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第一章
第4話 -1 理不尽な命令
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「ただいま」
家に帰りいつものように夕飯を作っていると、予想より少し早くエレノアが帰宅する。
「おかえり」
「……ルイス、今日の訓練はもう終わったのか?」
いつもよりやや低い声で尋ねてくる。
「いや、ちょっと本部に呼び出されて訓練協力をしてたから今日の訓練はできてないよ」
「出来てないって……まあ任務だから仕方ないかもしれないけど、少しでもやっておくべきなんじゃないの?」
はぁ……。最近のエレノアはいつもこれだ。何かあるたびにこうやって文句を言ってくる。
訓練協力の内容を話していないこともあって、今日の俺、というか騎士になる事が出来なさそうな俺に対して相当イラついているのだろう。
「まあ、協力の時にそれなりにできたから大丈夫だよ。それより、もうすぐご飯できるから早く着替えて来いよ」
よく見ると若干服に返り血がついている。相当激しい実戦だったんだろう、怪我をしていなければいいが……。
「……わかった」
まだあまり納得はできていない様子だが、夕飯前に喧嘩はしたくなかったんだろう。エレノアが渋々といった表情で脱衣所へと向かっていった。
*
本当はリカルダさんの帰りを待つつもりだったが、今日は相当帰りが遅いらしいので先に二人で夕飯を食べる事にした。
「今日はどんな任務だったんだ?」
「え? ああ、自由同盟の拠点らしき場所の近くで行方不明になってたトラウゴッドさんの姿を見たって人がいたから調査に行っていた」
自由同盟と言えば、今この王都でかなり勢力を伸ばしているテロリストたちだ。
そんな奴らの近くで目撃されるって、もしかして裏切ったとかじゃないだろうな……。
「見つかったのか?」
「残念ながら特に成果はなかった……。何人か構成員を見つけたから色々やって話を聞いたんだがな」
その“色々”の時に返り血がついたのか、想像するだけで恐ろしい……。
俺はその様子を出来るだけ想像しないようにして、目の前のパンを口の中に入れる。
「ねえ、ご飯食べ終わった?」
俺がパンの最後の一きれを口に入れたのを見計らって、エレノアが尋ねてくる。
若干頬が赤く見えるのは気のせいだろうか?
「食べ終わったけど、どうかしたのか?」
「今日、母さん遅いだろう?」
。
いつもよりほんの少しだけ喋り方が女の子らしい気もする。
「まあ、そうみたいだね」
「久しぶりに一緒に風呂に入ろう」
……は?
わが主様は一体何を言ってるんだ?
「いや、ダメだろ」
いくら俺たちが主従で、そして長い間一緒に住んできた幼馴染とは言えそれは流石に一線を越えている。
「は? なんだそれは、ルイスは私とお風呂に入るのがいやなのか?」
エレノアがむっとした声で俺を責める。喋り方も普段と変わらなくなる。
嫌な訳ないだろう。
嫌な訳はないのだが……。
エレノアの雪のように白い肌、細く引き締まった身体、鍛えているのにそれを感じさせないほどに綺麗な脚を、ささやかながら確かに存在を主張する胸を、目の前でなんの遮るものもなく見せつけられて、俺の理性が飛んでいかない保証はどこにもないのだ。
さっきまで使っていた木刀よりも固い意志をもって臨んでも、それを上回るほど硬くなった己の“物“が、俺の理性や、今まで築き上げたエレノアとの関係性を軽々と吹き飛ばしていく姿が容易に想像できてしまう。
だから、駄目だ。絶対に断らなければいけない。
「いやとかそういう話じゃないだろ」
「じゃあなんでダメなんだ」
「それは、その……。というか、エレノアは嫌じゃないのか?」
俺が切り返すと、エレノアはそのささやかな胸をはり、細くきれいな体を強調させる。
……まずい、既に思考がおかしくなってきている。体にばかり視線が集中してしまう。
「嫌じゃない」
即答である。
こいつ、俺を男だと認識していないのかもしれない。
「俺には問題しかないんだよ」
「ならその問題を言ってみろ」
なんでも来いといった感じである。
「いやほら、まあ……」
俺が言いよどんでいると、エレノアが自分の顎に手を置いて目を瞑る。
「ルイス、恥ずかしいのか?」
「いや、そ、そうじゃねーよ」
半分図星を疲れ、ややどもってしまう。そうだ、俺は恥ずかしいのだ。
気になる異性とお互い裸になって、興奮が抑えきれなくなっている自分を見られるのがたまらなく恥ずかしいのである。
「大丈夫。たとえお前のそれが昔のままのサイズだとしても、私は一向にかまわない。」
エレノアが俺の股間を指差しながら宣言する。
仮にも次期領主の娘がそんなこと口にするな……。
「そんなもの見られる事態になる俺の方がかまうわ! ……いや、そもそもそんなに小さくないしな?」
「いい加減しつこいぞ」
苛立ったように責めてくる。
「しつこいのはお前だろ! ていうか、普通こういうのって嫌がるの逆だろ……。なんでエレノアは平気なんだよ」
「相手がお前だからだ」
こいつ、急に恥ずかしくなるようなことを言いやがる。
どうせ、従者だからって理由なんだろうけどな。
「とにかく、駄目なものは駄目だ」
「仕方ない、この手は使いたくなかったが……」
エレノアが立ち上がる。
嫌な予感がする。
「ルイス、お前の主として命令する。私と共に風呂に入れ」
こ、こいつ職権乱用にもほどがあるだろ……!
