とある女の子の話…幼馴染み

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とある女の子の話…要らない

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家に入ると父はさっきまで腰掛けていたのだろうと思われるソファに腰掛ける。
そしてタバコをふかし始めた。
さっきのやり取りと打って変わり、俺が目に入らないかの様な態度だ。

「何で来たか、聞かないの?」
「…タバコ…吸ってんだろよ。」

そうと決めたら、父は絶対変えない。
俺は嫌なくらいそれをわかっていた。

それは大人になって整理出来た事だ。
父と暮していた時期は物心つく前であり、自我なんて芽生える前だ。
自己主張しない俺は父イメージ内の家族として存在を許されていた。
だが、いろは族で育てられた俺は、父のイメージと乖離した家族になってしまった。
口うるさく、厳しいけども構ってくれる一族の人間。
サンを含むいろは族の皆との関わりで、俺の自我は竹の子の様にむくむく背を伸ばす。

面会の度、俺は父に意見し、鉄拳食らう。

意見の相違を露呈させるきっかけはゴロゴロある。
同じ空間で、共同で何かをする以上は。


サンとおじさんもケンカはするけど、ケンカの中にコミュニケーションがある。
…父は俺をぶっ飛ばす事で、コミュニケーションを拒絶し、己の殻に篭る。

そこには違和感しかない。
あんなに父を恋しがり、父を求めて癇癪を起こしていたことが嘘の様だ。

「ジジイは、お前の聞きたい事に全部答えてくれなかったのか?」

父の声で現実に戻される。

「爺様からだけじゃなく、父さん側からも説明を聞きたい」
俺がそう言うと、父は鼻でフンっと笑った。

誰の入れ知恵だよ、吐き捨てるように呟く父に俺は強い調子で言った。
「俺が…成人したら、、俺に…選ばせてくれるって約束だった!」
「…」
「ここにいるか、いろは族の一員になるかを!」
「…」
「爺様は、決まった事だから、何があっても覆さない、と…」
「…金がいるんだよ。」
「…」
「…ここを仕切っている連中が変わって、上納金がバカ上がりしたんだよ。」
「…」
「…違った。人頭税って名前だったな」
「…つまり、爺様に俺を売ったの?」
「…おいおい、家族分がっちり徴収されんだぞ、前の事で目立ってよ…」
「…」
「…お前は目をつけられた」
「…」
「二人分は払えねえ」
「…」
「…こんな所でも付き合いやら義理で金はかかる。それを蔑ろにして、住人でも無えが、家族であるお前を取れねえ。。俺の状況も汲み取れ。」
あまりにもナルシストな父らしい発言に俺は頭からの奥がじんわりと熱を帯びる。
深呼吸し、頭を冷やしてから俺は聞いた。
「…幾らで売ったの?…俺を」
父が薄ら笑いを浮かべた。
「これまでかかったお前のおまんま代…位は取立てたと思うぜ。」
父はツカツカと小さな戸棚に向かい歩くと引き出しを開ける。
「お前も手切金が欲しいか?…ほら、母親の形見だ」
鈍く燻んだ色のイヤリングをぞんざいに耳に付けられる。
「要らない、どうせ…」
俺の言葉は父の耳には届いていないらしく、父は言葉を続けた。
「門の所でも言ってたみたいに…似てきたな、母親に。」
おやじは目を細め、無表情で俺をじっと見つめた。
「独りでいる時には顔も思い出せねえのにな…」
「…」
「不思議とお前が目の前にいると思い出す、お前と同じくいつも俺を睨んでいた」
そしてソファに腰掛けると俺の顔も見ずに告げた。
「…ここには、二度と来るなよ」

**********

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