(完)約束嫌いな私がしてしまった、してはいけない約束

奏直

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揺らぐ気持ち

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夜会が始まりました。
夜会が始まる前に拐われたからか程よい緊張でこの場にいることが出来ていることに私自身驚いています。
そのおかげで私は幾つかのことに気づくことが出来ました。

まずは夜会が始まる直前にお義姉様と目が合った事です。
私の顔を見たお義姉様はホッとした顔をされました。
直前まで一緒に居たお義姉様が私が居なくなったことを知らないはずがない事に思い至りませんでした。
お義姉様にもご心配をかけていたことにこの時になって初めて気づく私は本当にダメだと思いました。

それから会場に主催者である公爵夫妻が入ってきた時です。
エスコートをして下さっていたハル様の手に僅かに力が入ったのです。
ハル様は私を拐った犯人は公爵夫妻だと思っているのでしょうか?
その可能性が無いとは思いません。
ですが私を拐った方は私がハル様に近づくのが許せなかったようでした。
冷静になって考えてみると私が側にいる事が犯人さんの邪魔になっていると言う事なのだと思いました。
私は今回のことでハル様の側に居たいと願ってしまいました。
でも、私が側に居ることで誰かの邪魔にもなっているのですよね…
側に居たいと思えば思う程、誰かを悲しませてしまうなんて私と言う存在はどこに行っても碌な存在ではないのかもしれません。
ハル様を好きになれた事だけでも私の人生ではとても華やかな出来事だと思います。
それで満足すべきなんですよね…ましてこのように好きな方に夜会でエスコートをして頂けているのです。
十分じゃないですか…
シャーロットもハル様を思っているようですし、この会場にいる美しい御令嬢たちの中にもハル様を想っている方がいることが分かります。

私はどこに行っても邪魔者なのですね…

ハル様に2度と会えないと思っていた時は気持ちに素直になりたいと思っていたのに…私は…私の心は弱く逃げることばかり考えていて嫌になります。
皆様に心配していただき…大切にしていただき…私の記憶にある限りとても幸せな日々を送らさせていただきました。
ここで皆様から…ハル様から離れたとしても後悔は…後悔は…
どうしましょう…私は私自身が邪魔者だと分かっているのにハル様から離れたくありません。
十分なほど幸せに過ごさせていただいたと分かっているのに…私はいつからこんなに強欲な人間になってしまったのでしょうか…そもそもハル様とは好きにならないと約束しているのに…

離れなきゃ…離れたくない…離れなきゃ…離れたくない…

私はジェダイナ公爵が開会の挨拶をする中自分の気持ちと戦い続けていました。
その間に私を拐った犯人が新たな動きを行なっていることも知らずに…
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