(完)約束嫌いな私がしてしまった、してはいけない約束

奏直

文字の大きさ
193 / 215

伯父様は国王様

しおりを挟む
突然、夜会の会場に国王様がいらっしゃいました。
私が国王様を見るのはこの日が初めてでした。
物語の国王様しか知らなかった私にとって初めて拝見する国王様は…思っていたよりもお若く見えました。
その…物語の国王様はお髭が長くて、少しお体もふくよかなイメージでしたので失礼だと思っていてもジッと見てしまいました。
実際の国王様にはお髭もなく、お腹も出ていなかったです。

「イオ。そんなに伯父を…国王様を見つめるのは、あまり良くないよ。」

ハル様にそう言われてハッとして慌てて頭を下げました。
ハル様に注意されるまで見つめていたことに恥ずかしさが込み上げてきます。
恐らく私の顔は真っ赤になってしまっていることでしょう。
確かに国王様のイメージが私の思っていたお姿と違う事で見ていたのもありますが、お母様のお兄様であると聞いてしまってので伯父様なのだと思い見てしまっていたのもあります。
ですがあまりにも凝視していたのですね…

「くすっ…大丈夫だよ。ただあまり見つめ続けるのは俺が嫌だったから。」

ハ、ハル様?私、今息が止まりました。
どうしたのですか?何ですか?だってハル様が言ったのに…

『俺もネイオウミ嬢を伴侶にすることはない。だから俺の事も選ばないと約束してくれ。』

ってそう言ったのに…なんで好きだとか今みたいなこととか…本気ですか?信じていいのですか?

「国王様…私がこの国の王だなどとご冗談でも過ぎますぞ。それに私を裁くとはどういう意味ですか?」

「どういう意味?分かっているのに聞くのか?」

私があたふたしていると国王様とジェダイナ公爵様がお話の続きを始められたのです。
正直に言いましてお二人の話もとても気になるのですが、私の心はハル様に支配されていました。

「何も分かりませんな。裁くと言うことは私が何か悪事に手を染めているとでも言うのですか?」

「そうだと言ったら証拠でもあるのか?と聞くのだろう?もちろんあるさ。」

「それこそご冗談を…私は国のために尽くしてきました。国王様もご存知でしょう?」

「国のために尽くしたと言うが私服を肥したことはないと断言できるか?」

「…もちろんです。」

「ラグデル家とは随分と懇意にしているそうだな。」

「それはもちろんでございます。私の孫であるイザベルの婚約者はラグデル家の長男であるシオドア・ラグデルですので。」

「だから懇意にしていると?」

「左様でございます。」

「成る程…婚約者になった事でいい隠れ蓑になったわけか。」

「隠れ蓑などと…」

「人身売買…」

「…………………!!?」

「…は我が国では禁止しているが、それについて公爵はどう思っている?」

国王様は急に話を変えられました。
何かあるのでしょうか?

「………そうですな。人身売買などは同じ人間として許せない悪行ですな。売るものも買うものも生涯、極寒の地か灼熱の地で幽閉でもさせるのが良いでしょうな。」

「そうか。ではラグデル家の者は灼熱の地での幽閉が良いか。」

会場が響めきます。

「何を仰っているのですか?」

「公爵も私と同じ意見で非常に参考になったよ。ラグデル家は人身売買の罪で灼熱の地で幽閉を命ずる。」

「…………………!!?ラグデル家の人間がそんなことをした証拠があるのですか?」

「あるさ。そうでなければ言うわけがないであろう。」

国王様の言葉に会場の響めきが更に大きくなりました。
しおりを挟む
感想 93

あなたにおすすめの小説

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

【完】まさかの婚約破棄はあなたの心の声が聞こえたから

えとう蜜夏
恋愛
伯爵令嬢のマーシャはある日不思議なネックレスを手に入れた。それは相手の心が聞こえるという品で、そんなことを信じるつもりは無かった。それに相手とは家同士の婚約だけどお互いに仲も良く、上手くいっていると思っていたつもりだったのに……。よくある婚約破棄のお話です。 ※他サイトに自立も掲載しております 21.5.25ホットランキング入りありがとうございました( ´ ▽ ` )ノ  Unauthorized duplication is a violation of applicable laws.  ⓒえとう蜜夏(無断転載等はご遠慮ください)

好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】

皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」 「っ――――!!」 「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」 クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。 ****** ・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。

「君の為の時間は取れない」と告げた旦那様の意図を私はちゃんと理解しています。

あおくん
恋愛
憧れの人であった旦那様は初夜が終わったあと私にこう告げた。 「君の為の時間は取れない」と。 それでも私は幸せだった。だから、旦那様を支えられるような妻になりたいと願った。 そして騎士団長でもある旦那様は次の日から家を空け、旦那様と入れ違いにやって来たのは旦那様の母親と見知らぬ女性。 旦那様の告げた「君の為の時間は取れない」という言葉はお二人には別の意味で伝わったようだ。 あなたは愛されていない。愛してもらうためには必要なことだと過度な労働を強いた結果、過労で倒れた私は記憶喪失になる。 そして帰ってきた旦那様は、全てを忘れていた私に困惑する。 ※35〜37話くらいで終わります。

【完結】どうやら私は婚約破棄されるそうです。その前に舞台から消えたいと思います

りまり
恋愛
 私の名前はアリスと言います。  伯爵家の娘ですが、今度妹ができるそうです。  母を亡くしてはや五年私も十歳になりましたし、いい加減お父様にもと思った時に後妻さんがいらっしゃったのです。  その方にも九歳になる娘がいるのですがとてもかわいいのです。  でもその方たちの名前を聞いた時ショックでした。  毎日見る夢に出てくる方だったのです。

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

夫が妹を第二夫人に迎えたので、英雄の妻の座を捨てます。

Nao*
恋愛
夫が英雄の称号を授かり、私は英雄の妻となった。 そして英雄は、何でも一つ願いを叶える事が出来る。 そんな夫が願ったのは、私の妹を第二夫人に迎えると言う信じられないものだった。 これまで夫の為に祈りを捧げて来たと言うのに、私は彼に手酷く裏切られたのだ──。 (1万字以上と少し長いので、短編集とは別にしてあります。)

どうぞ、おかまいなく

こだま。
恋愛
婚約者が他の女性と付き合っていたのを目撃してしまった。 婚約者が好きだった主人公の話。

処理中です...