(完)約束嫌いな私がしてしまった、してはいけない約束

奏直

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ハル兄の想い ダニー視点

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イオが扉から現れた。
隣の部屋で姉であるイザベル嬢と会っていたイオは突然消えた。
俺も当然焦った。
側に居たはずなのにイオが拐われるのを止められなかった。
俺も後悔していたけれどハル兄の方が落ち込んでいた。
それも当然でエスコート役はハル兄だった…
側に居るとずっと言っていた…
イオがものすごく緊張していたからイオのためにハル兄はイザベル嬢と2人で話せる時間作った。
そう決めたのはハル兄だし、イザベル嬢だし何よりもイオだったと思う。
だから今回のことはハル兄のせいではない。
俺達も側を離れたから。
何よりもイオを拐おうとした奴らが悪いんだから。
大体にしてイオが何をしたって言うんだよ!
あまりジェダイナ公爵家を探し回ることもできずイオの探索もどうすることも出来なかった。
暗い空気が部屋を覆う。
そんな時だった。
ハルに兄が急にイオの声が聞こえたと言い出した。
俺はハル兄の後悔がイオの声の幻聴を起こしたと思った。
その位ハル兄は自分を責めているんだと思った。
でも違った。

「…あ、あっあの‼︎」

ガタッ!

俺にもイオの声が聞こえた瞬間、ハル兄が椅子を倒した音がした。

「イオなのか?」

ハル兄がそう聞くとイオが『そうです。おこを開けてください!』と言ったのを皮切りに、俺達は部屋のあちこちを探し始めた。
ハル兄は見た事ないほど必死な顔で探していた。
考えたこともなかったけどハル兄にとってイオの存在はどういうものなんだろう?
俺にとっては初恋の女の子だと思う。
俺に大切な気持ちを思い出させてくれた人だと思う。
じゃあハル兄にとっては?
急にそんな事が気になる。
ハル兄とそんな話はしなかったから。
イオを探しながらそんな事が気になった。
『ここか?』や『こっちか?』と言いながらイオを探す。
イオも『ここです!』と言い続けていた。
途中でイオが扉を叩き始めて場所が判明する。

「ここか!」

ハル兄がそう言って壁につけられた扉を見つける。

「イオ!」

ハル兄はそう言ってイオに腕を伸ばす。
その腕にイオが迷いなく飛び込む。
分かっていた。
応援しようと決めた。
でも目の前でその光景を見て胸がギュッと締められる。
俺だってイオを好きだったのに…そう思ってしまう。
でも、イオが見つかって良かったとも思う。
一筋、涙が頬を流れた。
それを隠すようにエド兄が俺の前に出る。

「なぁイオどうやってここまで来たんだ?」

エド兄の質問にイオは扉の中を指さして『ヴィーのおかげで…』と言ったがそこには誰もいなかった。
こんな状況でイオを助けてくれる人間が少なくともいることが分かって気持ちが温かくなる。
涙をサッと拭ってイオの話を聞く。
話を聞き終わってイオはサミュエル公爵家に連れ帰るんだと思っていたら母さんが今からイオを準備して夜会に参加させると言い出した。
それを聞いた時のイオの声にも笑みが溢れたがそれ以上にハル兄の顔に笑ってしまった。
ハル兄がイオをどう思って好きになったかは分からないけれど母さんを信じられないものを見るような目で見るハル兄に…イオを離さないとするハル兄にイオへの想いが見えた気がした。
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