(完)約束嫌いな私がしてしまった、してはいけない約束

奏直

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妹 フレデリック・フィッツジェラルド視点

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俺には妹がいた。
優しく、我慢強く、控えめな性格の、外見も内面も美しい妹だった。
俺と妹は世間的に見て兄妹ではなかった。
俺達は異母兄妹だったが、俺達の父の威厳のために妹は赤の他人として父の部下に育てられた。
俺達家族は他の家族と比べて特殊だった。
父が愛した女性の子供だったとしても、父は妹を自分の子供と認めなかった。
いや…正確には認めることは許されなかった…かな?

父はこの国の国王だったから…

俺は産まれた時から王位を継ぐとされていた。
だから妹が産まれる時にその存在を聞かされていた。
でも、弟は妹が死ぬまでその存在を知らされなかった。
妹の事を伝えた時は、どうして教えてくれなかったのかと責められた。
一度でいいから兄妹弟3人で過ごしたかったと俺だって思っている。
妹は伯爵家の人間として生き、侯爵家の当主の妻になった。
妹が愛した男は父の…国王の命により妹とは別の女性と結婚し子供を授かった。
その女性が亡くなった時には、国王も亡くなり俺が国王になっていたため妹とその侯爵の結婚を認めた。
俺が最後に妹に会ったのは雨の日だった。

「本当にあの男と結婚するのか?」

「えぇ。私は彼を愛しているので。」

「お前を想って白い結婚をする事も出来たのに他の女と子供まで作ったんだぞ?その子を愛する事が出来るのか?」

「出来ますわ。お兄様が私を…妹と思って下さるように私もその子を愛します。彼の子供ですし…彼が…想いを向けられた方の子供ですから。」

「想いを向けたって…それを分かっていて嫁ぐつもりなのか?」

「はい。彼を愛していますから。それに彼女には結婚が決まった時に彼が望むなら、彼の子供を産んで欲しいと私が頼みましたの。」

「何でそんな…いやお前がそれで納得しているなら良い…幸せになれ。」

「お兄様、ありがとうございます。」

俺達が会うことを許された限りある時間の中で最後に交わした会話だ。
次に妹に会ったのは冷たくなり動かなくなった妹だった。
俺は妹を助けられなかったことを悔やんだ。
悔やんでも何も変えられなかった。
妹には侯爵との間に娘がいた。
国王である俺には子供ができなかったため姪であるネイオウミを引き取ろうと思ったが、狸ジジイの老害どもに邪魔され敵わなかった。
あの時は俺も若く、ジジイ共を黙らせる力を持っていなかった。
ネイオウミが虐げられていると知った時、俺はまた後悔した。
だから俺は妹を殺した奴を…ネイオウミを苦しめた奴を…絶対に許さない。
私怨と言われようともだ。
幸いにも弟の次男であるハロルドがネイオウミを好きになったそうだ。
ネイオウミも満更でもない様子だと言う。
ネイオウミには幸せになってもらいたいものだ。
まぁハロルド達はくだらない約束をネイオウミとしたらしいから、ネイオウミを傷つけたら俺は承知しないつもりだ。
まぁ、そんな感じで俺は老害を退治にある夜会にやって来たわけだ。

「性懲りも無く!貴様に私が裁けるわけがないと言っているだろう!!」

喚き散らすその男に告げてやる。

「なら、俺が裁こう。」

やっと貴様に裁きを下せる時が来たからな。
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