(完)約束嫌いな私がしてしまった、してはいけない約束

令嬢達の妬み

夜会は粛々と進んでいる様です。
と言っても私は夜会に出るのが初めてなので順調なのかは分かりませんが…今のところ何も起きていないと思います。
招待頂いたジェダイナ公爵夫妻に挨拶をさせていただいた時も何を言われることもありませんでした。
ジェダイナ夫人にはジッと見られたのですが目が合うと優しく微笑まれてしまいました。
私がそんな事を考えている時、会場にいる御令嬢たちの標的が私になっているなんて知りませんでした。
私が知らずにいられたのはサミュエル公爵家の皆様のおかげだったのですが…


『聞きまして？あの令嬢は王国からのデビュタントの招待状には病弱だからと断ったそうよ。それ以降も体が弱いからと夜会には一切参加されていませんでしたのに…』

『サミュエル公爵家の方々とどうしてお知り合いになったのか知りませんが、聞いた話では婚約者候補だとか…今夜はハロルド様にエスコートをお願いしているなんて…ハロルド様は今までどなたもエスコートされたことありませんのに…』

『本当にあんな令嬢が…。』

『あんな令嬢とは？どういうことですの？何かご存知なのですか？』

『私も聞いた話なんですけど、あの令嬢はレナイト侯爵家の令嬢なのだそうですけどイザベル様やシャーロット様に嫌がらせをしていたそうですのよ。』

『まぁ姉妹であられるお2人に？お美しいイザベル様と可愛らしいシャーロット様に嫌がらせをするなんて妬み以外の何ものでもありませんわ。』

『それに…』

『まだ何かありますの？』

『口にするのも憚られるのですが…』

『得体の知れないあの女性の事を私達は知っておくべきですわ。そうでなければサミュエル公爵家の方達にとって不名誉な事が起きかねませんわ。』

『そうですわね…あの令嬢…男性に取り入るのがお上手だとか…』

『…？』

『閨がお上手なんだとか…はしたないわ。』

『まぁ…そのようにはしたない令嬢がサミュエル公爵家に近づくなんて…許せませんわ。』

『本当ですわね。』

『私も聞いた話なので本当かは知らないのであまり他の方々に広めないでくださいませ。そのような事を私が話したなんて高貴な方々に知られては恥ずかしくて…。』

『話すだけでもそのように恥じらう貴女を貶めるような事はしませんわ。それに本当にはしたないのはあの女性なのですから。同じ女性だと思うのも嫌だわ。』

『私も聞いた時は信じられませんでした。自分の身体を使って男性に取り入るような女性がいるなんて…しかも侯爵家の令嬢ですのに…侯爵家の方達にも不名誉な事ですのに…』

『本当ね。病弱という話も嘘でしょうね。』

『ですがだとしらた王国への叛ぎゃ…何でもありません。』

『分かりますわ。そういう事になりますものね。だとしたら本当に恐ろしい女性ということになりますわね。』


このように私は私の知らないところで王国に叛逆する恐ろしい女性に仕立て上げられていたのです。