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4.こんなのって聞いてない! ★
しおりを挟むいきなり耳元で囁かれて私はまた体の奥底から疼く感覚を覚えてびくっとした。
「声だけで感じちゃった?」
「……バカっ」
いつのまにか男は私の隣に座っていて、隙間もないくらいに密着している。
そのことに私が気づいた瞬間、男は私の耳にかぷりと軽く歯を立てた。自分以外の熱と吐息を直に感じた私は思わず「あんっ」と自分でもびっくりするくらい甘い声をあげてしまう。
私はそんな自分がはしたなく感じて視線を下にそらして口元を手で覆う。
「お姉さんの声、甘い。とろけちゃいそうだね?」
「やだ……やめて……」
「なんで?お姉さんのかわいい声もっと聞きたいなぁ」
そうしている間にも、男は、耳だけではなく首筋を甘噛みしたり、胸元に向かってキスを落としていく。
ちゅっちゅっとわざとらしく音をたてながら肌に男の唇が吸い付く感覚が私の劣情を誘う。
「んっんっ……んっ……んあっ……っ……」
喘ぎ声を出させようとする男に必死に応戦しようとするが、次第に男のキスが激しくなり私の口から勝手に声が漏れてくる。
「手、どけて」
キスだけで体中から力が抜け切った私は、男が少し手を掴んだだけで腕をだらりとおろしてしまった。
「キスしてもいい?」
駄目といったところでこの男はやめようとはしないだろう。
私はこくりと首を縦に振ると、男はにっこりと微笑んで、私の唇に口づけを落とす。
「んっ……」
触れ合うか触れ合わないかどうかのキス。互いの唇の表面に触れては離れ、離れてはまた触れ合う。そんなくすぐったいキスをされて、私はじれったくなって、私は自分から男の唇に舌を入れた。
男の口内に侵入した私の舌は男の長い舌に絡めとられ、罠にかかった獣のように、私の口内は男の舌によって犯された。
男は私の口内の天井の隅々をくすぐり、歯の一本一本をまるで形を覚えようとするかのように舌先でなぞる。
力強いながらも、1つ1つの動きが丁寧に私に快感を与え続けた。
「ふあっ……」
互いをむさぼり食らうような獰猛な口づけは、まるで口の中全体が性感帯になっているようだった。
キスでこんなにも頭の中がとろとろになるほど感じるなんて生まれてはじめてで、私はこのはじめての快感についていくことに精一杯で息ができなくなる。
苦しくなった私は思わず男の胸をトントンと叩いた。
男はそっとつながり合っていた唇から自分の唇を離した。ルームライトの明るい照明のもとで、私と男の間にはつぅと淫靡な光を放つ糸がかかっているのがはっきりと見える。それがまた私の羞恥心を誘った。
その糸もぽとりと床に落ちる頃、私はあまりの気持ちよさに息が絶え絶えになってしまって、男の大きな胸板に上半身を寄りかからせていた。
「はぁ……はぁっ……」
「お姉さん、首までピンク色に染まっちゃって可愛い……それにすっごく色っぽい」
「なんであんたはそんなに余裕たっぷりなのよ……」
男はというと、これまでのキスが嘘だったかのように余裕あふれる笑みを浮かべている。
「これくらいでへたばってちゃ、お姉さんを可愛がれないでしょ?」
「なにそれ……」
これくらいとはなんだ。こっちはもう今ので全身から力が抜けて息をするのだけで精一杯だというのに。
「一体あんたどんな体力してるのよ……こっちはもう腰が抜けて、立てないんですけど」
「そっか。じゃ、そろそろベッドに行こうか」
「は?」
そういうと、男はとんでもなく満足そうな顔をして、私をぎゅっと抱きしめる。
なんの気なしに言っただけなのに、男は私の足がガクガク震えているのを見て、なにやらスイッチが入ってしまったらしい。
やばいかも……なんて思った時にはもう遅くて、私は男の逞しい腕でお姫様抱っこのポーズでひょいっと抱えられる。
「ひゃあ!」
急に高くなった視界に私は一瞬背筋がひんやりとする。思わずじたばたともがく私を男はさらに力強く抱きしめた。
「大丈夫、じっとしてて。落としたら危ないから」
一目だけでは細身に見えるが、こうして抱きしめられていると意外にも筋肉がしっかりとついていて、そんな男らしさに思わずドキッとしてしまう。
寝室に着くと、そこには、映画でしか見たことがないようなキングサイズのベッドがあった。
男はそのベッドの真ん中に私を寝かせると、男もベッドの上に乗り、私の上に跨る。
男の漆黒の瞳には情欲の炎が宿りゆらゆらと揺らめいている。その瞳は私を捉えて離さず、まるで、私を焼き尽くしてしまうかのようだった。
「優しくするから。だから、心配しないで。お姉さんはただ気持ちよくなるだけでいい」
私の心臓が早鐘を打つ中、男の体が私に覆い被さる。
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