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とある女の子の話…「さよなら」続き
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俺の父。
俺やサンの属する一族と同じルーツを持つ人。
今では「地下水路」の住人。
その場所は、何らかの事情に依りドリップアウトした人間やアウトロー系列等…の身の寄せ場となってる。
父も何らかの事情によりそこの住人となった人だ。
父は俺たち一族の身体的特徴である「秋色の瞳」を持たずに生まれた。
降り積もる黄葉のイチョウ。
同じく降り積もる紅葉の紅葉。
黄と紅がまだらになった虹彩。
こげ茶色の瞳孔。
それが俺たちいろは族の持つ「秋色瞳」だ。
俺たち一族独特の身体的特徴。
「いろは氏族は秋色瞳の化け物」
周辺の別の一族からそう呼ばれていた。
だけども周辺の一族の連中だって個性豊かな身体的特徴を保持している。
尖り耳の、にほへ族。
青い皮膚の、とちり族
首の長い、ぬるを族…等だ。
こうやって羅列すると、俺たち氏族の身体的特徴なんて、抜きん出て特別視されるものでもない様に感じる。
しかし秋色瞳を持たなかった事は父の運命に大きな影響を落としたようだ。
一族の人間の中にも噂好きな人間と言うのは存在する。
一族の中でも父はマイナスな意味で目立った人だった、ようだ。
面と向かった形で父の人物像を一族の誰かに直接聞いた訳ではない。
…聞きたくなくても耳に入ってしまう。
頭の中に入ってしまう。
父が一族の中でどんな思いや、経験をしてきたかはわからない。
それについて、父は俺に一度も話しをしてくれた事が無かったからだ。
俺は大きな発作を起こして以来、父の出自である「いろは族」に育てられた。
しかし父との関わりがゼロになった訳ではない。
年に一度は父との面会を許可されている。
サンが帰省した翌日にその予定が入っていた。
正直、気が進まなかった。
遠慮なく、「行きたくない」と断ればよかった。
そうすれば、俺はやっと得た居場所を失わずに済んだかもしれない。
********
水に濡れたコンクリートの上を走る。
走る度、泥水ぺジャっと音を立てる。
跳ね上がる泥水が靴下と靴を濡らす。
泥水が靴に滲みる感触を気持ち悪く感じながらも、俺は走る。
少し離れた所に馬を繋げているのも気にしていた。
帰るまでに馬は無事でいるだろうか?
大人しい馬だから騒ぐ事で、周辺住民の気を引く事はないと願いたかった。
そして、ここはガラが悪い。
無論分かってはいる事だけど。
早く、用を済ませて帰ろう。
腐食し、崩れそうな小さな門に手をかける。
「…よおよお…!…何の用?…」
ガラの悪い場所ってのは必ずいる、こんな感じのやつ。
思わずタメ息が出た。
面倒くさい。
おれは早く戻らなきゃならないのに。
毛色が違うやつ…普段の自分らの視界に馴染まない奴を感知するアンテナだけ鋭い奴。。
…俺は少しだけここで過ごした時期がある。
だから、完全に他所様じゃない。
だけど、コイツらの目に、俺は完全に他所様に映ったらしい。
「お嬢ちゃん、、何処から来たの?!」
ニヤケ面を俺の鼻先まで、近づけてくる。
図々しくも、このチンピラの酒臭い息が俺の鼻腔の奥まで侵入してくる。
軽く息を止め、これ以上の体への侵入を阻止する。
舐めてかかる相手を呼び止める時は「お嬢ちゃん」
分かりやすいチンピラだ。
そんな事を思った時、
「…おい、何やってんだ?」
聞き覚えもある声が耳に飛び込む。
「おう!ハチ。…コイツ、お前の知り合いか?」
「まあな…おい、入れ」
腕を引っ張り、門の中にぶっきらぼうに放り込まれる。
「ハチ、お前、こういうのタイプ?いや~ん、、ろりろり~」
「…まあ、かわいい、わな。」
脇を通る瞬間、チンピラの一人が俺のほっぺを撫でた。
不思議な事に吐く息よりも、手の臭いの方が何倍も酒臭かった。
不快さに俺は思わず、ソイツを睨みつける。
「…俺のガキだよ。阿呆」
ハチ…父が俺の頭をぐいっと引き寄せ、ベチっと叩く。
それから顎で家の中に入るよう促がされる。
「似ねえな…!おい!」
「…母親に似たんだろう」
