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心の叫び ハル視点

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「さて…お前はイオを亡き者にしようと画策していたようだが、もう諦めろ。」

俺はイオを狙う敵を1人でも多く排除できればそれでいいが、できればイオを傷つける可能性が少なくなる方が良いに決まっている。

「……………………………。」

アイザック・ジョセフが俺を睨みつけはするが何も話さない。

「正直に言うが、お前以外にもイオを狙っている輩がいるからお前に構ってる暇はないんだよ。お前は愛しい人がお前を頼るまで落ちてくるのを待っているんだろうから大人しく見ていろ。」

「私はそんなつもりじゃあない…」

絞り出したような声には気力が感じられなかった。

「声に力がないな。とにかく邪魔をするつもりなら完膚なきまでに叩き潰す。ありとあらゆる力を使ってでもな。どちらにしてもお前の愛しい人は地に落ちるのみだ。良かったな希望が叶って。」

「お前は本当に冷酷な男だな。そう言うことで私の心を砕くつもりなんだろう?」

「ハル様はそんなつもりで言っているわけではありません。ハル様は貴方が何を言っても聞き入れてくださらないから、こう言うしかないんです。」

イオはそうかばってくれたが、今までの俺はアイザック・ジョセフが言うように冷酷な人間で…イオに言ってもらえるようなそんな殊勝な人間じゃない…
それでも、イオにそう思ってもらえているのであればこれからはそういう人間になれるようになる。

「何も知らない小娘が!貴様がいなければ…」

いつのまにかアイザック・ジョセフにとってもイオは憎しみの対象となってしまっていたのだろう。
でも、イオがアイザック・ジョセフに何かした事はないんだ。
間接的にイオを憎むなんて…

「私だけのせいですか?確かに私は幼い頃からいなければいい存在だと思っていました。今も…まだ自分がいてもいい存在か疑問に思います。それでも、酷いことを言われたりされたりしたら私だって痛いんです。辛いんです。私が…私だけが悪いですか?私にとっては貴方達だって…同じです。」

それはイオの心からの叫びだった。
幼い頃からずっと思っていた理不尽さに対する疑問であり怒りだった。
でも当たり前だよな。
イオはこんなに小さな体でレナイト家で1人耐えてきたのだ。
暴力を振われ、心ない言葉に傷付けられ…それでも1人で耐えてきたのだ。
それなのにイオ自身は誰かを傷つけることも恨んだり憎んだりすることもなく…俺はそんなイオを守りたい。
絶対に守る。
イオが希望する通り生きて守る。
イオが俺を受け入れてくれるなら。

「ふん。本当に悪いのは、諸悪の根源はお前の父親だ。無用な火種をばら撒く悪しき者。お前だってその血を受けつでいるんだ、罰せられて当然だ。」

…………?
ニコラス・レナイトが諸悪の根源?
まだ俺達の知らない情報があるのか?


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