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9話
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あれからずっと探し続けたが、彼女の姿を見ることが出来なかった。
諦めたくなかった。彼女を探すことを。
でも、叔父さんからの連絡で帰らないといけなかった。
夢中で探していた俺には、時間の流れを感じることは出来なかった。
家に帰ってからも、彼女のことが気になって仕方がない。
寝支度を終え、ベッドに入った時だ。
「大翔くん。」
「櫻乃さん。?」
前と同じだ。
母さんが死んだ時。部屋の中で丁度ベッドに入った時に、彼女の姿は見えず、声だけ聞こえた。
あの時とまさに一緒だ。
「大翔くん。ごめんね、私のせいで」
「えっ、なんで?俺が見えなかったから?」
「うん。」
「でも、それは櫻乃さんのせいじゃないよ。俺が見つけることが出来なかっただけ。」
「違うの。私のせいって言う言い方も正確じゃないんだけど」
「どういうこと?」
彼女の言葉には、多くの疑問点がある。
言葉だけじゃない。
言動も。
和樹のことを俺は話したこともないのに知っていた。
同じくらいの歳のはずなのに、少なくとも俺の学校には通っていない。
この地域は、俺の学校ぐらいしか進学先はないのに。
そして、夜にしか木の下にいないこと。
その時以外、1度も会えないこと。
そして、彼女の姿が見えなかったことを自分のせいということ。
自分が見えないって言われたら、普通驚くはずなのに平然としている。
自分が見えないことをわかっていたかのように。
「私が今から言うこと、3つあるけどそれを聞いてくれたら私のこと、見えるようになる。だから聞いて実行して欲しい。」
「する。なんで櫻乃さんが見えないのかも知りたいけど、俺は櫻乃さんに会いたい。」
何をするのか。
そんなこと一つも言われてないけど、会いたい。
その気持ちがなによりも勝っていた。
「1つ目、25日に昼休み屋上に行くこと。2つ目、明日の朝近道をしていかないこと。3つ目、この一週間の間に和樹くんと遊びに行くこと。この3つ」
えっ。
なんだ、意外と簡単じゃん。
でも、こんなことで本当に彼女の姿が見えるようになるのか。
信用するにも、難しいけどするしかないでしょ。
「わかった。必ずするよ」
「ありがとう」
彼女はそう言って微笑んだ。
でも、その目は少し涙目になっていたようにも見えた。
『ありがとう』
そう言ったあと、彼女の声は聞こえなくなった。
この時は、明日起きたら起こることなんて何も考えてなかった。
───次の日────
『1件のメッセージがあります』
携帯を開くと、いつもは通知が無い悲しい男なのに、1件通知が来ていた。
メールを開いてみると、和樹からだった。
『昨日病院行ってきた。結構進行してるみたいで、来週から入院だって、一応報告と思って、心配かけてごめんな』
このメッセージを読んだ時、和樹が遠くに行ってしまうような感じがした。
諦めたくなかった。彼女を探すことを。
でも、叔父さんからの連絡で帰らないといけなかった。
夢中で探していた俺には、時間の流れを感じることは出来なかった。
家に帰ってからも、彼女のことが気になって仕方がない。
寝支度を終え、ベッドに入った時だ。
「大翔くん。」
「櫻乃さん。?」
前と同じだ。
母さんが死んだ時。部屋の中で丁度ベッドに入った時に、彼女の姿は見えず、声だけ聞こえた。
あの時とまさに一緒だ。
「大翔くん。ごめんね、私のせいで」
「えっ、なんで?俺が見えなかったから?」
「うん。」
「でも、それは櫻乃さんのせいじゃないよ。俺が見つけることが出来なかっただけ。」
「違うの。私のせいって言う言い方も正確じゃないんだけど」
「どういうこと?」
彼女の言葉には、多くの疑問点がある。
言葉だけじゃない。
言動も。
和樹のことを俺は話したこともないのに知っていた。
同じくらいの歳のはずなのに、少なくとも俺の学校には通っていない。
この地域は、俺の学校ぐらいしか進学先はないのに。
そして、夜にしか木の下にいないこと。
その時以外、1度も会えないこと。
そして、彼女の姿が見えなかったことを自分のせいということ。
自分が見えないって言われたら、普通驚くはずなのに平然としている。
自分が見えないことをわかっていたかのように。
「私が今から言うこと、3つあるけどそれを聞いてくれたら私のこと、見えるようになる。だから聞いて実行して欲しい。」
「する。なんで櫻乃さんが見えないのかも知りたいけど、俺は櫻乃さんに会いたい。」
何をするのか。
そんなこと一つも言われてないけど、会いたい。
その気持ちがなによりも勝っていた。
「1つ目、25日に昼休み屋上に行くこと。2つ目、明日の朝近道をしていかないこと。3つ目、この一週間の間に和樹くんと遊びに行くこと。この3つ」
えっ。
なんだ、意外と簡単じゃん。
でも、こんなことで本当に彼女の姿が見えるようになるのか。
信用するにも、難しいけどするしかないでしょ。
「わかった。必ずするよ」
「ありがとう」
彼女はそう言って微笑んだ。
でも、その目は少し涙目になっていたようにも見えた。
『ありがとう』
そう言ったあと、彼女の声は聞こえなくなった。
この時は、明日起きたら起こることなんて何も考えてなかった。
───次の日────
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