面倒くさそうに父が言うと、チンピラ達はゲラゲラ笑った。
「そりゃ正解引いたな!…お嬢ちゃん!」
俺やサンの属する一族と同じルーツを持つ人。
今では「地下水路」の住人。
その場所は、何らかの事情に依りドリップアウトした人間やアウトロー系列等…の身の寄せ場となってる。
父も何らかの事情によりそこの住人となった人だ。
父は俺たち一族の身体的特徴である「秋色の瞳」を持たずに生まれた。
降り積もる黄葉のイチョウ。
同じく降り積もる紅葉の紅葉。
黄と紅がまだらになった虹彩。
こげ茶色の瞳孔。
それが俺たちいろは族の持つ「秋色瞳」だ。
俺たち一族独特の身体的特徴。
「いろは氏族は秋色瞳の化け物」
周辺の別の一族からそう呼ばれていた。
だけども周辺の一族の連中だって個性豊かな身体的特徴を保持している。
尖り耳の、にほへ族。
青い皮膚の、とちり族
首の長い、ぬるを族…等だ。
こうやって羅列すると、俺たち氏族の身体的特徴なんて、抜きん出て特別視されるものでもない様に感じる。
しかし秋色瞳を持たなかった事は父の運命に大きな影響を落としたようだ。
一族の人間の中にも噂好きな人間と言うのは存在する。
一族の中でも父はマイナスな意味で目立った人だった、ようだ。
面と向かった形で父の人物像を一族の誰かに直接聞いた訳ではない。
…聞きたくなくても耳に入ってしまう。
頭の中に入ってしまう。
父が一族の中でどんな思いや、経験をしてきたかはわからない。
それについて、父は俺に一度も話しをしてくれた事が無かったからだ。
俺は大きな発作を起こして以来、父の出自である「いろは族」に育てられた。
しかし父との関わりがゼロになった訳ではない。
年に一度は父との面会を許可されている。
サンが帰省した翌日にその予定が入っていた。
正直、気が進まなかった。
遠慮なく、「行きたくない」と断ればよかった。
そうすれば、俺はやっと得た居場所を失わずに済んだかもしれない。
********
水に濡れたコンクリートの上を走る。
走る度、泥水ぺジャっと音を立てる。
跳ね上がる泥水が靴下と靴を濡らす。
泥水が靴に滲みる感触を気持ち悪く感じながらも、俺は走る。
少し離れた所に馬を繋げているのも気にしていた。
帰るまでに馬は無事でいるだろうか?
大人しい馬だから騒ぐ事で、周辺住民の気を引く事はないと願いたかった。
そして、ここはガラが悪い。
無論分かってはいる事だけど。
早く、用を済ませて帰ろう。
腐食し、崩れそうな小さな門に手をかける。
「…よおよお…!…何の用?…」
ガラの悪い場所ってのは必ずいる、こんな感じのやつ。
思わずタメ息が出た。
面倒くさい。
おれは早く戻らなきゃならないのに。
毛色が違うやつ…普段の自分らの視界に馴染まない奴を感知するアンテナだけ鋭い奴。。
…俺は少しだけここで過ごした時期がある。
だから、完全に他所様じゃない。
だけど、コイツらの目に、俺は完全に他所様に映ったらしい。
「お嬢ちゃん、、何処から来たの?!」
ニヤケ面を俺の鼻先まで、近づけてくる。
図々しくも、このチンピラの酒臭い息が俺の鼻腔の奥まで侵入してくる。
軽く息を止め、これ以上の体への侵入を阻止する。
舐めてかかる相手を呼び止める時は「お嬢ちゃん」
分かりやすいチンピラだ。
そんな事を思った時、
「…おい、何やってんだ?」
聞き覚えもある声が耳に飛び込む。
「おう!ハチ。…コイツ、お前の知り合いか?」
「まあな…おい、入れ」
腕を引っ張り、門の中にぶっきらぼうに放り込まれる。
「ハチ、お前、こういうのタイプ?いや~ん、、ろりろり~」
「…まあ、かわいい、わな。」
脇を通る瞬間、チンピラの一人が俺のほっぺを撫でた。
不思議な事に吐く息よりも、手の臭いの方が何倍も酒臭かった。
不快さに俺は思わず、ソイツを睨みつける。
「…俺のガキだよ。阿呆」
ハチ…父が俺の頭をぐいっと引き寄せ、ベチっと叩く。
それから顎で家の中に入るよう促がされる。
「似ねえな…!おい!」
「…母親に似たんだろう」
面倒くさそうに父が言うと、チンピラ達はゲラゲラ笑った。
「そりゃ正解引いたな!…お嬢ちゃん!」
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