(完)約束嫌いな私がしてしまった、してはいけない約束

言い訳 キャサリン視点

どうしましょう…どうしましょう…シャーロットとヴィンセントの父親が誰かなんて、どう説明すれば良いの？
本当の事を言えばニコに嫌われてしまうわ。
もちろんニコの子供じゃないことはニコには分かっている事だけれど、それでも今までは知らないふりをしてくれていたから平穏に過ごしてこれたのに…
何でこんなことになったのよ！
アイザックがこの場にいる事もおかしいわ！
おかしいけどアイザックが私を裏切るわけがないのよ！
何でよ！何でよ！どうしてこんな事になったの？
ニコは…助けてくれないわよね。
だってニコは言ったもの。

『私の妻が本当に私の子を産んだのかをね。』

つまりニコは私に本当の事を言うように求めているんだわ。
でも、それを今説明したら…私は絶対にニコに離縁されてしまうわ…
何か…何かあるはずよ！
……………………⁉︎待って違うわ！ニコはこう言ったのよ。

『私の妻達が本当に私の子を産んだのかをね。』

って言ったんだわ。
待って！待って！待って！ということはニコは今までの妻…つまりクリスティーンお姉様のことも憎きパトリシアのことも疑っているんだわ。
ううん。
きっとパトリシアのことを疑っているのよ！
そうだわ！それなら私にもまだチャンスがあるかもしれない！

「私は…シャーロットのこともヴィンセントのことも愛しております。そしてニコのことも愛しております。ニコは先程言いましたよね？『私の妻達が…』と。つまりニコは前妻…クリスティーンお姉様とパトリシアさんの事を疑っているのではありませんか？…………いえ率直に言ってパトリシアさんを疑っているのですよね、ニコ？」

私は社交界ではそれなりに人望があるわ。
私が涙目でこう訴えれば話の的は私ではなくニコに移るに決まっているわ。
もし上手くいけば私とニコは今後も一緒に過ごすことはできるはずよ！

「そう…貴女はこの状態でも何もいう気はないのね…それじゃあニコラス侯爵。いったん貴方に話を聞きましょうか。」

やった！話が移ったわ！

「私から言えることは殆どありませんが？」

「娘は…キャサリン・レナイト夫人は貴方が前妻であるクリスティーン・レナイト夫人とパトリシア・レナイト夫人を疑っていると言っていますがそれについてはいかがですか？」

「そうですね…確かに私は妻達を疑っていますよ。ただそれはティナとパティに限ったことではないですよ。」

な…そんな…

「つまり？」

「私は今の妻であるキャサリンも疑っていますよ。」

ニコ？私の事を愛していない事は分かっているけれど、それじゃあ私が貴方以外の人の子を産んだと言っているようなものじゃない！違うのよ！違うの…
ぶんぶんと首を振りたいけれど首が動かない…体が固まって…息が苦しいわ…何で？どうして私の人生うまくいかないのよ！