(完)約束嫌いな私がしてしまった、してはいけない約束

奏直

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提案

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目の前で愛しい女性が叫び声をあげる。
彼女を苦しめる全てに憎しみが向く。
先程までこの部屋にいた王弟ロバート・サミュエルに…
彼女が何を言われても助けなかった夫ニコラス・レナイトに…
こうなる原因となった娘シャーロット・レナイトに…
その全ての中心にいるネイオウミ・レナイトに…
そして何より側に居たのに何も出来なかった自分自身に…
目の前がゆらゆらと燃えているような錯覚に陥りながら愛しい人を見つめる。
彼女の為に出来ることは何だろう?
彼女の憂いを取り払わなければならない。
元凶はネイオウミ・レナイトだから彼女を消し去らなければならない。
けれど今度こそ彼女に火の粉が降りかかる事のないようにしないといけない。
その為には本人の意思で消えてもらうしかない。
彼女に協力している者達が何者か分からない以上下手に動くのは危険だ。
その為にもネイオウミ・レナイトとハロルド・サミュエルを引き離さなければならないな。
シャーロットが好き勝手したおかげで動きにくくなってしまったが、まだどうにかなるだろう。
あの2人を引き離せればあんな小娘などどうとでも出来るさ。
そうだな…ハロルド・サミュエルが連れ去られたとでも言えば信じてのこのこと探しにでも行くだろう。
そのためにもまずは引き離さなければならないな。
まぁ好き勝手はしたがシャーロット様にも幸せになってもらわねばキャサリン様の憂いは深まるばかりだからな。
好き勝手をする困った子供だが彼女の大切な子供だからな。
ヴィンセント様も早くキャサリン様を支えてくださるようになって欲しいものだが…それはまだこれからだろう。
どちらにせよ先ずはシャーロット様だな。

「シャーロット様…大丈夫でございますか?」

呆然とした顔で私を見てくる。
どことなく少女だった頃のキャサリン様に似ていなくもないが、シャーロット様は父親に似たのだろう。

「そうだわロッティ、妊娠していると言うのは本当なの?」

「………。」

「どうなの?ロッティ‼︎」

「そ…そうよ!妊娠してるわよ!」

「誰なの?相手は誰なの?」

キャサリン様は本当に母親になられたのだなとこんな時に実感する。
子供であるシャーロット様を心配されていらっしゃる。

「たぶん…レイ…だと思う。」

ん?これは初耳だぞ。
相手はレイモンド・アッセルのはずだが?

「だと思う?」

キャサリン様もそこに疑問を持たれる。

「可能性が高いのはレイだけよ。でも…」

「他にも関係を持った人がいると?」

キャサリン様が静かに尋ねられる。
怒ったお顔も素敵だ。
キャサリン様の質問にシャーロット様は頷かれる。

「…信じられないわ。」

「君に似ているということだろう?」

不意にニコラス侯爵が話だす。
嫌味な奴だなと思う。

「何を言ってるのニコラス!」

「いや。何となくね。思ったことを言っただけだよ。」

「何の話?」

「何でもないわ。」

「とにかく相手がレイモンドなら彼と結婚しなさい。」

「いやよ!私はネイオウミになんて負けてない!ハロルド様と結婚するのは私よ!」

「私もそう思います。シャーロット様ほどの方でしたらハロルド様をご結婚するのが正しいと思います。ですので私から提案があるのですが聞いていただけますか?」

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