えない。
ハッキリと自分の意思を伝えたイオの腕を掴む男の姿に怒りを覚え駆け寄る。
「彼女は俺の連れだ‼︎手を離せ!」
「知ってるよ。だから話しかけたんだから!」
「マル…お前か…」
「ハル様のお知り合いの方ですか?」
泣きそうな不安そうな顔に苦しくなる。
「1人にしてごめんね。彼はマル…マルコイ・ラドルフだ。」
「ハルの数少ない友人です。」
そうこの軽薄そうな男は俺の数少ない友人だ。
そこに居たのは少し青みがかったグレーの髪色をした壮年の男性だった。
俺よりも10歳…いや15歳くらいは年上だろうか…本屋を睨みつけていた。
近づく俺に気付くと男の表情は一変し綺麗な礼をした。
服装からして何処かの邸に仕えているのだろう…身なりは良いから家格は良さそうだと思う。
見た目で判断するなら侯爵家以上か…
ただその男に見覚えはなかったため、どの家の者なのか判断は出来なかった。
「誰だ?」
「貴方様に名乗れるような名はございません。」
俺の事は知っているのだろうが、名も名乗らないのでは裏に誰がいるのか皆目検討がつかない。
無礼だと声を荒げることも出来たがイオもいるため騒ぎにはしたくなかった。
男もそれが分かっているのか…それともあえて名乗らなかったのか…
「誰に何の用があって見ていた?」
「私は大事な用を預かっておりまして、それを届ける途中でございました。そんな時、知っている方をお見かけしたので見ていただけにございます。」
「知っているのは俺か?それとも…」
だが、その男はそれに対して微笑むだけで答えようとはしなかった。
恐らくだが主人から依頼されたであろう大事な用事の途中にも関わらず俺達を見ていたのだ…何かあるに決まっている。
それも俺ではなくイオに…
「もし彼女に危害を加えるなら許さないからな。」
「そうですか…ですが貴方様とお嬢様とでは不釣り合いではありませんか?」
俺とイオが不釣り合い?俺が?イオが?どちらにしても戯言だな。
それに何をもって不釣り合いだと言っているのか…
ジロリとその男を睨む。
「そう怖い顔をしないで下さい。私はこれにて失礼致しますので。」
俺が何も言わないのを確認すると男は綺麗な礼をし去り際に『それでは、また…』と言い去っていった。
また会う機会があるのか?
あの男はイオだけでなく俺の事も知っているのか?
どちらにしても今後も警戒するに越した事はないなと気に留めておく。
暫く男の背中を見ていたが、1人にしたイオが心配でイオの元に戻った。
戻りがてら適当に俺が好きなジャンルの本を数冊手に取る。
イオにはじっくり悩んで決めたように装うつもりだ。
「1人ですよね?お連れさん来ないじゃないですか。だからこれから俺とお茶でもしましょう?楽しませますよ?」
「結構です!一緒に来ている方がいるので!」
イオの近くに戻ると軽薄そうな話し声が聞こえてくる。
男の姿は背中しか見えない。
ハッキリと自分の意思を伝えたイオの腕を掴む男の姿に怒りを覚え駆け寄る。
「彼女は俺の連れだ‼︎手を離せ!」
「知ってるよ。だから話しかけたんだから!」
「マル…お前か…」
「ハル様のお知り合いの方ですか?」
泣きそうな不安そうな顔に苦しくなる。
「1人にしてごめんね。彼はマル…マルコイ・ラドルフだ。」
「ハルの数少ない友人です。」
そうこの軽薄そうな男は俺の数少ない友人だ。
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