(完)約束嫌いな私がしてしまった、してはいけない約束

奏直

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約束の代償 ハル視点

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伯父は確かに言った。
俺とイオが婚約するに当たってイオが王宮で過ごすこと、イオが淑女教育を受けること、そして何より俺が王位をつぐに値する器があるか見極めること。
そのために1年間、俺は国王について学ぶという事を。
1年経てば婚約できると思って必死で学んできた。
正直に言ってあの適当な性格の伯父からは想像がつかないくらい国王としての伯父は優秀だった。
だから、俺も必死になって学んだ。
認めてもらわなくてはイオと婚約が出来ないという思いがあったのも事実だ。
それに伯父について学んだことで、良き国王になりたいという思いが芽生えたのもあった。
だからイオと会う時間が限りなく削られたとしても、必死に学んだ。
なのに1年経った頃、伯父が言ったのはただの我儘だった。
そう、それは初めて出来た愛娘を手放したくないというものだった。
正直に言ってふざけるな!だった。
でも、そんな事は言えないからどうしたら認めてくれるのか聞き続けた。
だが、返ってくる答えは『父娘で過ごす…いや家族で過ごす日々をもう少し味わいたい。』と言うのだ。
すぐに結婚するわけではない。
俺はまず婚約をさせて欲しいと言っているだけだ。
いや、もう本当に婚約だけはさせて欲しい。
社交界に本格的にデビューしたイオは非常に人気が高く心配でならないのだ。
もちろんイオの気持ちは知っているし、信じている。
ただ、他の男どもにイオは俺の愛しい人だと宣言したいんだ。
イオは国王の娘というだけで注目の的だ。
そんなことに色目を使ってくる男どもに、イオの可愛さに気づき、その心根の美しさに近寄ってくる男共のタチが悪いんだ。
人の良さそうな顔でイオに言い寄っていく。
俺達2人の想いが通じ合っていることを親族以外知らない現状では俺の立場はないに等しい。
何より社交の場に伯父がイオのエスコートを付けないのが悪い。
そんな事をしたらイオに結婚話が次々に舞い込むじゃないか。
いや、その話すら伯父が一刀両断にしているそうだが…気が気じゃない。
だから婚約だけはさせてほしい。
そう伯父に訴えても『俺が今は虫除けになっているんだから、いいだろう?何れお前と結婚することも…認めるつもりなんだ。今は父親に娘を守らせて欲しいんだ。』なんてしんみりした顔で言ってくる。
でも俺は騙されない。
そんなことに絆されていたら良いように振り回されるだけだ。
伯父は国王として優秀な人だが、娘をもつ父親としてはただの親バカだ。
大体、結婚したって王宮に一緒に住むんだから離れ離れになるわけでもあるまいし。
そう思って言えば今度は『お前がネイオウミと結婚しないと約束したんだろう?約束は守るものだろう?』なんて言ってくる。
俺が何よりも後悔しているその事実をここぞとばかりに言ってくる。
なんで俺はあんな約束をしたんだろう。
あんな約束をしなければ…
でもイオと生涯共に生きて行くために、今日も伯父の説得を続けてやる。
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