(完)約束嫌いな私がしてしまった、してはいけない約束

奏直

文字の大きさ
100 / 215

婚約話 ハル視点

しおりを挟む
イオとの自称初デートは散々に終わった。
自称初デートで良かったと思う。
そうでなければ本当に…俺自身の問題と向き合わなければならないんだとしみじみ思う。
イオとももっと話をしなければと思うのに、邸に戻ると更なる問題が待っていた。

「2人共お帰りなさい。」

「おかえりなさいませハロルド様。ネイオウミお嬢様。」

俺達を出迎えてくれたのは母さんとクラレンスだった。
イオの前で坊ちゃん呼びをされなかった事にホッとする自分がいた。

「早速で悪いのだけどロビンがハルに話があるからと執務室で待っているわ。クラレンス、ハルをロビンの元へ連れて行って。イオは私とお話ししましょう。」

どういう事だ?親父がこの時間に帰って来ている?何かあったのか?
イオの方をチラリと見ると不安そうな顔をしている。
イオも思う事が何かあるのだろう…とにかく話を聞かなければ何も言えないな。

「分かりました。クラレンス行こう。イオ、またね。今日は…色々あったけど一緒に出掛けられて嬉しかった。本は…」

そう言いかけてクラレンスを見ると頷いた。
既にイオの部屋に運ばれている様だ。

「もう部屋に運ばれているからね。」

「ありがとうございます。あの…私も一緒に出掛けられて良かったです。」

イオのその言葉を聞き俺は親父のいる部屋に向かった。
クラレンスが扉をノックし親父の指示を聞き扉を開ける。

「ハロルド只今戻りました。」

「戻って直ぐに悪かったな。イオとのデートは楽しめたか?」

「親父も知ってたんだ…途中からマルが何故か合流したんだけど、もしかしなくても親父が?」

「ハハッそうだったのか。会いに行ったか。それは2人に悪い事をしたかな?」

マルが来たのは親父のせいか…

「いや…自分の情けなさを痛感したよ。」

「そうかそうか。さて…」

「どうして俺は呼ばれたの?」

「お前にに婚約話が来ている。」

「俺に?一体何処から?何処からだとしても断る。」

「分かっている。だが相手はジェダイナ公爵家だ。」

「はぁ…聞きたくないけど相手は?」

「シャーロット嬢だ。」

「どうして…どちらにしても断る。」

「分かっている。それを確認するために呼んだ訳じゃない。断るのを少し待たないかという話をするために呼んだんだ。」

「動向を確認するためだったとしても断りたいところだな。」

「因みにこの話をイオにはヴィッキーが伝えている。」

「何で⁉︎」

「イオにも考えてもらうためだ。今は分からなくても良い。だが、イオとイザベル嬢を守るために断らない事を協力して欲しい。…残念な事に王命だ。」

「良いよ。分かった。断るのは暫し待つ。でもどんな状況になっても受けないからな。それからイオにも動向を伺うためだと伝える。」

「協力してくれさえすれば後は好きにして良い。すまんな、直ぐに断れなくて。」

「イオを守るために必要な事なら仕方ない。」

「話は以上だ。」

俺は親父の執務室を出て、そのままイオの元へ向かった。
これ以上イオとの関係が拗れないようにするために。




しおりを挟む
感想 93

あなたにおすすめの小説

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

【完】まさかの婚約破棄はあなたの心の声が聞こえたから

えとう蜜夏
恋愛
伯爵令嬢のマーシャはある日不思議なネックレスを手に入れた。それは相手の心が聞こえるという品で、そんなことを信じるつもりは無かった。それに相手とは家同士の婚約だけどお互いに仲も良く、上手くいっていると思っていたつもりだったのに……。よくある婚約破棄のお話です。 ※他サイトに自立も掲載しております 21.5.25ホットランキング入りありがとうございました( ´ ▽ ` )ノ  Unauthorized duplication is a violation of applicable laws.  ⓒえとう蜜夏(無断転載等はご遠慮ください)

好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】

皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」 「っ――――!!」 「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」 クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。 ****** ・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。

「君の為の時間は取れない」と告げた旦那様の意図を私はちゃんと理解しています。

あおくん
恋愛
憧れの人であった旦那様は初夜が終わったあと私にこう告げた。 「君の為の時間は取れない」と。 それでも私は幸せだった。だから、旦那様を支えられるような妻になりたいと願った。 そして騎士団長でもある旦那様は次の日から家を空け、旦那様と入れ違いにやって来たのは旦那様の母親と見知らぬ女性。 旦那様の告げた「君の為の時間は取れない」という言葉はお二人には別の意味で伝わったようだ。 あなたは愛されていない。愛してもらうためには必要なことだと過度な労働を強いた結果、過労で倒れた私は記憶喪失になる。 そして帰ってきた旦那様は、全てを忘れていた私に困惑する。 ※35〜37話くらいで終わります。

【完結】どうやら私は婚約破棄されるそうです。その前に舞台から消えたいと思います

りまり
恋愛
 私の名前はアリスと言います。  伯爵家の娘ですが、今度妹ができるそうです。  母を亡くしてはや五年私も十歳になりましたし、いい加減お父様にもと思った時に後妻さんがいらっしゃったのです。  その方にも九歳になる娘がいるのですがとてもかわいいのです。  でもその方たちの名前を聞いた時ショックでした。  毎日見る夢に出てくる方だったのです。

夫が妹を第二夫人に迎えたので、英雄の妻の座を捨てます。

Nao*
恋愛
夫が英雄の称号を授かり、私は英雄の妻となった。 そして英雄は、何でも一つ願いを叶える事が出来る。 そんな夫が願ったのは、私の妹を第二夫人に迎えると言う信じられないものだった。 これまで夫の為に祈りを捧げて来たと言うのに、私は彼に手酷く裏切られたのだ──。 (1万字以上と少し長いので、短編集とは別にしてあります。)

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

どうぞ、おかまいなく

こだま。
恋愛
婚約者が他の女性と付き合っていたのを目撃してしまった。 婚約者が好きだった主人公の話。

処理中です...