だが、主として言われたからにはどんな理不尽な命令でも逆らうわけにはいかないのが従者というものだ。
「……わかりました」
俺は渋々了承する。
なんとか、なんとか理性を持たせなくては……。
家に帰りいつものように夕飯を作っていると、予想より少し早くエレノアが帰宅する。
「おかえり」
「……ルイス、今日の訓練はもう終わったのか?」
いつもよりやや低い声で尋ねてくる。
「いや、ちょっと本部に呼び出されて訓練協力をしてたから今日の訓練はできてないよ」
「出来てないって……まあ任務だから仕方ないかもしれないけど、少しでもやっておくべきなんじゃないの?」
はぁ……。最近のエレノアはいつもこれだ。何かあるたびにこうやって文句を言ってくる。
訓練協力の内容を話していないこともあって、今日の俺、というか騎士になる事が出来なさそうな俺に対して相当イラついているのだろう。
「まあ、協力の時にそれなりにできたから大丈夫だよ。それより、もうすぐご飯できるから早く着替えて来いよ」
よく見ると若干服に返り血がついている。相当激しい実戦だったんだろう、怪我をしていなければいいが……。
「……わかった」
まだあまり納得はできていない様子だが、夕飯前に喧嘩はしたくなかったんだろう。エレノアが渋々といった表情で脱衣所へと向かっていった。
*
本当はリカルダさんの帰りを待つつもりだったが、今日は相当帰りが遅いらしいので先に二人で夕飯を食べる事にした。
「今日はどんな任務だったんだ?」
「え? ああ、自由同盟の拠点らしき場所の近くで行方不明になってたトラウゴッドさんの姿を見たって人がいたから調査に行っていた」
自由同盟と言えば、今この王都でかなり勢力を伸ばしているテロリストたちだ。
そんな奴らの近くで目撃されるって、もしかして裏切ったとかじゃないだろうな……。
「見つかったのか?」
「残念ながら特に成果はなかった……。何人か構成員を見つけたから色々やって話を聞いたんだがな」
その“色々”の時に返り血がついたのか、想像するだけで恐ろしい……。
俺はその様子を出来るだけ想像しないようにして、目の前のパンを口の中に入れる。
「ねえ、ご飯食べ終わった?」
俺がパンの最後の一きれを口に入れたのを見計らって、エレノアが尋ねてくる。
若干頬が赤く見えるのは気のせいだろうか?
「食べ終わったけど、どうかしたのか?」
「今日、母さん遅いだろう?」
。
いつもよりほんの少しだけ喋り方が女の子らしい気もする。
「まあ、そうみたいだね」
「久しぶりに一緒に風呂に入ろう」
……は?
わが主様は一体何を言ってるんだ?
「いや、ダメだろ」
いくら俺たちが主従で、そして長い間一緒に住んできた幼馴染とは言えそれは流石に一線を越えている。
「は? なんだそれは、ルイスは私とお風呂に入るのがいやなのか?」
エレノアがむっとした声で俺を責める。喋り方も普段と変わらなくなる。
嫌な訳ないだろう。
嫌な訳はないのだが……。
エレノアの雪のように白い肌、細く引き締まった身体、鍛えているのにそれを感じさせないほどに綺麗な脚を、ささやかながら確かに存在を主張する胸を、目の前でなんの遮るものもなく見せつけられて、俺の理性が飛んでいかない保証はどこにもないのだ。
さっきまで使っていた木刀よりも固い意志をもって臨んでも、それを上回るほど硬くなった己の“物“が、俺の理性や、今まで築き上げたエレノアとの関係性を軽々と吹き飛ばしていく姿が容易に想像できてしまう。
だから、駄目だ。絶対に断らなければいけない。
「いやとかそういう話じゃないだろ」
「じゃあなんでダメなんだ」
「それは、その……。というか、エレノアは嫌じゃないのか?」
俺が切り返すと、エレノアはそのささやかな胸をはり、細くきれいな体を強調させる。
……まずい、既に思考がおかしくなってきている。体にばかり視線が集中してしまう。
「嫌じゃない」
即答である。
こいつ、俺を男だと認識していないのかもしれない。
「俺には問題しかないんだよ」
「ならその問題を言ってみろ」
なんでも来いといった感じである。
「いやほら、まあ……」
俺が言いよどんでいると、エレノアが自分の顎に手を置いて目を瞑る。
「ルイス、恥ずかしいのか?」
「いや、そ、そうじゃねーよ」
半分図星を疲れ、ややどもってしまう。そうだ、俺は恥ずかしいのだ。
気になる異性とお互い裸になって、興奮が抑えきれなくなっている自分を見られるのがたまらなく恥ずかしいのである。
「大丈夫。たとえお前のそれが昔のままのサイズだとしても、私は一向にかまわない。」
エレノアが俺の股間を指差しながら宣言する。
仮にも次期領主の娘がそんなこと口にするな……。
「そんなもの見られる事態になる俺の方がかまうわ! ……いや、そもそもそんなに小さくないしな?」
「いい加減しつこいぞ」
苛立ったように責めてくる。
「しつこいのはお前だろ! ていうか、普通こういうのって嫌がるの逆だろ……。なんでエレノアは平気なんだよ」
「相手がお前だからだ」
こいつ、急に恥ずかしくなるようなことを言いやがる。
どうせ、従者だからって理由なんだろうけどな。
「とにかく、駄目なものは駄目だ」
「仕方ない、この手は使いたくなかったが……」
エレノアが立ち上がる。
嫌な予感がする。
「ルイス、お前の主として命令する。私と共に風呂に入れ」
こ、こいつ職権乱用にもほどがあるだろ……!
だが、主として言われたからにはどんな理不尽な命令でも逆らうわけにはいかないのが従者というものだ。
「……わかりました」
俺は渋々了承する。
なんとか、なんとか理性を持たせなくては……。
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