(完)約束嫌いな私がしてしまった、してはいけない約束

奏直

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レナイト家の裁き① ハル視点

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当然のことだと思う。
俺が知る限りでも当家に来た時、イオは階段から突き落とされ怪我をした状態でやって来たんだ。
それ以前も髪を切られ、婚約者を寝取られ、幼い頃から離れに1人で住まわされてきた事からも他にもまだたくさん傷つけられてきたに違いない。
もし、少しでも何かが違えば俺はイオに出会うことも出来なくなっていたかと思うと本当に腹立たしい。
同じ目に合わせてやりたいと思うが…そんな事をイオが望むはずもない。
イオが望むとすれば彼女達に関わらないで過ごすこと…くらいかな?
もしかしたら時間を掛ければ分かり合える日が来るかもと思うかもしれないが…それは俺が嫌だな。
大抵の人間はイオのように優しくはない。
人の良さそうな顔で近づいてきては傷つけていく。
シャーロット・レナイトが変わることがないとは言わないが、現状の彼女を見る限り絶望的だろう。
そもそも親父は俺を理由にレナイト家からイオを引き離すことにした。
それはイオの父親はパトリシア夫人を誤解して疑い続けイオを間接的に虐げてきたから。
それはキャサリン夫人がイオに教育を受けさせず、時に折檻という名の暴力を振るってきたから。
それはシャーロット嬢がイオを侮辱し、心身共に傷つけてきたから。
3名ともがイオの命を脅かしてきたんだ。

もっと早く気づいて助けられたら良かったのに…

そんな事を思っても無駄なことだとは分かっている。
イオに初めて会った時はそんな事情を気にかけることもなく邪険にしていた。
挙句の果てには俺を好きになるなと約束までさせた。
そんな俺が言えたことではないのは分かっている。
それでも彼らを許せない。

「何故かは今申し上げましたでしょう?」

「……?」

ある意味強者だな…

「言っていただろう。俺がシャーロット嬢に愛情を抱くことはないこと。それから、君は国境の修道院で一生幽閉されるからだ。」

「そんな…なんで私だけ幽閉ですの?」

「君だけじゃないよシャーロット嬢。」

親父がやっと話すことにしたらしい。
確かに母さんが話しているのを止める人じゃあないからな。

「どういうことですの?」

「君の母親であるキャサリン夫人もニコラス侯爵も裁かれる。2人は君よりも厳しい罰を受けることになる。」

親父はこういう時、怒りで我を忘れたものさえも落ち着かせ納得するような声で話す。
前に母さんが『その声に一目惚れしたのよ。』と惚気ていた。

「えっ?そうなんですの?イザベルお姉さまは?」

「イザベル嬢は陰ながらネイオウミ嬢を守っていたことが分かっている。彼女が罰を受けることはないよ。」

「それでは私は本当に国境の修道院で一生を過ごすのですか?」

「あぁ、間違いないよ。私の兄である国王から君達の処遇は私が決めていいと言われている。」

「それではお母様は?」

「キャサリン夫人。」

「は、はい。」

「貴女には隣国に行っていただく。」

そう言われたキャサリン夫人の顔は青ざめていた顔がさらに青くなった。

「お母様は隣国に行くだけで良いのですか?」

それにしても安定しているな。
隣国に行くだけなわけがないだろうに。

「もちろん貴族としてではない。」

「えっ?」

「キャサリン・レナイトは本日より貴族籍を剥奪する。」
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