(完)約束嫌いな私がしてしまった、してはいけない約束

奏直

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咲きて悲恋

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「それで?ジェダイナ公爵家の執事であるアイザック・ジョゼフと何を話していたんだエド。」

急に真剣なお顔で話をされるハル様。
先程までの空気が少しピリっとしています。

「まぁ世間話を。」

飄々と話されるエド様。
エド様がそう話されたのを聞くとアイザックさんはエド様を睨みつけられました。

「何を!」

「本当のことだろう?」

「どうして邪魔をするんですか!」

「邪魔?少し声をかけて話しただけだろう?それとも何かやましい事でもあったか?」

「くっ…」

余裕を見せるエド様に対してアイザックさんは悔しそうにされています。

「お前がしようとしていた事くらい俺達は把握している。はぁ…そう睨むな。お前達が手を出そうとしている人が誰で、その人が何者なのか俺達は知っている。まぁお前がそれを知ったところでお前の価値観が変わることがないのも知っているんだがな。どちらにしても敵対し続ける事も分かっているが、お前と同じように俺達にも譲れない守りたい人がいる。だから…」

ハル様がそう言った時アイザックさんは目を大きく見開かれ炎が大きく燃えるがごとく怒り出されました。

「一緒にするな‼︎俺とお前達が?そんなわけあるか‼︎産まれながらに恵まれた人生が約束されていたお前達と産まれる前から不必要だとされてきた俺が同じなわけあるか‼︎俺にはあの人だけなんだ。あの人だけが大切で特別だ。他は何者であっても俺には同じだ。あの人だけが全てなんだ。それなのに俺と同じように譲れない守りたい人がいると?俺は俺の命に変えてもあの人を守る。何があってもだ。それを同じだなどと宣うな!」

アイザックさんの叫びは止まることなく溢れ出てくるようでした。
でも私には涙を流しているように…苦しいと言っているように聞こえました。
お顔は怒りに満ちていますが私には号泣しているように見えます。
ハル様もエド様もクラレンスさんも顔色を変えずその話に耳を傾けているように思えます。
それでもアイザックさんのした事を許してはいけないのです。

「だからって…」

「イオ?」

「だからって私を拐ったりするのは違うと思います。キャサリンお義母様が望まれた事だったとしてもです。」

「貴様が大人しく捕まっていれば!」

ハル様もエド様も私がアイザックさんに拐われたと聞いても特に驚かれた様子はありませんでした。
もしかしたら予想していたのかもしれませんね。

「もし私を好きだと言ってくださる方がいて、私が道を間違えていたらその人には私を甘やかせるのではなく叱って道を正して欲しいです。私はそう思っているので、だから貴方は間違っていると私は思います。でも…貴方がキャサリンお義母様を大切に想っていることは素敵だと思います。自分の全てを賭けて愛することが出来るのはとてもすごい事だと思います。だからこそその命を差し出すのではなく共に歩むことを選択して欲しかったです。」

「好き勝手なことを!そんな事を望めるわけがないだろう!私は…そんな事を望んではいけないんだ。あの人と私は…」

「なら尚更だな。お前は好きな人が落ちていくのを待っていたんだろう?」

アイザックさんの言葉にハル様がそう伝えられます。

「⁉︎…………………。」

「そういう事だろうな。」

アイザックさんはそれ以上何も話されませんでした。
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