俺は貴女の不死の騎士〜【不死】の魔法を使う俺は騎士団に捨てられて(愛の重い)悪の女幹部に捕まったけど、溺愛されて楽しく暮らしてます〜

平田直人

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第一章

幕間 悪魔の本性

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 何度体験しても慣れない幾度目かの死から目が覚めた私は、暫くの間死んだふりをしていました。

 いやだって、怖いですし……。
 あのカンナとかいう女、一体なんなんですか!?
 人を殺すときって、普通もう少し躊躇とかするものじゃないですかね……?

 まあとにかく、蘇ってからしばらくは気配を殺して様子を見ていたんですが……。
 
あれはひどいですね、本当。
私がいたころより更に酷くなっているような……。

あの従者の人もかわいそうですね、ボロボロですよ。
 ……ていうか、なんかクオン様すごい大事そうに抱えてますね。
 戦ってる時から様子が変だなーとは思ってましたけど、明らかにおかしいです。

「あら、起きたの? 体は平気?」

 クオンさんが労いの言葉をかけて来ました。 
 ……愛おしそうに従者の人を抱えながら。確か、ルイスさんでしたか?

「体は元気ですよー。けど頭はガンガン痛いし心は荒んでます」

 当然です。だって何度か死んだんですよ?
自分で死んだ回数がわかんなくて、何度かっていうくらい死んだんです。荒んで当然でしょう!

「ならあの子の生死の確認お願いできる? 私は今忙しいの」

「忙しいって、何に……?」

「慈しむのによ」

 気持ち悪っ!
 返して!あのクールでシリアスな悪役だったクオンさんを返してください!

「あの、その人の何をそんなに気に入ったんですか……?」

 聞いた瞬間、いかに自分が愚かだったかを即座に後悔しました。

「え? 仕方ないわね、教えてあげるわ。まず、見て? こんなにもボロボロになってるのに私の前に立ちふさがったのよ? しかもその理由が味方を守るため! 信じられない……! あの腐った組織でこんな高尚な願いに命を懸けられる人がいるなんて思ってもいなかったわ……! それに、この子の傷は殆どすべて味方の傷を引き受けたものよ? わかる? こんなにも自分を犠牲にできる子なら、きっと私の隣に立って歩いた時離れて行ったりしないと思うのよ! それにこの子の魔法、傷を癒せるのよ? 私はあの実験に耐えられると思ってるわ……! それに……」

 ……怖い!怖すぎます!……なんか心なしか目も血走ってるし。
 それなりに親しい私が引く程怖いんですから、ルイスさんが目が覚めていきなりこんな愛情受けたら絶対ドン引きしますよ……。

「あ、あの!」

「……なにかしら」

「取り敢えず、トラウゴッドさんの様子を見てきますね……! もし生きてたら治してあげたいですし」

「……それもそうね」

 やや不満気ですけど納得してくれたようです。
 ……あれでまだ語り足りないんですね。
 実年齢数百歳にして初めての恋ですか……。

「あなた今、とっても失礼な事考えなかった?」

「いいえ、とんでもない!」

 勘が鋭すぎますよ……。
 こんな事考えてるってばれたら流石に一回くらい殺されてもおかしくないです!

 私は誤魔化すように駆け足でトラウゴッドさんの方に向かいます。
 喋れないし短い間だったとは言え同僚だったんですから、出来れば生きていて欲しいものですが……。

 と、思いながらトラウゴッドさんの遺体の前に到着しました。

 そう、遺体です。
完全に瞳孔が開いてますし出血も酷いです。
残念ながら、お亡くなりになってました。

「……どう?」

 クオンさんが心配そうに尋ねてきます。
 あの人、侵入者に容赦はしないですけどその分仲間にしたらそれがモルモットでも愛情が凄いですからね。
 多分本気で心配しているのでしょう。お優しい事です。

 ……まあ、ちょっとだけ倫理観が狂ってますけど。

「ダメみたいです」

「……そう」

 心底悲しそうな顔をする。
 一週間も経っていないモルモットのはずなんですけどね……。

悲しそうな顔をしたクオンさんが、ルイスさんをお姫様抱っこしながら近づいてきました。

「悪いけど、少し抱いていてもらえる?」

 そしてそのまま、大事そうに抱きかかえたルイスさんを渡してきました。

 抱きかかえてみると、想像以上に軽くて驚きました。
 よく見ると殆ど私服のような格好で、鎖帷子すら仕込んでないです。
 
 ……この人、どういう立場だったんですかね?
 私まで同情してきちゃいました。

 そして、どう見ても今にも死にそうです。

「いいですけど、大丈夫なんですか?ボロボロですけど」

「私の魔法で彼の時を一時的に止めてあるから大丈夫。まあ、それでもこのままだと長くはもたないけど……」

「相変わらず便利な魔法ですね」

 クオンさんが複雑な顔をする。

「……そうね。そして、呪いでもあるの」

 数百年孤独に生き続ける呪い。
 クオンさんが狂った原因ですか……。

「【火よ 強く 燃えろ】」

 クオンさんがトラウゴッドさんの遺体に火をかけます。
 よく見ると、小声で遺体に何か話しかけているのが見えました。

「ごめんなさい、あの世で恨んでいいわ。けど、貴方が悪いのよ?」

 トラウゴッドさんは深夜急に、クオンさんの拠点に仲間たちと攻め込んできたそうです。
 そこで下僕達に捕らえられ、クオンさんのモルモットになった結果こうなってしまいました。
 
 かわいそうですけど、自業自得だと私は思います。
 殺しに来たんですから、やり返されるのは当然です。
 
 例えそれが誰かの命令だろうと関係ない。

「……さて、帰るわ」

「はーい」

 ようやくおうちに帰れます。
 私はもうくたくたです。早くふかふかのベッドで眠りたいです。

「あなたはだめよ?」

「え!?」

 な、なんで!?

「ここの後始末と、それから暫くは東門騎士団の偵察をお願いね。フェアトラークも手伝ってくれると思うわ」

 そ、そんな……!
 抗議です!断固抗議しなければ……!
 ルイスさんを人質にすれば……!

「せめてクオンさんも手伝ってください! 私はもう眠いんです!」

 ……あれ?
 気づいたらクオンさんにルイスさんを奪われていました。
 魔法を使いましたね、卑怯な……!

「そうしてあげたいのは山々だけど、私はこの子の治療があるからダメなの」

 ルイスさんを抱きかかえ、頭を愛おしそうに撫でながらそう答えます。
 顔すらこちらに向けないのがすっごくムカつきますが、そういう理由なら仕方ないです……。

 仲間になるかも知れない人の命がかかっている以上、あんまりわがままいう訳にもいきませんからね。

「はあ、わかりましたよ……。けど折角の魔鉱なのにもったいないですね」

「仕方ないわ、私がここに常駐できない以上どうしようもないもの」

 ここを探すの、結構大変だったんですけどね……。
 暫くすると、黒い影がいきなり現れました。
 これは我ら自由同盟の幹部様が使う移動魔法です。どうやら今日はこれで帰るみたいですね。
 
 ……ずるい。

「じゃ、よろしくね」

「はーい、わかりましたよ。いい結果であることを期待してます」

 願わくば、ルイスさんがクオンさんの孤独を埋められますように。

 私は心の中で、信じてもいない神様に祈りを捧げるのでした。
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